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猫、逃亡を試みる 2

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「にゃにゃにゃにゃにゃん」

(うーん、どうすれば逃げられるのかしら?)


 リオンが仕事に行って、部屋に一人、いや一匹きりになったフィリエルは、ベッドの上に座ってにゃーんと考えていた。

 窓には鍵。扉の外には兵士がいる。

 一度扉をカリカリしたら兵士が扉を開けてくれたが、逃げ出そうとするとすぐに捕らえられて部屋の中に戻された。


「陛下が戻って来るまでいい子にしておいで」


 なんて言われて、フィリエルはがっくりとうなだれたものだ。

 すっかり「陛下の猫」と認知されたフィリエルへの扱いは、兵士も使用人もすごく優しい。しかし彼らは、気まぐれな猫がリオンの側から逃げないようにと常に目を光らせていて、結果、部屋の外に出ることはかなわなかった。


 おかげで、猫生活は四日目に突入したが、フィリエルの行動範囲はリオンの部屋と部屋続きのバスルームに限定されていた。

 ちなみに猫生活が四日目ということはフィリエルが行方不明になって四日目ということだが、城の人間はびっくりするほど平然としている。まるでいなくなっても構わないと思われているようで地味に落ち込んだ。自分の選択とはいえ、せめてもう少し心配してくれてもいいのにと、我儘なことを思ってしまう。

 逃げられないし、人間だったフィリエルのことは誰も心配していないしで、イライラしてきた。


「みぃゃ!」


 ぴょんっ、と跳躍すると、ベッドの天蓋に爪を立ててぶら下がる。


「みゃーみゃーみゃー!」


 爪を立てたままぶらぶらしていると、だんだんテンションが上がって来た。

 そうだ。猫をずっと閉じ込めているとどういうことになるか思い知らせてやろう。

 にやりと笑ったフィリエルは、そのまま部屋の中で大暴れすることにした。

 猫になったからだろうか。暴れはじめるとテンションがどんどん上がっていって止まらなくなる。


「にゃあんっ」

(なんかよくわからないけど楽しー‼)


 部屋中を駆け回り、カーテンをよじ登ってシャンデリアに飛び移る。

 ぶらぶらとシャンデリアを揺らして遊んだ後は飛び降りて、壁紙で思いっきり爪を研いだ。

 絨毯の上をゴロゴロした後で、ソファやクッションにも爪を立てる。

 再び天蓋にぶら下がってぶらぶらしていると、ビリッと布が破ける音がした。

 一瞬「ヤバい」と思うも、今は猫なんだから仕方ないよねと笑って気づかなかったふりをする。


「にゃんにゃんにゃーん!」


 上機嫌で暴れまわっていると、がちゃりと部屋の扉が開いた。


「みゃ?」


 リオンが戻って来たのかと思って振り返ると、フィリエルのお昼ご飯を運んで来たメイドが部屋の中を見て、からん、と手に持っていたミルク皿を取り落とす。


「きゃあああああ! お猫様ご乱しーん‼」


 どうでもいいが、フィリエルはメイドたちにお猫様と呼ばれていたらしい。






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