三田苦労す
三田 義男の人生は本当に波乱万丈のものだった。
彼が5歳の頃両親は離婚。
父親に引き取られるが、その父親は多額の借金を作って酒におぼれる日々。
暴力も幾度となく振るわれた。
小学校では、友達も全く出来ずにいつも一人。
校舎裏に連れていかれて暴行を受けた事もあった。
理科の実験で、火のついたアルコールランプを誤って床に落とし、大騒ぎになった。
あだなは6年間「どくどくがいこつ」だった。
中学に入ると、学校に行かなくなった。
父親が嫌になって無一文で家を出た。
公園の遊具の中で3年間冬を越した。
ゴミ箱のハンバーガーを食べたりもした。
高校は行かず、日本が嫌になって外国息の船に入り込んで密航した。
密航に密航を重ね辿り着いたのはアイルランドだった。
とりあえず、山に行こうと彼は思った。首を吊るのにちょうどいいと思った。
彼が、木の枝に輪っかを吊り下げた時、一人の老人が通りがかった。
赤い帽子と服を身に付けた白い髭の男だった。
彼は、老人に誘われて木造の家に辿り着き、そこで暮らす事になった。
その生活は10年に及んだ。
彼が25歳になった時、老人は病に伏せた。
老人は、彼に自らの仕事を引き継がせる事にした。
三田 義男は、こうしてサンタクロースとなったのである。