表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
極悪非道もサジ加減!~ポンコツ怪盗の弟子になった俺は、悪事で悪党共を救う〜  作者: 一二三 五六
【第1章】怪盗は夜空を舞い、弟子は宙を仰ぐ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/82

【57】異種族交流

魔力がもう残りわずかだ。ふらふらとユーディアの所へ向かうと、水の上を歩きながら俺の方へ近づいてきた。


「トルースカを使ったのか?なんと勿体ない……」


ユーディアは少し肩を落としている。

まあ無理もない。

巨大コウイカに追われた時でさえ絶対に手放さなかったくらい、気に入っていた果物なのだ。


「仕方ないだろ。追い払う方法でパッと思いついたのがそれだったんだ。水だと水棲の魔物に効くか分からなかったしさ」

「……一理ある」


納得はしていないようだが、理解はしてくれたようだ。全く食いしん坊め。


ユーディアが岸へ上がると、俺たちは軽く手を上げ――パンッ、とハイタッチを交わした。


お互い無事で何よりだ。


そのままユーディアは、ちらりと白ゴブリンたちへ視線を向ける。


「……向こうは戦意がなさそうだな。今のうち離れよう」

「えっ」

「何を驚いている?向こうは魔物だぞ。しかも亜種だ」

「それは、まぁ、そうだけど……」

「君がゴブリンを助けた時は本当に肝が冷えたのだ。もう関わらない方がいい」


そうかもしれない。

ゴブリンは知能が低く、残虐な性格だと冒険者ギルドの依頼書に書いてあった。


……けれど、少し助けてもらったし、援護もしてくれた。悪い奴らではない、と思う。


「シーフラの件もあるし、ちょっとくらい様子を見てみようぜ?」

「馬鹿か?シーフラの件はまぐれだ。人間とは違い、他種族で助け合って生きていくなど、魔物の世界にはない。弱肉強食だ。寝首をかかれるかもしれんぞ」

「いざという時はお前がいるだろ?そん時は助けてくれよ」


俺が白ゴブリンの方へ歩き出すと、ユーディアは小さく舌打ちした。


「……話を聞かんサルノーめ」


悪態をつきながらも、すぐ横に並んでくる。

いつでも技能を発動できるようにだろう。

彼の周囲で魔力が、ゆらりと揺らめいているのが分かった。


「ギャギャ……」


白ゴブリンたちは、近づいてくる俺たちに怯えて身を寄せ合う。


……あぁ、そういや武器を持ったままだ。


スピアをしまい、俺は不用意に距離を詰めず、その場にしゃがみ込む。そして両手を上げて見せた。


「お前達に危害を加えるつもりはないよ。安心しろ」


だが、それでもまだ震えている。


……うーん。


あ。


俺が黒いからか?


コートに指示を出し、白ゴブリンと同じような真っ白な色へと変化させる。着ぐるみ状態はそれなりに魔力を使うので、残念ながら今回はお蔵入りだ。


すると、白ゴブリン達がざわめき始めた。


様子を見ていると、恐る恐る一匹の白ゴブリンが代表するように前へ出てくる。よく見れば、先ほど魔法で俺たちを援護してくれた、一番大きな個体だった。


……色変え効果、早速ありかもしれない。


「グーディギッティ」


ボスらしき白ゴブリンは、親指と人差し指で三角形を作り、それを横に動かしてから頭を下げた。


……何かの挨拶か?

随分と文明的なことをするものだ。

せっかくなので、俺も真似してみる。


「えーと、グーディギッティ?」


同じように三角形を作って動かし、頭を下げる。

すると白ゴブリンは「グディ……」と喉を鳴らした。


……うーん。多分、コミュニケーションが取れて嬉しいのか?分からんけど。


その時、白ゴブリンの白い腕が血で赤く染まっていることに気づいた。


「なぁ、手当てしよーか?」

「ギ?」


俺は左手の包帯ぐるぐるを指差し、次に白ゴブリンの腕を指し、巻くようなジェスチャーをする。

すると伝わったのか、白ゴブリンは怪我をした腕を俺の方へ差し出してきた。


「……ゴブリンに、話が通じている、だと?」

「挨拶もするし、意外と頭良いのかもな。よしよし、待ってろ」


俺はコートからホースを伸ばし、水を出して白ゴブリンの腕を洗う。消毒液はゴブリンにどう効くか分からないので使わない。

あとは包帯だけど……今コートにあるのは俺の血で汚れているんだよな。


仕方なく、左手の包帯を少しほどいて使うことにした。


「ユーディア。手伝ってくれ」

「……全く」


ぶつくさ言いながらも、ユーディアは投げナイフで適当な長さに切り、それを白ゴブリンの腕に巻いていく。


「ほら、こんなもんかな」


包帯を巻き終えると、白ゴブリンは自分の腕を見つめ、それからゆっくりと俺を見上げた。


「ギギ!グーディギッティ!」


また指で三角形を作って動かし、頭を下げる。

多分、「ありがとう」ということだろうか?


それを見ていた白ゴブリン達が「ギュイー!」と俺たちに近寄ってくる。同じく怪我をしている腕や足を俺に出してきた。


「ま、待て待て。一列に並べって」

「……ゴブリンとこんな近くで戯れる事になるとはな」


一匹だけ手当てして終わり、とはいかなくなってしまった。

俺たちはヘトヘトの体で包帯を切り分け、白ゴブリンたちへ順番に分け与えていく。時間はかかったが、全員の処置を終える頃には、俺の左手の包帯はちょうどいい塩梅になっていた。


……今までが巻きすぎていただけだな。


「じゃ、達者で暮らせよ」


治療を終え、コートをいつもの黒へ戻した俺は、ユーディアと共にキャンプ予定地へ向かって歩き出す。

池の近くで野営なんてしたら、あの緑ライオンがまた来るかもしれない。


すると、後ろから白ゴブリン達がゾロゾロとついてきた。


「あのー、自由解散でいいんだぞ?」

「ギュイー!」

「……なんと言ってるのだ?」

「俺が分かるかよ……」


声をかけても「ギュイー!」しか言わないのだ。

たとえ文明的な面があろうと、言葉の壁はやはり厚い。


そうこうしているうちに、キャンプ予定地に到着した。


……白ゴブリンもセットである。


少し離れた場所から、じっと俺たちを見ている。


「とりあえず、飯食おうぜ。魔力を回復させたい」

「賛成だ。ならば、いくつか食材を出してくれるかね?私が皮を剥こう」

「じゃ、食材をカットするのと、スープの味付けは俺が担当するわ」


食材や道具を取り出し、それぞれが作業を始める。

その間も、白ゴブリン達はじっとこちらを見つめていた。


……気まずい。



その時、



グゥゥ……



白ゴブリン達の腹の音が聞こえてきた。


「……なぁ、ユーディア」

「ダメだ」


即答された。


「アルノー君は人が良すぎる。我々の食糧も無限ではない。それに、相手は魔物だぞ。下手をすれば我々が彼らの今日の夕食になるかもしれん」


くどくどと説教されるが、俺たちを襲うならとっくの昔に襲ってるはずだ。


「それは……そうかもだけどさ?こいつら意外と頭もいいし、文化的なところもあったじゃん?これも何かの縁だって」


別に見返りを求める訳じゃないが、シーフラ達とも仲良くなれたのだ。もしかすると、この文化的なゴブリン達とも仲良くなれるかもしれない。


「1回くらい、飯やろーぜ?腹いっぱいになったら帰るかもだしさ」


な? と手を合わせて頼むと、ユーディアは心底面倒くさそうに眉間へ皺を寄せ、深いため息をついた。


「……はぁ〜……分かった。君の直感を信用しよう」

「サンキュ」


俺はコートからパンのようなフワンプ・ツリーを丸ごと一本出し、いくつかの果物や野草を取り出す。


「ほら、自分たちで切り分けて食えよ」

「ギャウっ!?」


白ゴブリン達は食材に駆け寄り、物欲しそうに食材を凝視している。しかし、手は出さない。俺の方を伺うように見るだけだ。……割と礼儀正しいな。


「あー……グーディギッティ?」


指で三角形を作って動かす。

食べてOK!大丈夫!そんな念を込めておいた。


すると突然、白ゴブリンたちはその場で膝を折り、手で三角形を作って頭より高く掲げた。


「「「ゲディーヤグーヤ」」」


同時に鳴き、深く頭を下げる。


ゲディ……? また何か言われた気がするが、感謝されていることは分かった。

その後、白ゴブリンたちは食材をそれぞれ手に取り、爪や牙を使ってきちんと切り分け始める。

食べていいという気持ちが伝わったようなので、よしとしよう。


「我々も食べよう」

「だな」


ニーナさんのサンドイッチは食べきったので、今日からフワンプ・ツリーを輪切りにして、そこに果物や野草を乗せたものになる。

これはこれで最高に美味い。

果物とか甘い系が多いので、スープはしょっぱいミネストローネにしといた。フワンプ・ツリーの木の根がコロンのようなホクホクした感じなので、ミネストローネ味によく合う。


ユーディアと共に食事を取っていると、共闘した大きな白ゴブリンがいそいそとやってきた。

俺達には不用意に近づかず、少し離れた所で立ち止まり、両手を上げる。


……俺が白ゴブリン達に近づいた時と、同じ動きだ。


白ゴブリンは地面に爪で何かを書き出す。複雑な模様で鳥のような見た目は、まるでナスカの地上絵だ。


「む?何かの魔法陣、のようにも見えるが」

「魔法陣?丸くねぇじゃん」

「別に魔法陣は丸くは無いだろう」


この世界の魔法陣は別に円の中に記号とか呪文とかを書く訳じゃなく、フリースタイルらしい。


なんちゃってナスカの地上絵を作った白ゴブリンは、鳥の頭らしき所に手を置く。すると、ゴブリンから魔力がナスカの地上絵に流れ、淡く光る。


「グディ、ギディ、ニージャ」


何かの呪文を唱えると、カッ!とナスカの地上絵が1度だけ眩しく輝いた。


白ゴブリンは「ギャ、ギャ」と鳴きながら俺たちを手招きして、ナスカの地上絵を指さす。


……触れ、ってか?


「妙な魔法陣だが……悪意のようなものは……無いな。むしろ、感謝、尊敬……?それに似た感情が見える」


ユーディアが《注目律》でナスカの地上絵を書いた白ゴブリンの感情を読み解く。悪いものじゃなさそうだ。


ユーディアと顔を合わせる。

俺はコクリと頷いて、魔法陣に手を伸ばす。

何かあればユーディアの技能で助けてくれるはずだ。


そっ、と魔法陣に触れる。

すると、俺の魔力が魔法陣へ流れ込み、カッと一度眩しく輝いた。



その時。



「助けていただき感謝いたします。“救世主様”」



声が聞こえた。声変わり前の少年の声だ。

まさか……と思い、白ゴブリンを見つめる。


「命を救うだけではなく、貴重な食糧まで分けて下さりました。エル=ナシェルの民を代表し、精霊の導きがありましたこの出会いに、深甚なる感謝を捧げます」



ーー白ゴブリンが、喋った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ