閑話・焦燥感
アニエス様が眠られてから3日が過ぎた。
起きてこない、不安が心を締め付ける。
神の使徒として、アニエス様の世話を
此方の世界に憑依されてから、見守ってきた。
過去の記憶を知り、心を支える存在として
彼女と上手く、やっていたとは思う。
『おはようございます』
まだ、目を開けない、彼女に挨拶をする。
いつ、眼を開けるのか、起きてくれるのか
焦燥感に駆られていく。
「居るか?」
『主人、居ります』
水晶玉から、主人である、神様から連絡が。
「まだ、眼を覚さないのか?」
『はい、力を激しく、消耗したようです。
まだ、目覚めの起伏が有りません』
「そうか、また見にくる」
事務的な言葉を交わして、通信が途絶える。
いつものように、カーテンを開けて
日光を浴びせていく。
『速く、眼を開けてください』
そう、小さな声で呟いて、部屋をでる。
自分でも、こんなに心配するとは
思ってもいなかった。
これが人が持つ、情というものだろうか。
「アンジェリク、妹は」
『いえ、まだ目覚めてません』
アニエス様が眠られてから
毎日、新しい、ご家族が聴きに来る。
「そうか」
とても哀しそうに、義兄は言う。
私は自分の部屋に戻っていく
義兄の姿を眺めては、メイドとしての
仕事に戻って行った。