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第2話─会合

「これはこれは、親愛なる閣下ではございませぬか?」


それが仮面舞踏会が開かれている館の最上階に位置する一室に入ってきてから放った男の一言だった。


この舞踏会のコンセプトを意識してか男の服装はありふれた礼装だったが、その屈強な体付きと仮面からもはみ出すケロイドの火傷痕は隠しきれておらず、いかにも男が只者ではないという雰囲気を醸し出していた。


「して、何とお呼びしたら良いでしょうか?」


何とも言えない笑みを顔に表しながらそう言った男に対し、大きな円形のテーブの一席に身を委ねていた女は一言いい放った。


「ペドロ」


「そうですか。 では、失礼しますよペドロ」


男の嫌味のこもった言動に女は眉一つも動かさない。まさに相手にしないとはこの事を言うのだろう。


「私のことはシーザーとでもお呼びください」


それから向かいに座ったシーザーは次の登場者が現れるまで無言を貫いた。


今にも凍りつきそうな雰囲気だった部屋を訪れたのは、ヤコブと名乗る長身の男だった。


今にも千切れそうな痩せ細った体に、丈の短いブリーチズから剥き出しになっているすね毛が印象的だ。


「失礼しますよ」


ヤコブは何も気に留めずにペドロの隣の席へドカッと腰を掛けた。


何とも非常識だ。


あまりの態度にペドロのこめかみに僅かながら青筋が見て取れる。


「はっはっは。 愉快なやつだ」


「不愉快だ」


シーザーが笑うと間髪入れずにペドロはそれを否定する。


「ところで皆さんも呼ばれたんで?」


「あぁ、ウェイターに声をかけられてな」


「…」


シーザーの答えに自分も同じだと言うように一つ相槌を入れてからゴソゴソと懐を探ったこと思うと、これまた非常識にもキセル(パイプタバコ)を取り出して

火をつけてしまった。


「…」

「…」


もくもくと立ち上る煙を見てシーザーとペドロは言葉も出ないようだ。


この2人を黙らせる強者はこの国に後3人ともいないだろう。


「この手紙はなんですか?」


キセルを片手にテーブルの中央に位置する手紙を指差しヤコブが二人に問うた。


「しらないね。 俺が来たときはもうあったよ。 そうだろ、ペドロさん」


無言で頷くペドロは煙に眉をひそめている。 きっと彼女はタバコではなく隣の男が嫌いなのにちがいない。


ヤコブは手を伸ばしテーブルの中央から手紙を手繰り寄せた。


一見何の変哲もない一通の手紙だ。


「開けてもよろしいですかい?」


おそらくは一応の確認を取ったのであろうヤコブに対してペドロが初めて口を開いた。


「やめておけ。 貴様には見えんのかその印が」


手紙の中央には封をするための焼印が押されており、その焼印は齧ったリンゴが描かれていた。


人類の祖、アダムとイヴでさえ恐れた神の善悪の知識の実だ。


そう、国王の印である。


イスカー王国はあらゆる国に恐れられあらゆる国に勝っていると示している国印。


自分が持っているものの重大さに気づき、ヤコブは慌てることなく元の場所へ手紙を戻した。


意外である。あれほど非常識を持ち合わせる人間がこれ程の冷静さを持ち合わせているのだ。


万が一国印のはいった手紙がどうかなろうものならこの男の首はシーザーとペドロによって地に落ちていただろうが。


ヤコブも大人しくなりしばらくしてさらに二人の人物がこの部屋へと入ってきた。

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