逃亡
「...それはありがたいのですが、先生。先生は気づいていますか?」
「何に?」
「いえ、なんでもありません。」
そう隠した大神に感じた違和感を俺は見過ごすことができなかった。
次の日も俺は大神くんの病室に訪れた。
しかし彼の部屋のベットに誰もいなかった。
「あれ、おかしいな。」
一旦仕事部屋に戻り、防犯カメラで大神がどこに行ったのかを確認することにしよう、そう思い部屋を出ようとすると、机に置いてある白い紙が目に映った。
何か手掛かりがあるのかと近づいてみると、それは手紙だった。
大神くんを見つけ出したい一心で、伊吹は素早く封筒を開けた。
伊吹先生へ
いきなりいなくなってごめんなさい。でも僕にはまだやりたいことがあります。それはいじめてきた人たちへの復讐です。どうやったら、一番後悔させられるかずっと考えてきました。先生に相談していたのも、その手口を助けるものを探すためでした。僕が結論づけたのは、自殺することです。
この手紙の下にある手紙は、僕がずっとされてきたことが書かれています。これを先生には僕の遺言として裁判所に届けて欲しいんです。
これでいじめっ子たちの進路を塞ぎます。僕が通っているのは地元の中学なので、あっという間に噂が広まると思います。高校も大学も推薦がもらえなくなりますし、きっと同窓会でも苦しい中過ごすことになります。就職だって結婚だって、きっと人生においても。間接的に人を殺した人とは関わりたくないはずです。人を間接的に殺した責任で大きな傷を負わせれたら良いと思っています。
僕は全てが疲れました。生きることまでも。なので、せめてもう迷惑はかけないよう、暴走しないよう、自分からいなくなろうと思います。
ここまで面倒を見てくださりありがとうございました。ここまで来られたのは、先生のおかげです。来世でまた会いましょう。