企みに逃れられず
国王と向かい合って、話したりするのは
今回が初めてのことだ。
いつもは、水晶玉でしか、やり取りをしない。
水晶玉で見るときより、ヤツれてるような。
多分、仕事が忙しいのだろう。
「アニエス嬢、君さえ良ければだが
君を私の養女としたい、どうかな?」
『もう1度、言ってくれませんか?』
食事のドリンクを飲んでいて
変な事を聞いてくるので、咽せてしまった。
私を養女にと、なにを考えてるんだ?
「君を養女にしたい」
『本気で言ってますか?』
「アニエス嬢、君は未成年であり
コレから先、後ろ盾がないと困るだろう?
未熟者の君は身を守る術を知らない。
君の存在を知ったものから、世に知られて
君の保護者のように、狙われることもある。
それは、君の望むことではないだろ?」
『脅しですか』
「いいや、脅しではない。
君を心配しているんだ」
瞳を透かして、国王を観ていく。
確かに、心配だけをしているようで。
けれど、私は1人で気長に暮らしたい。
それは、譲れないものだ。
悩んでいれば、国王が口を開いた。
「ならば、離れで暮らすのはどうだ?
君が赦した者でしか、入らせないよう
此方も手を尽くすとして」
『それなら養女としての件を了承します』
「交渉成立だな」
逃がさないぞというような
笑みを浮かべられて、私は悪寒がした。
1人で気長に暮らすのは、難しそうだ。