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三話、スキル? なにそれ美味しいの?



「マホロさん、そろそろ移動しないと……」


 私がグルグル悩みまくっていると、アキハナが不安げに辺りを見回しながらソワソワし始めた。


「そうよね」

「はい」


 こんな所でのんびりしてる場合じゃなかった。まずはアキハナの安全確保と、元の世界に帰る方法を探さないといけない。アキハナの安全は多分どうにかなりそうだけど、帰る方法が、すぐに見つかるとは思えない。ぐるぐる考えだすと憂鬱な気分になってしまう。が、落ち込むのは性に合わない。ならばいっそ考え方を変えてみよう。BL世界ならイケメンが見放題のはずだ。それってかなり人生が楽しそうなんじゃない? と言う訳で、頬をパンっと両手で叩いて気合いを入れる。


「追手が来ないとは限らないよね」

「はい。あっ、その前にコレをどうぞ」


 着物の懐からアキハナが差し出してきたのは足袋だ。


「ありがと」

「本当は草履が良かったのですが、持ち合わせが足袋しか無くて……」

「十分よ!」


 今まで裸足だったから、足の裏がけっこう痛かった。なのでありがたく受け取って履く。足裏部分に木が入って分厚く作られているおかげで、石の上を歩いても意外と痛くない。アキハナも、足袋を履いて足踏みする。


 そしてもう一つ重要な事がある。恥ずかしいけど、このままよりずっといい。


「あとパンツ持ってない?」

「パンツとはなんでしょうか?」


 不思議そうにアキハナは首をコテンと傾ける。通じてないようだ。アキハナの結鬼村は和風だったからかな? ならパンツよりも、フンドシの方が馴染みがあるのかな? 


 と言う訳で、いざ! もう一度!


「フンドシでも良いんだけど持って無いかな?」

「フンドシ?」


 フンドシも知らないようで、アキハナは今度は反対方向に首をコテンと傾ける。


「そっか……。そうだった……」


 このBL世界ナリディーアは、何故だか皆んなノーパンだった。ゲームの時に気がついてはいた。たぶんイチャイチャするのに邪魔だったのかもしれないが、登場人物たちは身につけていなかった。


 つまりパンツやフンドシは存在しない。無いと分かっても、慣れてないからかスースーした感じが、心もとなくて何とも落ち着かない。


 やっぱりどうしても欲しい。


 次の村か街で、布と糸と針を買って作るしかなさそうだ。


 そうと決まれば行動あるのみ。


「よし! まずは街を目指してみるしかないよね」

「そうですね。街に着いたら旅支度もしましょう」

 

 歩き始めたアキハナの後ろについていきながら、ふと思ってしまった。


 ここは間違いなくゲームの中の世界だと確信した。ならステータスとかがあって、何か凄い魔法とか使えるんじゃない? と思い、ゲーム画面を思い浮かべ。


「フンス!」


 拳を握り気合いを入れて、小さくつぶやいた。


「ステータス画面オープン」


 すると目の前に、パソコン画面のような青く半透明のディスプレイが現れて文字が表示された。


「よし!」


 と、満面の笑みを浮かべガッツポーズまでして喜んだのも束の間……。


 画面には、たった一行の文章。


 【モブ】 マホロ。八歳。女。スキル=空気に溶け込む。


 ……としか書かれてなかった。


「なによ! コレ酷すぎない? 意味が分からないわ!!」


 思わず画面を、手のひらで力一杯バンッと叩く。


【モブの為ステータスは閲覧不可】


 更に心にダメージを受ける事になってしまった。


「……」


 私は見た目通り地味なモブ女って事? しかもステータスすら見る事が出来ない雑魚って言いたいの!?


「マ……マホロさん! もう少しゆっくりお願いします!」


 後ろからハァハァ息を切らせながらアキハナが、私の着物の袖を掴む。イライラムカムカしてしまったせいで、アキハナを追い越し、歩くと言うより走りはじめていたようだ。


「ゴメン。考え事してた。えと、方向は合ってる?」


 立ち止まって振り返り、アキハナの息が整うのを待つ。


「……はい。このまま南に向かうとユラの街があります」

「朝には着けるかな?」

「それほど遠くないので大丈夫だと思います」

「なら、ゆっくり行きましょ」

「はい」


 今度はアキハナの歩調に合わせて歩きだす。しばらくすると、少しずつ空が白みはじめてきた。朝が近づいてきている。


「それにしても空気に溶けこむって何?」


 歩きながら再び考え始めたのは、謎のモブスキルの事だ。


「よし! 試しに使ってみるしかないよね!」


 画面を呼び出し【空気に溶けこむ】を、少しヤケクソ気味にタップする。


「……何も変化してない気がするんだけど?」


 などと思っていると。


「マホロさん? どこですか?」


 アキハナが立ち止まって、キョロキョロ辺りを見回している。


「え!? もしかして私のことが見えてないの?」

「マホロさん、どこにいるんですか?」


 声は相手に聞こえてるみたいだ。けど足元を見ると、私の影さえ無い。なるほど、姿とか気配みたいなモノは消せるけど、声は消せないって感じみたいだ。


「使いようによっては面白いかもね!」


 一旦草むらに入って再び画面を呼び出しスキル解除すると、草むらから出てアキハナの肩を後ろからポンと軽く叩く。ビクッとアキハナの体が跳ねて、私を振り返る。


「突然いなくなったからビックリしました! マホロさん、どこに行ってたんですか?」

「女の子に野暮な事は聞いちゃダメよ」

「あ! あ! すみません!!」


 アキハナは顔を真っ赤にしてうつむく。トイレだと思ってくれたようだ。今はまだスキルの事は内緒にしておきたい。ナリディーアに魔法があるのは知ってるけど、使える人間はごく僅かだからだ。


「気にしてないよ。それよりアキハナはいいの?」

「はい。先ほどの川でしておきましたから」

「え!? 川でしたの!? 私、顔を洗って水まで飲んじゃったんだけど!?」

「いえ! あのマホロさんがいた場所よりも下流だったので大丈夫だと思います」

「そ……そうなの……ね……」


 でもここより上流には昨夜、旅立ってきた結鬼村があったわけで、間違いなく生活に使っているような気がする。


 もう川の水は絶対に飲まない!


 握り拳を作って心の中で叫んだ。

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