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極悪非道もサジ加減! 〜ポンコツ怪盗の弟子になった俺は、悪事で悪党共を救う〜  作者: 一二三 五六
【序章】かくして異世界に来たりけり

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【7】脱走2

無我夢中で駆け抜ける。

後ろから怒鳴り声。

俺を追いかけてくる複数の靴音。


くっそ!

あの怪盗、なんの足止めにもならなかった!


「はぁ、はぁ……君、私を捨て駒にしたのかね!?」


いつの間にか怪盗が俺と並走していた。

あの状況から抜け出して俺に追いついたのか!?


「鍵が開けられない二流のくせに、逃げ足だけは超一流じゃんか!」

「はっ!言うではないか小僧。ーーそこを左だ!」


T字路を指さし、怪盗は叫ぶ。


もちろん俺は右に曲がる。


「コラコラコラ!?待ちたまえっ!」


Uターンをして怪盗が俺に追いつく。


「聞こえていなかったのか!?左だと言っただろう!?」

「指輪を盗んだ犯罪者の言葉を誰が信じるか!こちとらここ数時間で何回騙されたと思ってんだよ!」


肩を掴まれるが、力いっぱい振りほどく。


「助けに来てやったのに!

地下牢で珍獣を見たと思ったが、本当に頭まで猿だったか!?」

「助けなんて呼んでねぇよ!このポンコツ怪盗!なんの見返りがあって俺なんかを助けるんだ!」


前方から衛兵。

回り道をされたらしい。


「来い!小僧!」


怪盗が俺にタックルし、

横の扉に飛び込む。


俺は床に転がされ、

怪盗は即座に内側から鍵をかけた。


ドンッ!

ドンッ!


扉を破ろうとする音が聞こえ、

俺は尻もちをついたまま後ずさる。


「いいか?ここから逃げるには互いの協力が必要だ」


息を整える俺を、怪盗は睨みつける。


「君を助けるのは、見返り云々ではない。

ーー私自身の為だ」

「はぁ?」


意味が分からない。


混乱する俺に、

怪盗は手を差し伸べる。


「君に死なれると、私も困る。

説明している暇は無い。

信用しろとは言わん。

今はーー互いに利用し合え」


あの夜の怪盗とは別人のように、

切羽詰まっているようだ。


扉を破る音が大きくなる。

もう時間はない。


「……くそっ!」


俺は、その手を取った。


ドォン!!


同時に扉が破壊され、

衛兵がなだれ込んでくる。


ーー捕まる!


「小僧!手を離すなよ!」


怪盗は俺を引き起こし、

低い声で呟く。


「ーー《無名讃歌》」


その瞬間、

俺を捕まえようとしていた衛兵が、

俺の身体を通り抜けて床に倒れた。


まるで、俺が幽霊になったかのようだ。


怪盗は俺の腕を引き、

入口を塞ぐ衛兵に突進する。


ぶつかるーーと思った瞬間、

俺達は人の体をすり抜けた。


振り返れば、衛兵は俺達のことを見失っているようだ。

そのまま、さっき怪盗が指さした廊下を駆け抜ける。


「す、すげぇ!お前、マジで怪盗なんーー」


目にした技能に驚き俺が声をかけようと前を向くと、


ーーぽたり。


怪盗の鼻から、赤い雫が落ちる。

この症状を、俺はつい最近体験した。

……魔力欠乏だ。


「全く、とんだ無駄足を踏んだ」


怪盗はグイッとそれを袖で拭く。


「おい、大丈夫かよ……」

「ハッ!君の時のような無様は見せんさ」


……俺がぶっ倒れたとこ、やっぱ見てたか。


とはいえ、怪盗はまだ動けそうだ。

心配より、まずはこの窮地を抜け出す方が先決だろう。


今度は左へ。

前方に上に続く階段。

ーーだが、見張りが既にいた。


慌てて二人で角に隠れる。

怪盗は階段を睨んだまま、口だけ動かす。


「遺憾だが、君。私の技能を使っていたな?

今それは使えるか?」

「無理だ。

使えたとしてもまた暴走してぶっ倒れる気がする」


そもそも、どうやって使ったか分からない。

必死すぎて検証どころではなかった。


「怪盗。さっきの通り抜けたやつ、もう一度使えないのか?」

「私一人なら可能だ。君を連れては無理だな」


出来るだけ温存しておきたかった、と怪盗はぼやく。


背後から足音。

まだ遠いが、確実にこちらへ来ている。


なんとか、この状況を打破する方法を……


「おい怪盗」

「なんだね」

「お前、“人に覚えられにくい”技能を持っているんだよな?」

「《無名讃歌》のことかね?」


さっきの人を通り抜けた技能だ。


「それ、どういう効果だ?」

「簡単に言えば、世界から存在感を薄める事ができる。

 自身だけなら容易だが、服や他人を含めると魔力を大量に食う」


怪盗は俺を見る。


「それがどうした」

「なら…………」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


階段付近に差しかかった衛兵たちの前に、

廊下脇で座り込む“負傷兵”がいた。


腕を押さえ、苦しそうにしている。


「大丈夫か!?」

「俺のことは、いい。

それより……あいつを……あいつを捕まえてくれ……!」


苦しそうに廊下奥を指さした。

示された廊下の奥を、黒い影が横切る。


ーー上下黒い装束の人影。


「怪盗ユーディアだ!」

「追え!」


衛兵達がその後を追う。

一人の衛兵が、負傷兵の傍に膝を着いた。


「動けそうか?肩を貸せ、医務室までーー」

「いい、お前も行ってくれ……」

「馬鹿野郎!仲間を放ってはーー」


負傷兵は、衛兵の手を掴んだ。


「お前の責務はなんだ?俺を助けることじゃないはずだ。多くの人を悪から守るーー違うか?」

「だがーー」


パンッ、と衛兵の頬が平手打ちされる。

力は入っていなかったが、その衝撃に衛兵は目を瞬かせた。


「迷うな。信じろ。

ーー衛兵として、やるべきことをやれ。」

「っ……!」

「……その後にでも、肩を貸してくれよ」

「ーーっ!!……分かった」


衛兵は立ち上がる。

その目には決意がみなぎっていた。


「お前は、ここに残れ!後で迎えに行く!

それまでーー死ぬなよ!」


衛兵は走り出す。

最後まで、彼は振り返らなかった。


全ての衛兵が廊下の奥まで走っていった後。


――その背後で、

“負傷兵”が何事もなかったかのように立ち上がったことに、

誰も気づかなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


衛兵服に身を包んだ俺は、胸をそっと撫で下ろす。

アドリブで思わずビンタしちゃったが、

あれはあれで良かった。

もしかすると俺には主演男優賞の才能があるかもしれない。


「……」


背後に気配。


振り向くと――


「……許さん」


パンツ一枚の不審者。


いや、

正確には、俺のリクルートスーツを小脇に抱えた怪盗がパンツ一枚で立っていた。

だいぶご立腹の様子だ。


「仕方ねぇだろ。お前、着れなかったじゃん」

「許さんぞ……小僧……」


そう。

俺たちは服を交換したのだ。


俺は衛兵として溶け込み、

怪盗は俺のスーツで囮になる――はずだった。


だが。


「……小さすぎる」


俺の安物スーツを、怪盗は着れなかったのだ。

しかし、時間がなかった。


「よし、このまま行け」

「はぁ!?」

「お前姿消せるだろ」

「だがっ!」

「いいから行け!見つかるだろ!」


怪盗ははくはくと口を動かし何かを言おうとしたが、

ギリィ……と歯を食いしばり、廊下の奥へ消えていった。


結果、

怪盗ユーディアはスーツをひらひらさせながら、パンツ一枚で廊下を疾走する羽目になった。

技能がなければ完全に露出狂である。


ジトリ……と批判的な目で見られたが、

今回は仕方がなかったので納得してもらうほかない。


「では、そろそろ服を返してもらおうか」

「また必要になるかもだろ?それに服がない方が魔力コスパいいじゃん」

「この怪盗ユーディアに変質者の格好を続けろと!?」


助けるんじゃなかった!と天を仰ぐパンイチ怪盗を無視し、

俺は廊下奥にある扉を指さす。


「一度あそこの部屋に隠れるぞ。

お前でも着られる服があるかもしれない」

「なければその服、返して貰うからな……」

「それは時と場合による」


ハァーン!?と怒る怪盗を引きづり、

静かに扉を開ける。


中は可愛らしい部屋だった。

貴族のお嬢様の寝室のようだ。


テーブル、ドレッサー、クローゼット。

そして、大きな天蓋付きのベッド。


ーーそのベッドが、動いた。


天蓋がはらりと捲れ、

現れたのは、ふわふわの髪に青い瞳。

ポップコーン……ポン子だ。


「……?」


淑女の寝室に、

衛兵服の死刑囚と

パンツ一枚の変質者が侵入していた。

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