ポイット
翌朝。
環と愛莉は、服屋の奥にあるテーブルで、天使にファッションショーの提案をしていた。
「こちらの店先にランウェイを作るんです。そこを、このお店の服を着て歩いてもらうのは普通のファッションショーのイメージで。あ、コーディネートは私が考えます」
金髪巻き毛のぽっちゃりした男の天使は、環の話を腕組みしながら聞いている。
「でも、あの世はハンガーのボタンひとつで着替えができるじゃないですか。それを使って、ランウェイで着替えができないかなって。ランウェイの両側から客席の方にテントを作って、空がなるべく見えないようにするんです。それで、ランウェイの先端までいったら上から天使に服を落としてもらって、ダンスっぽい感じでキャッチして着替えるんです」
環が椅子から立ち上がる。
「上に手を伸ばしてキャッチして、くるっと回りながらボタンを押して、着替える」
実演を交えて説明する。
「ただコーディネートを見せるんじゃなくて、天使にモデルをしてもらえば、翼がひるがえる感じも綺麗だと思うんです。服もたくさん見てもらえるし、この世じゃ見られないショーだから面白いと思うんですよ」
環が椅子に戻る。
「日程的には、五日後にやりたいです。愛莉がこの町にいられるのがあと六日くらいなので、その間に合わせたくて。どうでしょう……?」
「かなりいい!やろう!ファッションショー!!」
服屋の天使が腕組みをといて、目を輝かせる。
「あ、ありがとうございます!」
環は頭を下げた。
「いやほんと実はさ、うちは第三の町で一番客が来ない店でね。怒られるわけじゃないし、問題はないんだけど、ずっと寂しかったんだよぉ。何かやんなくちゃって思ってたんだけど、アイデアがなくてさ」
金色の巻き毛を引っ張りながらしゃべる。人のよさそうな顔に、照れ笑いを浮かべていた。
「改めて、僕の名前はポイット。環さん、愛莉さん、よろしくね!」
笑顔で握手を交わす。
「こちらこそ、よろしくお願いします!」
環はワクワクする気持ちを抑えきれなかった。
「宣伝のためにチラシを配りたいんですけど、作れるところありますか?」
愛莉が冷静に尋ねる。
「あるよ。一日かかっちゃうけど、デザイン作ってくれたらすぐお願いできる」
「もう考えてあります」
「仕事早い~!じゃ、さっそく持ってくね!あ、手伝ってくれそうな天使にも声かけてくるから!」
ポイットが店先に出て、白い翼をはばたかせる。
「あの、お店は?」
慌てて環が声をかける。
「テキトーにやっておいて~!」
ポイットが空から手を振った。
「ひとまずよかったね、環」
愛莉が猫のような目を細める。
「うん。ホッとしたあ」
二人は顔を見合わせて笑う。
「よし!さっそくコーデ考える!」
「私もチラシができるまでやることないから、一緒に選ぶよ」
「ありがとう」




