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極悪非道もサジ加減!~ポンコツ怪盗の弟子になった俺は、悪事で悪党共を救う〜  作者: 一二三 五六
【第1章】怪盗は夜空を舞い、弟子は宙を仰ぐ

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【24】第3の解決策

「なぁ、リナって何の職業なんだ?」

「盗賊だよ。見て分からない?」


リナは俺の前に躍り出て、くるりと回転。

相変わらずのへそ出しファッションに短パンで、もう少し季節が前ならかなり寒いだろう。


「露出が多いから露出狂かと」

「バッカ!もー!ほんと、あんたのそういうデリカシーが無いところ嫌いだからねっ!」


ぷんすかしながら隣を歩くリナは、未だにチラチラと俺を見てくる。

盗賊が狙っているのだ。

俺はビスキュイを体の影に隠す。


「……逆に、あんたは何の職業なんだい?」

「ヒミツ」

「っはぁー!?人に喋らせといてそれはないよ!」

「別にお前が勝手に答えただけだろ?俺は黙秘権を行使する」

「〜っ!あぁもうっ!ずるいったらずるい!」

「はっはっはー。好きなように想像してくれ」


やはり打てば響く女である。なかなかに愉快だ。

うーんと頭を捻らせたリナは、探るような目付きを俺に向ける。


「……言えないような職業とか?」

「ご想像にお任せします」

「……盗賊?」

「どうだろう?」

「……諜報員?」

「さぁ?そうかもな?」

「……“見習い”とか?」


ギクッ


思わず一瞬反応してしまった。ようやく見つけた俺の弱点に、リナは獲物を捉えたかのようにキラリと目を光らせる。


「へぇ〜、その歳で“見習い”なんだ?」

「……俺、何も言ってないだろ」

「ご想像にお任せするんでしょ?」


口に手を当て、ぷぷぷと笑う。

この女ァ……。


「じゃあ、アルノーは技能が少ないか、《基幹技能》持ってないんだ?」

「《基幹技能》くらい持っとるわボケ」

「だったら技能いくつ?」

「そう言うお前は?」

「質問に質問を返すのはダメだよ!」

「お前が答えたら言ってやる」

「絶対ウソ!職業教えてくれなかったじゃないか!」


むー!と俺を睨みつけるリナ。

……調子に乗りやがって。

俺は出来るだけ、胸を張って答えた。


「20個」

「…………え?」

「20個だ」


一度は吐いた嘘だ。しかし、例え嘘でも、繰り返せばそのうち真実になるかもしれない。

そう思っておこう。


「ほら、言ったぞ。お前は?」

「う、嘘だ!だってそんなにあるなら、あんた職業訓練所に行かなくてもいいじゃん!」

「事実だ。帰ったらエドとユノに確認してみればいい」

「う、嘘……絶対に……」

「で?人に言わせといて、お前はダンマリかよ?」

「う、うぅ……」


キュッと口を結び、プルプルと下を向く。


「……こ」

「あ?」

「……ご、こ」

「は?何?聞こえねぇよ」

「っ〜!5個だよ!5個!笑いたきゃ笑え!」


つんっ、と顔を背けるリナ。

平民は生涯で7~8個の技能を獲得するから確かに少なめだが、俺からすれば十分多い。


「笑わねぇよ。それがお前が神様から認められた努力の証だろ」


ベレー先生曰く、限界を超えることで技能は獲得できるのだ。5つも技能を貰ったということは、その数だけ彼女なりに努力をしてきたことになる。笑える訳がない。


「……あんたと居ると、なんか変な気分になるよ」


少し不貞腐れているが、不機嫌では無さそうだ。

しっかし、嘘じゃなくて本当の個数を言うとは、意外にも素直な奴だな。


あまりこの話をつついても仕方ない。

俺は話題を変えることにした。


「なぁ、お前って生活費どうやって稼いでるんだ?」

「突然何さ?」

「今、金欠でさ。大金貨2000枚ほど欲しいんだよ」

「それ金欠っていうレベルかい!?」


盗賊にすらドン引かれる金額だ。俺も同感である。


「参考までに、な?いいだろ?」


俺が頼むと、リナは渋々といった様子で口を開いた。


「……あたしみたいなのはどこも雇ってくれないから、自分でその日の仕事を探すんだよ」

「と言うと?」

「商家に手伝いとして自分を売り込みに行くんだよ。その日限りの荷運びとか、ごみ捨てとかの雑用をやって、小銭を稼いでる」


なるほど。時短バイトみたいなものか。


「もちろん、仕事を貰えるかはその日次第だからね。犯罪数値の高いあたしを使いたいってやつは少ないよ。……それで食い扶持に困ったら、ひったくりでもしなきゃ、エドとユノを飢えさせちまうからね」


リナは、エドとユノが技能を沢山覚えられるように職業訓練所に行く金を工面してやったと聞いた。家族想いなのはいいが、せめて俺如きに捕まらないように頑張ってもらわないと逆にエドとユノに迷惑がかかる。


「アルノー。あんた、大金貨2000枚も手に入れてどうするのさ?貴族の貯金よりもかなり多いよ?」

「欲しいものがあってな」

「大金貨2000枚の?家とか土地とか?」

「ちげーよ。ちょっとしたアクセサリーが欲しいんだよ」

「はぁ!?国宝でも買い取るつもりかい!?」

「まぁ、そんなとこ」


半信半疑の様子で俺を見てくる。

だが、ユーディアが国宝級だと言っていたから、あながち間違いじゃないはずだ。


「俺の目的の為に必要なんだが、すげぇ高くてさ」

「なにさ?国宝が必要な目的って?」

「ん〜……なんというか、ちょっと魔術が暴走して変な契約が結ばれちまってさ。その契約の効果を無くす為に、その国宝級のアクセサリーが必要なんだよ」

「へぇ……あんたも大変なんだね。それ以外に解決する方法はないの?」

「絶対では無いけど、俺が色んな技能を覚えたら契約が切れる可能性があるらしい」

「あぁ、だからその歳で職業訓練所にいってるのか」


納得したように、リナは手を叩いた。


「だからさ、この前のマッサージ本は有難かったよ。サンキューな。リナ」

「その様子なら、あの本についてもちゃんと読めたんだね?へへ、良かった」


読めたどころか、実践もしたのだ。

効果は抜群である。

あれからユーディアに指圧のポーズで近づくと逃げられるようになったけど。


「それで、アルノーの結んだ契約ってどんなやつなの?」

「んーなんというか、友達と上下関係が強制的に作られる契約?みたいなやつ」

「ふーん?あたし、契約魔術とか詳しくないけどさ、そういうのって片方がやめたくなったら解除できる、みたいなのじゃないんだね」

「そうなんだよなぁ。一応、上下関係の“下の方”が“上の方”を超えると契約が自動で解除されるんだけど、かなり時間がかかるんだよ。ってわけで、もっと手っ取り早く解除できる方法を模索中ってわけ」

「ふーん??」


分かってるのか分かってないのか、リナは小首を傾げた。まぁ、ぼかして伝えているからよく分からない契約に聞こえても仕方ない。


「なぁ、アルノー?上の方を“超える”ってさ、どういう事?」

「は?超えるって、そのままの意味だよ。“上の方”よりも“下の方”が技量を超えるってこと」

「じゃなくてさ、」


ふと、リナは目を瞬かせながら聞いてきた。


「“超える”って、具体的に何をすれば“超えた”ことになるんだ?」

「……」

「誰が“超えた”って判定するのさ?」

「……」

「あたし魔法とかさっぱりだけど、例えば“下が上をやっつけちゃう”とかも、“超えた”ってことになるのかい?」


その言葉を聞いて、俺はハッとした。


“師を超える”という言葉はかなり曖昧な定義だ。

師よりも技能数を増やすのか、師よりも世界に名を残すのか、シンプルに師を倒すのかーー様々な解釈ができる。

俺が怪盗になってユーディアよりも上手に怪盗が出来れば“超えた”ことになると考えていたが、そもそも“誰が師よりも上手く怪盗できたか”なんて判定するんだ?


ーー神?

いや、いくら神でもそんな個人的な技量のバランスを見て、契約のオンオフはしなさそうだ。


だとすれば、“師を超えた”という判定はーー




ーー師匠自身の認識に依存するんじゃないか?




「リナァッ!ありがとうッ!」


思わずリナに抱きついた。


「ひゃわぁっ!?!?」

「お前のお陰で、他に出来そうな事が見つかった!ありがとうッ!」

「あっ、あの!ちょっと!道端で恥ずかしいっての!」


セクハラだろうが関係ない。

金策など、既に俺の頭からすっ飛んでいた。


固まるリナの背中をバシバシ叩いた後、

彼女の手にビスキュイをひとつ握らせる。


「これ、お礼な!じゃ!」

「え?ちょっと!」


これはいいことを聞いた。

俺はリナを置いて急いでアジトへ向かった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「……と、言うわけで、俺と決闘しろユーディア」

「なぁにが“という訳”かね?」


夕食と文字の練習を終え、ユーディアにリナから聞いたことを伝えると、冷ややかな視線を向けられた。


「なんでだよ!すげぇいい案じゃんか!」

「ちなみに決闘とは具体的に何をするのかね?」

「とりあえず殴り合おう」


このひょろひょろ筋力ひよこ怪盗を殴り飛ばすなど、赤子の手をひねるようなものだ。握り拳を作る俺に対して、ユーディアは「猿め」と呟く。


「私が君に近接戦でかなうわけがなかろう」

「だからこそ俺が勝てる、つまりはお前は俺に“参った”と思う。これで【師弟契約】解除にならないか?」

「“師の認識により弟子が自身を超えた”という話には一理あるかもしれんがーー」


ユーディアは腕を組み、フンと鼻を鳴らす。


「そもそも“勝てるわけがない”と思う者に負けても、君が私を超えたなどとは全く思えん」

「はぁ?弱腰すぎるだろ。逃げんのかよ?」

「そうだ。怪盗は奪い、逃げる者だ。戦う必要はない。君の言う通り、逃げればいいからな」


つまりは、ユーディアが俺との決闘に勝てるつもりで挑み、それを俺が倒さねば意味がないということだ。

なんてこった。


「あと、痛いのは嫌だ」

「そっちが本音っぽいな!んなこと言ってる場合かっ!」

「怪盗は低俗な喧嘩はしないのだ」

「それ怪盗関係ないだろ!いいから俺に殴られろ!ワンチャン解除されるかもしれないだろ!」

「やれやれ……ベレー殿に鍛えられ、君の頭まで筋肉になってしまったらしい」


嘆かわしい、と首をふるふる横に振る。


「そんなに殴りたいのなら、好きにすればいい」

「えっ?突然の手のひら返しだな?いいのかよ」

「殴れたらな」

「よっしゃ!」


とりあえず許可が出たのでグーで殴りかかってみる。

しかし、



スカッ



俺の拳は、立っているユーディアの体をすり抜けた。


「きったねぇ!《無名讃歌》を使いやがって!」

「ふん、決闘とは己の全てをもって挑むことであろう?質のいい技能も実力のうちだ」


ごもっともな言い分だ。もっとユーディアを焚きつける何かがなければ、まともに戦ってくれなさそうである。


「そんなことより、訓練を始めるぞ。今日は商業街の東へ行く」

「ちぇー」


諦めたわけではない。


ーー何かしらの方法で、必ずや下剋上を成し遂げてやる。


そんな野心を胸に、俺は今日の訓練へと向かった。

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