いい加減にしてくださいよ
はじまりの洞窟から身動きがとれずに何もはじめられないでいた俺は、一人寂しくしりとりで遊んでいた。
が、何の面白みも感じられずにすぐに飽きた。
しりとりは一人で遊ぶものではなかったな。
次に、有り余る時間を有効活用するための遊びはないかと考えて思いついたのが、尊敬するSM〇Pさまの曲をアレンジして遊ぶというものだった。
アレンジと言ったらかっこよく聞こえるが、単なる替え歌である。
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Hey Hey Hey オレ
ヒマだから とりあえず歌っていましょう
Hey Hey Hey eye
天井は赤い 僕だけここで生きている
Hey Hey Hey オレ
いつの日にか 自由を勝ちとりましょう
Hey Hey Hey eye
禍々しい 世界でがんばりましょう
⋆*¨*•.¸¸♬⋆*¨*•.¸¸♪⋆*¨*•.¸¸♬⋆*¨*•.¸¸♪
他にやる事もなく、ヒマでヒマでどうしようもないのだよ
ひ、ま、な、の、だ、よ!
それはもうね、死にそうなくらいに。
すでに死んでるっぽいけどな。ははっ!
早く冒険の旅をはじめたくても仕方がないんだ。
だって! 俺は! 動けないんだもん!
(……はぁぁ)
深いため息が出てしまう(注:客観的イメージ)。
替え歌にもそろそろ飽きはじめてきたぞ。
一人遊びのネタも尽きてきたし、いよいよやる事がなくなってしまう。
遊びネタを考えていて思ったが、ネタを考えまくるお笑い芸人さんってスゴイよな。
おもしろネタをポンポコポンと考えて生み出しちゃうわけだからさ。
めちゃくちゃ尊敬しちゃうわ。俺には真似できん。
………………
…………
……
あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーー!!!
ヒマだ! 地獄だ!! 最悪だぁぁぁ!!!
替え歌のネタもすでに尽き果てちゃった感じなのだよ。
いい加減、俺の物語をそろそろ進めてもらってもいいですかね。
(おーい! 神様、聞いてますかー?)
白衣の天使だったこの俺が、神様に何をしたと言うんだ。
やらかした事といえば、高校時代にう〇こ漏らした黒歴史と、たっぷりと白いのがついているエッチな本を家族に遺して来ちゃったことぐらいじゃないか。
だいたい後者のは俺のせいではなくて、死神のせいではないのか。
あの日、死神が俺を死なせなければ、あんなモノを遺さずに済んだだろうが。
冤罪はやめていただきたい。迷惑だ。
満員電車で両手で吊り革を掴んでいるのに鞄が尻に触れてしまい、若くて可愛い女の子ならばいざ知らず、中年おばさまにチカンだと騒がれてバンザイしながら乗客から白い目で見られた時ぐらいには不愉快である。
仮に俺がチカン常習者だったとしても、誰が垂れ下がったブヨブヨな尻に興味があるか。
熟女専門家ならば理解できるが、ノーマルな俺は触る尻ぐらい吟味するわ。
痴漢、ダメ、絶対!
しかも今のは失礼だったな。
このままでは洞窟ぼっち生活で悟りを開く前に俺の精神が大崩壊して人格破綻者になりそうだ。
もうすでに何か支離滅裂なことを心にしはじめているからな……。
──ハッ!
そうだよ、く、ち!
口があるじゃないか!
さすがに口は使えるんじゃないの?!
身体が動かない事に動転しすぎていて、発声してみるという発想にはまったく至らなかった。
それにこちとら独り言をブツクサつぶやく習慣はもともと持ち合わせてはいないから大目に見ろよ。てへ。
そうと決まればさっそく発声してみようじゃないか。
カウンドダウン、3・2・1、せーの、
「────?!!!」
発声しようとして、口が開かなかった男がいるんですよ。
なぁ~に~? やっちまったなー!
餅つき男二名が召喚されてしまったではないか。
衝撃の事実に言葉を失う。
文字通りに出る言葉も出せないのだが……。
なんとなくね、うーっすらとは、そうなんじゃないかなーとは思っていたさ。だけどさ。
なんてこったパンナコッタ。
………………
…………
……
(──俺の美声をどうしてくれるんだぁぁぁぁぁ!)
唯一誇れる俺の大切な声だったんだぞ!
杉〇智和さま似のクールでイカした声なんだぞ!
俺の声を返せぇぇぇぇぇ! ゴルァァァァァ!!
声を活かしてこれから恋活を真剣に目論んでいたという矢先に逝かせやがったうえ、さらに俺の最高の武器を奪いやがったというのか。
いい加減にしてくださいよ、神様この野郎……。
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