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第12話─プティドラゴン

ペドロが目を開けるとそこはまだあの白い部屋だった。


「目覚めましたか」


覗き込むようにして、ヤコブが言う。


「もう、物騒なことは考えないでくださいね」


ヤコブは、ペドロのナイフをヒラヒラと見せつけるように揺らしながら笑顔でそう言った。


「くそっ」


やはり、相当知られたくないことを知ってしまったようだ。


「何分だ」


暗殺に失敗して苦々しい顔をしながらペドロが言った。


その割にはやけにさっぱりしている。


また私は狙われるのだろうか…


ヤコブは気をつけようと心に決めたのだった。


「寝ていたのは10分程ですかね」


ペドロの言葉足らずの問いにヤコブはそう答えた。


「頃合だな。 紙を返せ」


言われるがままにおとなしく返す。


もちろん書くものは書いている。


ペドロは紙を見つめながらつぶやいた。


「まあいい。 しかし、こんな文が届いても意味ないぞ」


立ち上がって部屋をでていくようなので後ろから見守っていると罵声が飛んでくる。


「開けんか」


もちろん振り返ってだ。今のヤコブに音を聞く能力はない。


やれやれ、手のかかる女性ひとだ。


しかしいくら力があるといってもあの重量の扉を進んで開けたいとは思わないのが人間だ。


ヤコブはペドロの前に立ち扉を開けた。


真っ白な部屋を出るといかに何もない部屋が窮屈だか分かる。


ヤコブは生き返った心地がした。


もっとも今は朱色も多少混じっているのだが。


ペドロは通路を歩いていき、やがて一つの窓の目の前で立ち止まった。


「ここで良いのですか?」


ヤコブがそう問うとペドロは、


「窓ならばどこでも良い」


と言った。


待ったのは一分にも満たないわずかな時間だった。


「王宮に近いと流石に早いな」


ヤコブは何をいっているか分からなかったのでスルーした。


先ほどの部屋とは違い、ここでは窓の外の音がよく聞こえる。


「聞こえるだろう?」


確かに耳をすませば、小さな羽音が聞こえた。


ペドロはヒールを脱いだかと思うと、勢いよく窓へと振り下ろした。


躊躇が微塵もない。怖い。


先程までこんなに怖いひとと戦って笑っていた自分が怖い。


かなり厚みのある窓だそう簡単に割れるはずがないと思いたい…


窓の右下のガラスが簡単に割れた。


恐ろしや…


窓が割れるなら脱出できるかもしれないとも思ったが、窓の大きさは人が通れるほど大きくないし、何よりこの建物はイスカー正教会が一枚噛んでいるとヤコブは考察していたから、破壊の選択肢は最後の手段だと考えていた…のに


窓に空いた小さな穴から人の手よりも小さい何かが入ってきた。


その何かは、ペドロの手のひらの上に乗って、小さな炎を吐いてあくびをしながら、黒い翼をパタパタさせていた。



ヤコブは見てはいけないものを見た気がして全身から汗が噴き出る。


「これを知ったなんて、ますます生かしておけないわね」


「これは、いったい─」


ヤコブの言葉を最後まで待たずに、ペドロが答えた。


「龍単語(ドラゴン)よ」









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