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環はあの世を駆けめぐる  作者: 春日野霞
第ニ章 ソピア<知恵>
17/63

閑話

「あの、今更ですがお名前は?私は夜見環」

青田あおたりょう

「青田さんは、大学生とかですか?」

「うん。大学生。青田でいいよ。敬語も必要ないし」


 神経質そうな顔はしているものの、フランクなタイプらしい。


「塾でバイトしてたでしょ」

「よくわかるね」

「説明が親切だったから。あと、賢い大学出てそうなことも分かりますよ」

「そうだね。別に大学の序列とかくだらないと思ってるけど。問題は何を解き明かそうとしているかだから」

「そうかな。大学が良いと周りからも尊敬されるし、良いところに就職できるでしょ」

「そうかもね。それを知らずに死んだから、なんとも言えないけど」


「青田はどうやって死んだの?」

「事故」

「考えごとしてぼーっとしてたとかでしょ」

「そう。トラックにはねられた。ものすごい衝撃だったよ」

「痛みとかって、覚えてるものなんだ」

「覚えてるよ。夜見さんは?」

「覚えてない。っていうか、死ぬ前の記憶が全然なくて」

「ショックで忘れているのかな」

「気づいたら、橋の下にいたの。飛び降りたのかなあ」

「突き落とされたのかもよ」

「まあどっちかですよね」

「それは分からない。別の場所で死んで、飛び降りのように見せかけている可能性だってある」


「殺人事件?」


 青田がうなずく。


「正確には未遂だけど」

「誰かに殺されそうになった上に魔物に体を取られたってこと?最悪」

「史上稀に見る災難だね」

「ほんと。魔物に体を乗っ取られるって、百八年ぶりのことらしいよ」

「てことは、昔も魔物がいたんだ」


 眼鏡の奥の黒い目が、輝いている。興味があるようだった。


「魔物、どこにいたの?」

「意外と気になるんだ」

「意外かな」

「非科学的だ!とか言いそう」


「そういうことを『非科学的』って切って捨てる方がよっぽど非科学的なんだよ。どんな現象でも「見た」という人がいるのなら何かしらの原因がある。もしかしたら見間違いかもしれないけど、たとえば、それをどうして幽霊に見間違えたのか、ってとこが面白いわけで」

 青田が、早口で一気に言った。オタクなのかもしれない。


「近くの廃神社にいたらしいよ。人間に放置された神は、たまに魔物になるんだって」

「じゃあ、元は神だったものが降格したものが魔物ってこと?」

「さあ……。私にはさっぱり分からない」

「いや、こうも考えられるんじゃない。神にとって人間の信仰とはエネルギーで、それを失うと弱体化して魔物に……」


 青田は延々と持論を語る。環には彼が何を言っているのかさっぱり分からなかったが、ときおりボートを漕ぐ手が止まったり、自分にツッコミを挟みながらしゃべったりする様子が面白く、見ていて飽きない。


 青田の語りをBGMに進む。太陽が水平線にさしかかろうとするころ、二人はビルに到着した。

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