↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~  作者: 狭山ひびき
猫王妃と離婚危機

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
61/85

フィリエルの答え 1

お気に入り登録、評価などありがとうございます!

「んー」


 ごろん、と寝返りを打とうとして、フィリエルは違和感を覚えた。

 なんかちょっと、妙というか、懐かしいというか、それでいて今まで感じたことがない感触がするというか、とにかく――変。

 ぱちり、と目を開けてフィリエルはまず、目に飛び込んできたたくましい胸に安心した。

 リオンの胸は温かくて好きだ。

 すり、と顔を寄せて、フィリエルの違和感はまたそこで大きくなった。


(うん?)


 なんか、違う。

 ぺったりと、肌に吸い付く感じがする。


(んんん?)


 ぺとっと頬を寄せたまま考えること数秒。


「……フィリエル、その、あんまりまさぐらないでほしいんだが」


 頭の上から、困惑したような声が降って来た。

 顔を上げると、綺麗なエメラルド色の瞳がある。


「陛下、おはようございま――す?」


 うん? とまたフィリエルは首を傾げた。

 今、「にゃあ」ではない声が出た気がする。

 ぱちぱちと目をしばたたきながらじーっとリオンの瞳を見つめると、瞳の中に見覚えのある女の顔が映っていた。


(んー?)


 フィリエルはそーっと自分の体を見下ろして、それからひっと悲鳴を上げる。


「みやあ!」

「フィリエル、ええっと、今は猫ではないみたいだが」


 つい猫のような悲鳴を上げると、リオンが、戸惑いつつも冷静なツッコミをくれた。

 ばっとまた顔を上げると、リオンの頬が少し赤い。


(えっと、えっと、えっと……って、きゃあああああ‼)


 フィリエルは今度こそ飛び起きた。

 よくわからないがフィリエルは人の姿に戻っていて、そしてリオンにがっちりと腕を回し、すりすりと彼の胸に頬ずりを続けていたようだ。

 顔が、火が出そうなほどに熱くなる。

 ベッドから転がるように飛び降りて、そのままバスルームまで走った。

 べたっとバスルームの鏡に両手をつけば、その中には銀色の髪に紫色の瞳をした女の顔が映っている。


「にゃああああああ!」


 またしても、フィリエルは猫のような悲鳴を上げた。それなりに猫生活が長かったからだろうか。


(戻ってる! 戻ってる⁉ なんで⁉)


 いや、もちろん嬉しいのだが、目が覚めたら元に戻っていたという衝撃の方が大きすぎてパニックになりそうだった。


(え? いつ戻ったの? え? いつから陛下にしがみついて寝てたの? っていうか陛下はいつから起きていたの⁉)


 しがみつくどころかがっちり腕を回して頬ずりとかした。


(いやああああ! 死ねる! 恥ずかしくて死ねる!)


 両手で顔を覆ってへなへなと膝をつけば、フィリエルを追いかけてきたリオンがギョッとした。


「フィリエル⁉ どうした? 気分が悪いのか?」


 駆け寄って肩を抱かれて、フィリエルはさらに真っ赤になる。


(陛下、お願いだから上にガウンとか羽織って‼)


 癖なのか、リオンはよく上半身裸で眠りにつくのだ。

 猫のフィリエルは慣れていたが、人に戻った今、たくましい胸筋とか腹筋とか上腕二頭筋とかが直視できない。

 両手で顔を覆ったまま必死に羞恥と戦っていると、何を思ったのか、リオンがひょいっとフィリエルを抱き上げた。


「にゃ⁉」

「フィリエル、だから今は人間だよ」


 わかっている。わかっているのだが、頭の中はまだ猫の気分で、混乱しているからか、つい口から猫のような声が出る。


(というか冷静! 冷静すぎるでしょ陛下‼)


 フィリエルを横抱きにしたまますたすたと寝室に戻ったリオンが、フィリエルをそっとベッドの上に下ろした。

 熱を確かめるように額に手を当て、首をひねる。


「熱はないみたいだが、あとで侍医を呼ぼう」

「だ、だだだ、大丈夫です!」

「だが、気分が悪いんじゃ……」

「悪くないですっ」


 ただ恥ずかしいだけだ。

 フィリエルはシーツを手繰り寄せ、顔の半分までを隠すと、恐る恐るリオンを見上げた。


「あ、あの、陛下……。わたし、いつ戻ったんですか?」

「どうだろうな。ただ、俺が目を覚ました時にはその姿だったから二時間前には戻っていたようだが」

(二時間⁉)


 というか二時間も前にリオンは目を覚ましたのだろうか。フィリエルにしがみつかれて苦しかったとか?


(ってことは二時間もわたし、起きていた陛下にしがみついて頬ずりしてぐーすか寝てたわけ? どうしよう、寝言とか言ってないかな。よだれとかたらさなかったかな⁉)


 リオンもリオンだ。起こしてくれればいいのに、何故二時間も放置したのだろう。


「ど、どうして起こしてくれなかったんですか……?」

「気持ちよさそうに寝ていたからな。それに、寝顔を見ていたい気分だった」

「ね⁉」

(寝顔⁉)


 リオンがベッドの縁に腰かけて、フィリエルの頭に手を伸ばす。

 猫だったフィリエルに触れる時よりも遠慮がちで慎重に、ゆっくりと頭が撫でられた。

 当たり前だが、猫のときに撫でられるのと、感触が違う。


「それから、またすぐに猫に戻ってしまうのだろうかと考えたら、わずかの間でも目を離したくなかったんだ」


 リオンは、ふわりと笑った。


「挨拶をまだ返していなかったな。おはよう、フィリエル」


 フィリエルを見つめるリオンの瞳には、何の嫌悪感もない。

 フィリエルはホッとして、けれどもドキドキしながら、ゆっくりと上体を起こした。


「おはようございます、陛下」






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] フィリエルは服を着ていたのでしょうか? 確か、入浴中に猫になったはず…
[良い点] やっと戻れましたね! リオン,猫じゃないフィリエル大事にしてあげてー
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。