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【書籍化】夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~  作者: 狭山ひびき
猫王妃と離婚危機

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猫と人間 2

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 現在侍女がいないので、「猫フィリエル」の専属メイドのポリーを捕まえて、フィリエルは大急ぎでドレスを着替えた。


 ポリーは「え? なんで?」と目を白黒させていたが説明する時間もなければ何故戻ったのかもフィリエルはよくわかっていないので、「なんかいろいろあって!」と適当に誤魔化した。

 ポリーが王妃の支度は自分だけでは手に余ると、女官長にも声をかけてくれたので、彼女に簡単に髪をまとめてもらい化粧を施してもらう。

 こんな簡単な支度でパーティーに行くのもどうかと思うので、諦めたら……と言われたけれど、もちろん諦めるつもりはない。


「早くしないと陛下が妹に寝取られる……かもしれない」

「本当ですか?」


 ポリーが「まさかそんな」という顔をしたが、ポリーより政治的背景に詳しい女官長は苦笑いだ。


「かしこまりました。では、病気のところ、無理をして顔を出したという様子で出席してください。具合が悪そうな演技をして、できるだけ早く退出してくださいね」

「ええ、ありがとう!」


 フィリエルとしても、リオンからイザリアを遠ざけることが目的なので、それで問題ない。うまく邪魔できればいいのだ。

 本来一時間以上かける支度を二十分で終わらせて、フィリエルは急いで大広間へ向かった。

 人とすれ違うたびに「え⁉」という顔をされたが、説明できないので笑って誤魔化す。

 そして大広間に飛び込めば、ダンスを終えたリオンがイザリアにまとわりつかれている姿が目に入った。玉座に戻ろうにもイザリアが邪魔をしてなかなか戻れないようだ。


(イザリアー!)


 ドレスの裾を持ち上げて、ずんずんと、けれども優雅に見えるようにリオンとイザリアの元へ近づいて行くと、周囲にざわりとどよめきが走る。

 リオンも気づいて、それから大きく息を呑んだ。


「……フィリエル?」

「え? お姉様⁉」


 イザリアがギョッとして、慌てたようにリオンの腕から手を離した。

 気まずそうに視線を彷徨わせるイザリアに向かって、にっこりと微笑む。


(あんた後で覚えてなさいよ)


 イザリアはむーっと頬を膨らませたが、ここで騒ぐほど妹は馬鹿じゃない。

 仕方なさそうに、優雅に一礼してリオンの横をフィリエルに譲ってくれた。


「フィリエル、ええっと、どうして……」

「よくわかりません。急いで支度をしたので、女官長からはすぐに退席するようにと言われていますので、あまり長居はできませんけど」

「いや、それでも……その、助かったよ」


 イザリアにはリオンも手を焼いていたようだ。

 遠慮がちに手を差し出されたので、ぱあっと笑って手を重ねる。

 公務で何度か踊ったことはあるが、そのときとは格段に気分が違った。

 楽師が気を利かせて、演奏していた曲を一度終わらせると、新しい曲を奏ではじめてくれる。


 目が合えば、綺麗なエメラルド色の瞳が優しく細められた。

 幸せに酔いしれながら一曲踊り終えると、リオンが腰に腕を回して、フィリエルを支えるようにしてステファヌのところに連れて行ってくれた。

 なんとなく、リオンが今何を考えているかがわかる。


(わたしの体調を理由に、中座する気満々ね)


 フィリエルがいなくなれば、ここぞとばかりにイザリアがまとわりつくだろう。それを避けるには逃げるしかない。


「フィリエル、体調はいいのか?」


 ステファヌとルシールが驚いた顔をしていた。


「ええ。今日は少し、気分がいいですから」

「そうか。だが、無理はしない方が……」

「わかっています。ちょっとご挨拶に顔を出しただけなので、もう下がりますわ」


 でも、お兄様の思惑通りには進めないわよと心の中でにやりと笑って、フィリエルはリオンを見上げた。


「陛下、お部屋まで送ってくださいませんか?」


 これで、王妃の我儘を国王が聞き届けた、という形が取れる。

 ステファヌが苦々しい表情になった。


「フィリエル……」

「お兄様、積もる話は改めて」


 小言を言われる前に退散しようと、フィリエルはわざとふらついて見せて、リオンに寄り掛かった。


「義兄上、妻を部屋まで連れて行きますので」


 リオンがにこりとステファヌに微笑みかけて、フィリエルに心配そうな視線を向けると、支えるようにして歩き出す。


 イザリアが不貞腐れた顔をしていたが、フィリエルは気づかないふりをしておいた。






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