【65】ダンジョン脱出へ
翌日。
すっかり魔力も満タンだ。
ナシェルの民達にいつも通り玉座を担いでもらい、その上にどっかりと座る。
「アルノー君!待て!あともう一泊せんかね!?」
「しないったらしない。キリがなくなるだろ」
あの後、ユーディアはコートの容量限界まで宝石や黄金を詰め込んで帰ってきた。
だが、あまり詰め込みすぎるとコートを動かす際に余計な魔力を食う。そのため、いくつか吐き出させてユーディアに厳選してもらった。「全部大切だ!」という叫びは無視して、最終的に半分ほどまで減らしてもらった。……とはいえ、それでも十分すぎる量だ。
名残惜しそうに宝石を眺めているユーディアの腕を掴み、玉座へと引っ張り上げる。
「宝石で浮かれるのは分かるが、地上に帰るのが優先だろ?違うか?」
「くっ……確かに、この宝石たちはあくまでも原石だ。ならば拾えた宝石だけでも宝飾匠に持っていかねば、この宝石達が哀れだ……」
よく分からない理屈だが、納得してくれたようだ。
「それじゃあーー行くぞ!17階層へ!」
「「「おぉぉーーー!!!」」」
「「「ミューミュー」」」
「うむ……」
1人だけテンションが低い声が聞こえるが、スルーだスルー。
ーーさぁ、ダンジョン脱出まであと半分だ!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺たちは爆速でダンジョンを上っていく。
不思議なことに、魔物とまったく出会わない。
しかも18階層より上は、深層に比べると随分と狭い。《空間読解》で最短経路を確認すれば、ナシェルの足で約半日ほどで到着する距離だ。
驚くことに、シーフラ達もナシェルの民の爆速に完全についてきていた。
時折、甘えるように俺の膝へ乗ってきては、チュウチュウと魔力を吸っていく。
吸われる量自体は気にならない程度だ。
だが、400匹ほどが交代でチュウチュウしに来るので、常に魔力の一割ほどが減っている状態になっている。
俺たちは暗いダンジョンを、真っ白な魔物に囲まれて進んでいく。
17階層の迷宮のような細い小道を駆け抜け、
16階層の氷雪地帯ではシーフラ達を全身に巻きつけて暖を取り、
15階層の砂漠地帯では流砂に負けず進み続け、
14階層の溶岩地帯ではナシェルの民の魔法で冷風を起こしつつ、コートで作った巨大なうちわで扇いでもらって涼を取り、
13階層の久しぶりの密林では、ユーディアの知識でさらに食料を補充できた。
そのまま12階層、11階層、10階層と駆け抜けていく。
幸いなことに、他の冒険者パーティと出会うことはなかった。
いや……もしかすると、どこかに隠れていたのかもしれない。
傍から見れば、俺たちは屈強な亜種の謎魔物と亜種シーフラ達に守られた、魔物たちの親玉のようなものだ。
普通なら、まず近づこうとは思わないだろう。
8階層、7階層、6階層も抜けたが、依然として冒険者とは出会わない。
それどころか、魔物の気配……いや、虫や他の生き物の気配すらしない。
「何が起きてるんだ?」
「さぁな。むしろ気楽で良いではないか」
そう言いながら、ユーディアは呑気に手の中で宝石の原石を転がしている。
時折、光に透かしては、うっとりと眺めていた。
《魔力操作》の訓練以外で手が空けば、ずっとこれだ。
俺はナシェルの民に運ばれながら、ふとユーディアの手元の宝石へ視線を向けた。
「帰ったら、その宝石を加工に出すのか?」
「あぁ、無論だ。それを使って怪盗服の装飾を作るつもりなのだよ。黄金もたくさんあるからな」
楽しみだ、と言いながら、コートから宝石を取り出しては眺めている。
「魔石じゃなくてもいいのか? あっちの方が魔力が入ってるし、キラキラしてて綺麗だろ?」
ユーディアは確か、クラリスさんの店で見た2億円のカフスに付いた魔石を見て、目を輝かせていた。
なら、魔石も守備範囲のはずだ。
「ほう! 興味があるのかね!?」
ぐいっと俺の方へ身を乗り出し、宝石を掲げてくる。
……変なスイッチ押したか?
「魔石は魔力が宿っているが、宝石には宿っていない――そう思っているのだろう?
いいや、違う。宝石に魔力を込めたものが“魔石”と呼ばれるのだ」
「えっ、そうなのか?」
俺はてっきり、綺麗なのが宝石で魔石は別物だと思っていた。
「魔石って、魔物から採れるんだろ?宝石とは違うんじゃないのか?」
「その認識が一般的だ。魔石と宝石は別物だとな。
実際、魔物から採れる魔石は最初から魔力が入っていることが多い。だが、宝石も魔石も構造自体はよく似ているのだよ」
ユーディアは俺に一つ宝石を手渡す。
紫色のアメジストのような石だった。
「宝石や魔石は“命”から生まれる。一般的に言われる魔石は、魔物の命が結晶化したもの。そして、このような宝石は――大地の命が結晶化したものなのだ」
「へー」
よく分からないが、これも大地の命らしい。
試しにアメジストのような宝石へ魔力を流してみる。
だが、ポーターさんから貰った魔石と比べると、あまり魔力は入らなかった。
「宝石は魔物から採れるものと違い、加工してからでないと魔力が入りづらいのだ。そのため、初めから豊富な魔力が込められている魔石の方が需要は高い」
ユーディアは俺からアメジストを取り返すと、それを光に透かした。
「だが……どちらも命の結晶であり、尊く美しいものに変わりはない。それを、ただ見世物や見栄のためだけに扱うなど……可哀想ではないか」
「だから盗むと?」
そう問いかければ、ニヤリと怪盗らしい笑みを浮かべる。
「その通り。貴族たちが必死に守ろうとする宝は、どれも価値のある宝石や魔石であることが多い。身につけられることもなく、ずっと閉じ込められているのならば――たまには外の新鮮な空気を吸わせてやりたいと思うのだよ」
「ふーん。で、本音は?」
「独占したくなるほど美しい宝ならば、私も見たい!触れたい!感じたい!ついでに貴族たちの慌てふためく顔を見ながら、おちょくれるところが最高だ!」
ワハハハ!と、ハイテンション怪盗モードで両手を広げる。
……相変わらずだなぁ。
そんなことを思いながら、俺たちはナシェルの民に運ばれていく。
そして――
いよいよ、ダンジョン地下2階層へと到着した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ここだ」
「うぉー、すげぇ……」
ユーディアの案内で、俺たちは白い花が咲き乱れる花畑に来ていた。
薄い羽衣を重ねたような、綺麗な花だ。周囲にはラベンダーやジャスミンを思わせる、上品で華やかな香りが満ちている。
「『ベールフローレン』。別名『白の貴婦人』と呼ばれる香花だ。貴族の婦人方に人気の花でな。クラリス婦人に似合う花を持ち帰ると約束したから、立ち寄れて良かった」
「よく覚えてたな、そんな前のこと」
「何せ天才なのでね」
ユーディアは何本か花を摘み取っている。
周囲ではナシェルの民が夕食の準備をしており、今夜はいつもより豪華な食事になりそうだ。
いよいよ明日はダンジョン脱出。
花の香りに囲まれた、ダンジョン最後の夜だ。
夕食後。
ナシェルの民へ物資を分けるため、俺とユーディアはコートから次々と食材や道具を取り出していた。
外に出れば騒ぎになるため、ダンジョンを出た直後に俺たちは別れる予定だ。
そのため、今のうちに物資を分け、ナシェルの民たちの旅立ちの準備を整えている。
中古のコンパスやランタン、予備の包帯や消毒液。護身用にユーディアの投げナイフなど、俺たちにはもう不要な道具はあらかた渡す予定だ。あとは路銀として、大金貨を100枚ほど。身分札は無いから買い物は出来ないだろうが、何かの役には立つだろう。
「ネフィル達は、ダンジョンから出たらどうするんだ?」
ネフィルは草を編んで作った簡易の袋に物資を詰めながら、少し考えて答えた。
「そうですね……ユーディア様より、渓谷がありそうな場所をいくつか教えて頂きました。とりあえずシーフラ達を連れて、東へ向かおうと思います」
「と言っても、私も大体の方角しか分からん。行ったこともないからな。……長い旅になるだろう」
「覚悟の上です。それでも、故郷へ帰れなかった場合……その時は、新たな故郷を探します」
前向きなその言葉に、少し胸を撫で下ろす一方……引っかかっていることもある。
「それで、その……封界人に捕まった成樹霊達はどうするんだ?」
大人のナシェルの民は、まだどこかで囚われているはずだ。
ネフィルは一瞬だけ迷う素振りを見せたが、すぐに覚悟を決めた表情で俺たちを見た。
「……可能であれば助けたいです。しかし、封界人の住む都を荒らしてまで成樹霊を救おうとすれば、我らは皆殺しにされるでしょう」
静かな声だった。
「救世主様に救われたこの命。無謀には散らせません。なので……置いていきます」
「そっか」
その決断には、相当な覚悟が必要だったはずだ。
仲間――あるいは身内を切り捨てて、自分たちは逃げる。それも、自分たちを殺しかけた人間に捕まったままの仲間を。
俺の顔に心配が出ていたのだろう。
ネフィルはにこりと口角を上げた。
「成樹霊達は皆、屈強です。我々がいなくなったと分かれば、きっと逃げ出すことも出来るはずです」
「……そうだな」
ユーディアは無言でナシェルの民を見つめていた。
最初はあんなに魔物を怖がっていたのに、今では心配するほどに心を開いていたようだ。
その視線に気付いたのか、ネフィルは作業していた袋を置き、こちらへ体を向ける。
指で三角形を作り、頭を垂れた。
「救世主様……いえ、アルノー様。ユーディア様。不躾なお願いではありますが……もし、皆様方の住む都でエル=ナシェルの民を見かけることがあれば……」
「そこまで畏まらなくていいって。ちゃんと伝えとくよ。ネフィル達は無事だってさ」
「……ありがとうございます」
ネフィルは安堵したように胸を撫で下ろし、再び作業へ戻った。
……とはいえ、俺は一ヶ月以上、商都ミレアスに住んでいたが……亜種の魔物なんて見たことがない。
大人のエル=ナシェルの民を攫ったのは……恐らく貴族だ。俺たちが会うことは多分……ないだろう。
荷物の仕分けを終えると、ネフィルは改めて頭を下げた。
「改めまして……此度の旅路、我らをお導きくださり、ありがとうございました」
「礼を言うのはこっちだよ。色々助けられたしさ」
「君たちの助力がなければ、ダンジョン脱出にはあと数ヶ月かかったかもしれん。感謝する」
「命を救われ、我らに希望を与えてくれたお二人に感謝されるとは……なんだか、こそばゆいですね」
ネフィルは腕に巻いたボロボロの包帯を嬉しそうに撫でた。ナシェルの民は皆、どこかに俺が分けた包帯をまだ巻いている。
俺との繋がりの証、とのことらしい。
「アルノー様。ユーディア様。僭越ながら、こちらをご用意いたしました。エル=ナシェルの民と深く繋がりを持った証のようなものでございます」
ネフィルは袋から、金色の紐を編んだお守りのような物を二つ取り出した。
それを俺とユーディアへ一つずつ渡してくる。
編み込まれていて、綺麗なミサンガのようだ。
「これは?」
「我らの髪を編み込み、作った安全祈願のお守りです。エル=ナシェルの民は、大切な家族や友人が遠くへ旅立つ時、残る者が自らの毛を編んだ物を渡すのです。いつかまた、精霊の御元で縁が交わるように、と」
今回旅立つのは我々ですが、とネフィルは苦笑する。
「ありがとな。大事にするよ」
本当にナシェルの民には世話になった。
きっとまたどこかで会えたらいいが……魔物が人の都に近づくことは、もう無いだろう。
今生の別れ、というやつだ。
胸がじん……としていると、一匹のシーフラがとことこ歩いてきた。そうか、こいつらともお別れなんだな。
「ミュー」
「ん?どうした?」
しゃがんで背中を撫でてやると、シーフラがぷるぷる震え始める。
初めて見る動きだ。
本当にどうしたんだ?
するとシーフラの魔力がぐわっと膨れ上がり、地面へ流れ込んだ。
そして――
モコモコッ
土が膨れ上がり、そこから俺の片手よりも小さな小さな真っ白なシーフラが出てきた。
「ピュイ!」
赤ちゃんシーフラは元気に鳴くと、俺の足元へ駆けてくる。
「ほう。シーフラの増える瞬間は初めて見たな」
「俺も。こりゃ《魔力知覚》が無けりゃ、確かに自然発生に見えるな」
手のひらを差し出すと、赤ちゃんシーフラは小さな手足を必死に動かして登ってきた。ボールペンくらいの大きさしかない。
可愛いなぁ。
目元が紫色の毛になっていて、化粧をしているみたいだ。ちょっとオシャレな女の子だな。
そう思って赤ちゃんシーフラを指先で撫でていると……ふと、その魔力の色に目が止まった。
……俺と同じ、紫色だ。
色合いも揺らめきも、まったく同じ。
「な、なんかこの子だけ……俺の魔力に似てね?」
俺がユーディアに見せると、彼は顎に手を当てた。
「ふむ。シーフラ達は君の魔力を食べていたのだろう?確か、オスの魔力をメスが吸い取って、巣を守る力とする……とダンジョン図鑑にはあったな」
「……は?」
「恐らくだが、シーフラが自然発生ではない以上ーーメスは、オスの魔力を体内に溜めるのだろう。一定量溜まったところで――土の中へその魔力を送り、子を産み落とす」
「……ちょっと待て。ってことは、この子……」
……俺の魔力から生まれた子!?
「ピュイ!」
周囲を見ると、他のシーフラも次々と子供を産み落としていた。
生まれてくる子は、全部――俺と同じ魔力の色。
「くくくっ。とんだ大家族の主になったな?アルノー君」
「ままま、待ってくれ!?俺、パパになるの!?彼女いない歴=年齢なのに!?」
そもそもこのシーフラ達には元々オスがいたはずだ。
つまり俺は――人妻を奪ったことになる。
シーフラのオスよ!
ごめん!本当にごめん!
「ピュイ」
「生まれてすぐだが、この子らも旅立つのだ。父に別れの挨拶をしに来たのかもしれんな」
「やめてくれ!胸が痛い!」
父親になったつもりはない。
だが、自分の魔力から生まれたと聞くと、分身みたいなものだ。
それなのに、もう別れなくてはいけないなんて……。
「うぅ……今晩、一緒に寝るか?」
「「「ピュイ!」」」
こうして俺は一夜にして、400匹近いシーフラの父親になった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
翌日。
ダンジョン最後の日だ。
いつも通り、俺たちはナシェルの民に運ばれて、ダンジョン地下1階層までやってきていた。
地下1階層と地下2階層の地図を持っているので、俺はそれを見ながら進む方向を指し示すだけだ。
相変わらず、魔物と一切出会わない。
楽なもんだ。
その時だった。
ピクリ、とユーディアが反応する。
「ダンジョンの外……人が沢山いる」
「そうなのですか?我々にはまだ気配は何も……」
「私は人間特化の気配察知を持っているのだよ。このままではマズイな」
当初の予定では、ナシェルの民とシーフラ達が先にダンジョンから出て、人々の混乱に乗じて郊外へ逃げる。その後で、俺たちが上がってくる手筈だった。
しかし、人が沢山いるとなると話は別だ。
ナシェルの民達に攻撃が集中するかもしれない。
「どうする?ユーディア。先に俺たちが出るか?」
「……なんとも言えん。だが、我々だけ出てからナシェルの民が出ると、魔物に襲われて逃げたように見えてしまう。ナシェルの民達へ、悪い印象を与えたくはない」
ユーディアは、ちらりと俺を見る。
「魔力は全快しているな?」
「昨日、ユーディアに4割分けてやった分も、ちゃんと回復してるよ」
多すぎるんだよ。そんなに使わないくせに……。
ジト目で睨むが、ユーディアは気にした様子もない。コイツめ……。
「ならば、このままダンジョンを出よう」
「は!?この目立つ感じで!?」
「我々とナシェルの民が無関係を装って出れば、ナシェルの民を庇う口実がなくなる。下手をすれば、魔物を庇ったと見なされ、後で処罰が下るかもしれん」
ユーディアは腕を組み、続ける。
「だったら最初からナシェルの民と共に出て、全員で遠方へ逃げる。その後、私の《無名讃歌》でこっそりダンジョン入口へ戻り、何食わぬ顔で出てくればいい」
そして、真剣な声で付け加えた。
「何かあれば、アルノー君のコートで全体を守れ。……嫌な予感がする」
ユーディアが眉間に皺を寄せ、出口の方を睨む。
こいつがここまで警戒するということは、何かあるのだろう。
「わかった。……みんな、それでいいか?」
「かしこまりました」
「ミュー!」
確認を取ると、俺たちはダンジョンの出口へ向けて爆走する。
地下1階層は徒歩なら半日ほどの距離だ。
だが、ナシェルの民の脚力なら数十分で着く。
やがて、ダンジョンの外――地上が見えてきた。
時刻は夜。
久しぶりに見る高い星空が、出口からちらりと覗く。
夜にしたのは、騒ぎが多少は少なくなるのと、ユーディアや俺の技能が夜の方が都合がいいからだ。
俺はコートに魔力を流し込みながら――
一気にダンジョンの外へ飛び出した。
ーーおよそ、2ヶ月半。
長い時間を経て――
俺たちはついに地上へ生還したのだ。
その瞬間、
「放てぇーーーー!!!!」
凄まじい魔力の奔流が迫ってくる。
心構えをしていたおかげで、すぐにコートで全体を覆い、攻撃を防ぐ。覚悟していた割には魔力は一割も削れない。巨大コウイカのダイレクトアタックに比べれば、痒いものだ。
やがて攻撃が止み、コートをほどく。
その瞬間、俺は気づいた。
夜のはずなのに、空が煌々と照らされている。
あまりにも眩しい。
思わず目を細めながら周囲を見渡すとーー
「無傷……!?」
「あれだけ食らったのに!?」
「次砲、準備!急げ!」
時刻は深夜3時。
本来なら、人々が寝静まっているはずのダンジョン封鎖区画。
だがそこは、光魔法によってぐるりと照らされ、
まるで真昼のような明るさになっていた。
そして、
闘技場の観客席のように、
大勢の人影が俺たちを取り囲んでいる。
違うのは、歓声ではなく――
無数の武器がこちらに向けられていることだ。
弓は引き絞られ、
槍は今にも突き出されそうに構えられ、
杖には魔力が集まり、
剣の刃が月明かりを弾いている。
完全な包囲。
逃げ道は――どこにもない。
俺たちは、
数え切れないほどの冒険者たちに囲まれていた。




