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極悪非道もサジ加減!~ポンコツ怪盗の弟子になった俺は、悪事で悪党共を救う〜  作者: 一二三 五六
【第1章】怪盗は夜空を舞い、弟子は宙を仰ぐ

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【67】怪盗アルバートのお披露目会

「何が怪盗だ!ただの大罪人に変わりない!臆するな!」


レオニスがそう叫ぶと、冒険者達も次々と声を上げ始めた。


「そっ、そうだ!そうだ!」

「こっちはここ数週間、家にも帰れずにずっとここに詰めてるんだぞ!」

「本業もあるのにギルドから収集かかったせいで、大損だ!」

「武器の修理代返せー!」

「ポーション代払えー!」

「休ませろー!」

「何が怪盗だー!」

「いい歳して恥ずかしくないのかー!」

「親が見たら泣くぞー!」


途中から正論が飛んできて、途端に恥ずかしくなってきた。


……俺だって20歳過ぎてこんなことする羽目になるとは思わないじゃん!!


【契約回廊】でユーディアと回線を繋げる。


『ユーディア、俺も気ぃ狂いたいから《偽相盗用》使わせてくれ』

『まるで私が狂っているような言い方だが……いいだろう。ここは弟子である君の顔を立ててやる』


師匠から許可をもらったその時、レオニスが再び声を張り上げた。


「皆の者、よく聞け!奴らは魔物を意図的に呼び出し、ミレアスの街に混乱を招こうとした大罪人である!」


レオニスは剣を振り上げる。


「緊急依頼として発注する!主犯格一人につき、褒賞として――大金貨20枚を出そう!」


ザワッ……と周囲がどよめいた。


途端に、冒険者や衛兵達が地面に落ちていた武器を拾い上げる。杖や槍など、とにかく手に持てそうな武器なら何でもいいらしい。


何人かの冒険者が、ジリジリとこちらへ近づいてくる。

大勢の中でも比較的身なりが整っている。おそらくEランクかFランクあたりだろう。


やがて互いに息を合わせ――

全方位から飛びかかってきた。


その光景を眺めながら、俺はユーディアの肩に手を置く。



――魔力充填率、100%



「《偽相盗用》」



武器が触れる瞬間――


私……いや、我は師と共に空へ舞い上がった。


眼下では武器同士がぶつかり合い、激しい金属音が鳴り響く。


「《風魔法》!」

「《水魔法》!」


宙に浮く我らへ魔法が放たれる。

魔法はお互いに干渉し合い、混じり合い、

氷雪の暴風と化して我らを飲み込まんと迫ってきた。


「ハハハ!素敵な歓迎だ!」


我はコートから片手いっぱいのクリスタルを掴み取り、赤い魔力を纏わせて暴風の中へ投げ込む。


そして、指をきゅっと握りーー魔力を圧縮した。


その瞬間。




ドォォォオオオ!!




氷雪の暴風が、内側から真紅の炎に焼き尽くされる。


爆ぜ上がった炎はそのまま空へと昇り、夜空を覆うように広がった。

夜のはずなのに、空は夕焼けのように赤い。


……あぁ。


なんと美しい。


「あのレベルの複合魔法を消し飛ばした!?」

「火属性の魔法使いか!?」


人々が慌てふためく。

その隙を突き、我と師は空から集団の中へと飛び込んだ。


「《怪盗歩行》――《怪盗遊戯》」


《注目律》を使いながら、白き我と黒き師は人混みの中を縫うように駆け抜ける。人々の目には白と黒の軌跡だけが残るだろう。


横を、前を、上を。

あるいは股の下すらくぐり抜けーー


一瞬にして、安全地帯で指揮を執っていたレオニスの前へ躍り出る。


我と師は同時に手を広げ、今しがた盗み取った物を地面へ落とした。


――冒険者と衛兵達の、身分札だ。


「あっ!?」

「いつの間に!?」


掠め取ったのは、師と合わせておよそ100人分。

身分札が積み重なり、小さな山が出来ていた。


それを見て、レオニスがたじろぐ。

360度、冒険者と衛兵に囲まれたこの狭い場所では、下手に剣を振り回せない。ましてや、以前のように魔法を放ったり、結界で囲ったり、炎の全体攻撃を放つことなど、出来ないだろう。


完全に――レオニスにとって不利な状況だ。


慌てて衛兵達が武器を構える。

だがそんなものは目にも留めず、ユーディア師匠が一歩前へ躍り出た。


「せっかくの歓待だというのに、大事な客人が後ろに下がっているとは……主賓を迎える作法としては、些か無礼ではないかね?」

「ぐっ……!」


剣を構えたまま、レオニスが唇を噛む。

そして後ろに立つ我へ、燃えるような怒りの視線を向けた。


「何が主賓だ!何が怪盗アルバートだ!貴様……私と対峙して震えていた、あの小僧だろう!」


ーーあの夜のことを言っているのか?

まさか、自分から言ってくれるとは!


「我を覚えているとは、褒めてやろう。レオニスよ」


我はゆっくりと一歩前に出る。


「そんなに熱い視線を向けられては……思わず、あの日の楽しい出来事を思い返してしまうな?」


それに合わせ、レオニスが一歩下がった。


その滑稽な様子に、思わず口元が吊り上がる。

笑いを堪えるように、片手で口元を押さえた。


「ところで、ルルシェラ嬢は元気かな?」


わざとらしく首を傾げる。


「どこぞの騎士が夜な夜な彼女を連れ去ろうとしていただろう?その後の安否が心配で心配で……最近は夜も眠れぬよ」

「よ、世迷いごとを!」


周囲の人々がざわめき始める。


「夜な夜なルルシェラ様を連れ去る……?」

「確かにそんな噂はあったが……」

「家出だったという話ではなかったか?」

「いや、でも夜中に皇女殿下が外出するのかと話にもなっていたろう?」

「誘拐って言っても、ルルシェラ様の屋敷には強力な結界があるから無理じゃないか?」

「しかし、お付きの近衛騎士だったレオニス様なら……あるいは……」


……ほう?

これは面白いことになっている。


その時、ユーディア師匠が静かに口を開いた。


「アルバートよ。そのように動くのならばーー面白い技能を教えてやろう」


そう言うと、師匠が【契約回廊】を使い、我から魔力をごっそり奪い取った。

体感で、2~3割ほどだ。


そんな大量の魔力で、一体何をするつもりだ?


「《天映記憶》」


師匠がパチン、と指を鳴らす。


すると、我から奪った魔力――平民20~30人分にも匹敵するそれが、一気に上空へ放たれた。

空中で魔力が凝縮し――やがて、巨大な四角い光の板が現れる。まるで、夜空に浮かぶモニターのようだった。


少しノイズが走り――


次の瞬間。

レオニスの声が、空から響いてきた。


『とっとと渡せばよかったものを……下等種族風情が、貴族の言葉を聞かないとはな』


――あの夜の光景だった。

ルルシェラ嬢を騎士レオニスから守った、あの時の出来事。まるで師匠の視点から見た映像のように、場面が映し出されている。


黒いフードを被った我が、ルルシェラ嬢を抱きかかえている。後ろからそれを見ている構図だ。

ルルシェラ嬢は助けを求めるように我へ抱きつき、体を震わせている。


つまり――我らが彼女を守ろうとしていることは、誰の目にも明らかだった。


その光景が今、まさに……

大勢の人々に見えるよう、夜空に映し出されている。


こんな技能まであるのか。


「なっ、なっ……!?」


レオニスは目を見開いた後、剣を構えてユーディア師匠へ切りかかろうと身構える。だが、そうはさせない。


せっかく、美味しいところなのだ。


スピアを両手に構えると、《怪盗歩行》で瞬時にレオニスの背後に回る。背中に、ぽわ……と光のようなものがうっすらと見えた。


……おや?まだ《致命顕現》の効果が残っているのか。

これは幸いだ。


先の尖っていないスピアで、その秘孔を優しめに、しかし真っ直ぐに突く。



ーードスッ!



「グァァアアアッ!?!?」


突然の背後からの強襲に、レオニスは絶叫し、剣を落として地面に倒れ伏す。今回は優しく手加減をしてやったのだ。気絶まではさせまい。


「や、止めろッ……!」

「画面を見る時は、明るくして離れて見なくてはならないのでね?お触り厳禁だ。」


倒れたその背を踏みつけ、近くにあった剣を蹴っ飛ばす。と、同時に、モニターがうっすら拡散を始めた。


ならば、続きはこちらで用意しよう。


「《天映記憶》」


パチン、と師を真似て指を鳴らす。

すると大量の魔力が宙へと放たれ、拡散しかけていたモニターに再び鮮明さが戻った。


今度の視点は――我のものだ。


ルルシェラ嬢が騎士に怯える表情が、はっきりと映し出されている。


『……女性を軽視し、平民差別を繰り返す……貴族としての品の欠片もない愚者に言われたくはないな』


ユーディア師匠の声がモニターから響く。

その言葉に、画面の中の騎士の顔が歪む。

だが次の瞬間、その瞳におぞましい光が宿り、ニィ……と不気味に口元を吊り上げた。


『確かに、女性軽視は良くないな。生死は問わないとはいえ……真っ二つにするのは、勿体ないほどの美貌だ』


「違う!皆のもの!あれは幻術だ!私ではない!」


画面の中の騎士は、ねろりと唇を舐める。


『生きてても死んでてもいいのならーー“頭が付いている方”が楽しめそうだ』

「だまされるなぁぁぁあーーーー!!!!」


レオニスがあまりに騒がしいので、我はもう一度スピアを秘孔へ突き立てる。

今度は手加減などしない。


ーーズドンッ!!


「がぁぁあああっ!?!?ちがっ、ちがぁぁあう!!」


レオニスは醜い叫び声を上げ、「違う!違う!」と何度も首を振る。


そして――パタリと気絶した。


同時に、モニターがブツリと途切れ、光となって空中へ散っていく。


 


シン……。


 


あれほど騒がしかった冒険者達も、衛兵達も――

誰一人として言葉を発しなかった。

皆、すでに消えたモニターのあった虚空を、ただ見つめている。それほどの衝撃だったのだろう。


だが――


これは、師匠が用意してくれたお披露目会なのだ。


我はレオニスを踏みつけたまま、大きく声を張り上げた。


「諸君!見たかね!これこそ、貴族の持つ醜悪な闇の面である!」


その声に、周りの視線が我に集まってくる。


「このアーヴァンテール王国の珠玉の宝石であるルルシェラ嬢を慰みものにしようとするあの顔を見ただろう!あのおぞましい声を聞いただろう!あれが作り物に見えるだろうか?あの言葉が嘘だというのか?いいや違う!あれこそ、我らがこの目で見て、この耳で聞いた、実際にあった光景である!」


レオニスから足を離し、ふわりと宙へ浮かび上がる。


「何を信じ、何を疑うか……それは諸君らに委ねよう!しかし、君達の目が、耳が、心が、権力という暗闇に覆われないことを、心より我は願う!」


その時、隣へユーディア師匠がふわりと浮かび上がった。

ちらりと遠方を見れば、エル=ナシェルの民やシーフラ達の姿はすでにない。

どうやら、十分に時間と注目は稼げたらしい。



ーーさぁ、幕引きだ。



「我が名は――怪盗アルバート!今宵、この愚かな貴族……レオニスが被っていた、見栄と地位で固められた“偽りの仮面”を頂いていく!」


くるりと踊るようにユーディア師匠が前に出る。


「今宵、諸君が弟子の晴れ舞台に立ち会えた幸運を、心より喜ばしく思う」


マントを広げて一礼をすると、ユーディア師匠から【契約回廊】を通じた回線が飛んできた。


『突発だったが、怪盗として初めての仕事ぶり、見事であった』

『まだあんな技能を隠し持っていたとは驚きだ、師よ』

『他にもあるのだがね?……さて、せっかくの晴れ舞台だ。大盤振る舞いで行こうか』


師がコートを叩くと、その両手にコートがシャラリ、と何か小石のようなものを出してきた。



ーーダンジョン地下18階層の、黄金の小石だ。



「余興まで楽しんでくれた諸君らへ、ささやかな贈り物だ。生活の足しにするといい」


両手いっぱいの黄金を、ユーディア師匠はまるで豆まきのようにぶわっと周囲に投げた。



キラキラと黄金が雨のように落ちていく。



「は?な、なんだ?」

「石?金属?」

「いや、これはーー」


「金だ!」

「黄金だ!?」


誰かが声を上げた瞬間、ワァァッ!と一斉に人々がしゃがみこみ、地面に落ちた黄金を拾い始める。黄金が届かなかった人達も、我先にとその集団へ突撃していった。


『ほら、君もやっていいぞ。餌やりだ』

『本当に大盤振る舞いではないか!師よ、感謝しよう!』


我も同じように黄金を手に持ち、まだ黄金が無い方へ「そぉ〜れっ!」と投げる。


瞬間、今度はそこへ人が押し寄せる。

また人が少ない所へ、黄金をひとつかみ。

人々が黄金を求めて右往左往する姿を空から眺める。

ーー何とも愉快で楽しい!


「何事だ!?」


ようやく遠方にいた騎士達が到着したようだ。

しかし、たった4人。しかも赤ら顔だ。酒でも飲んでいたのだろうか?

国防級の災害が起きている中、国と冒険者ギルドで手を取り合わねばならないところを、貴族である騎士がろくに働かず、平民である冒険者や衛兵達を酷使していたことがよく分かった。


『まだまだ遊び足りないが、目的は達した。そろそろ逃げるとしよう』

『了解した、師匠』


我らは空へ舞い上がり、その場を去ろうとした……



その時。



「やぁ〜遅れてすみません。色々、認可証明書の手続きで時間かかっちゃいまして」



のほほんとした、聞き覚えのある声がした。


そこにはーー



「臨時の傭兵として参加させて頂きます、ローレンと申します。えーと?まだ“ 魔物恐慌(スタンピード)”って、やってます?」



魔法使いのような服に、これまた魔法使いのような大きな杖。まるで居酒屋にでも来たかのような軽いノリで現れたのは――ローレン先生だった。



だが、我らはその後方……ローレン先生の後ろにある、木で出来た檻に視線が釘付けになった。




……ボロボロのエル=ナシェルの民と、ぐったりしたシーフラ達が、蔦で縛られた状態で詰め込まれていた。



「ローレン様!この度はご参加ありがとうございます!しかし、“ 魔物恐慌(スタンピード)”は既に収まっており……」


騎士がローレン先生へ頭を下げる。

……ん?騎士が?ローレン先生へ?頭を下げる??


「あちゃ〜……やはり間に合いませんでしたか。まぁ、ダンジョンから逃げ出していた亜種は捕まえたので、良しとしましょう」


ローレン先生の視線が、我らと合う。


「それで……あの飛んでるのって何です?」

「分かりませんが、怪盗と名乗っており……今回の“ 魔物恐慌(スタンピード)”を引き起こした首謀者だと……」

「おや、では捕まえたらそれなりの報酬は期待してもよいのですか?」

「もちろんです」


その言葉に、ローレン先生の瞳がキラリと光る。


「ならば、あともうひと肌、脱ぐとしましょうか」


固まっている我らの方へ、のんびり歩いてくる。


その後ろでは、ナシェルの民とシーフラ達を詰め込んだ檻が、カラカラと音を立てながら勝手についてきていた。


冒険者や衛兵達は、その光景を見てギョッとする。


そして――黄金を拾う手を止ると、脱兎のごとく後ろへ下がった。


カツン。


魔法使いの杖が、地面を叩く。

ローレン先生はゆっくりと顔を上げ、我らを見上げた。


「アーヴァンテール王国――元・宮廷魔術師筆頭」


杖をビュンッと構え、我らを指す。


「そして、アーヴァンテール王国“八冠聖人”が一人」


静かに名乗る。


「ーー“緑賢のローレン”。推して参りますよ」


そしていつもの、ほんわかした笑みを浮かべた。


「臨時収入はいくらですかね〜?」

1週間ほど毎日更新をお休みします。


次回の更新は3/14の23時半です。

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