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愛人は息子の推し  作者: 御通由人
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ヒロト4

 公民館の3階にはいくつか大きな部屋があり、その一室がライブ会場のようであった。

 分からないはずだと思った。

 部屋の入り口にスタッフが立っていた。タクはそのスタッフと挨拶を交わしながらチケットのような紙を渡し、ヒロトの方を向いてリーフレットを渡すように促した。

 スタッフの若い男はリーフレットの無料チケットの部分を切り離しながら、「初めての方ですね。ありがとうございます。楽しんでいってくださいね」と言った。

 

 本当にここでライブが行われるのだろうか?ステージはない。パイプ椅子が並べられているだけで、そこが観客席なのだろうか?

 二十人あまりの客が座っていた。ほとんどが男性だが、女性も数人いた。

「おう、タク、遅かったな」

 30歳過ぎの派手な柄のTシャツを着た額の広い男がこちらを向いていた。

「ごめん。バイトが長引いちゃって。で、今日はどうだった?」

「ダメだった」

  男は両手でバツを作った。

「そちらのニューフェイスはタクの友達?」

「いや、初めての人。ここが分からなかったようなので、連れて来たの」

「こんなとこ、そりゃわからないでしょ。驚いた?」

 男は人懐っこく笑った。

「で、誰推しなの?」

「まい姐みたい」

 ヒロトの代わりにタクが答えた。 

 と、その時、ヒロトは何人かが顔を曲げて自分の方を見たような気がした。何か敵意のようなものを感じて、一瞬背筋がゾクっとした。

「へえ、若いのにねえ」

「いや、特に推しというわけではなく、ビラを貰っただけです。初めてだから、何もわからなくって」

「へえ、初めてなんだ。面白いよ。楽しんでくださいね」

 スタッフと同じことをその男も言った。 

「あれは多田さん。最古参のファンの1人でね。半分スタッフみたいになっている」

タクは苦笑した。

 端の椅子に並んで座ると、タクはこのグループのことを説明してくれた。

 グループのスポンサーは宝石の通販会社で、グループのコンセプトは、メンバーの女の子はまさに煌めいている宝石であるということ。

 だから、メンバーの姓の代わりに宝石の名前がついていて、その宝石の色が彼女達のカラーになっている。

 ファンのことはバイヤー、スタッフは鑑定さんと呼ばれる。他にもさまざまなことに宝石にちなんだ名前がついている。

 そんな説明を聞いていると、突然、明かりが消えた。

 窓は暗幕で覆われたようで、室内は真っ暗になり、さっきまでざわざわしていたファンは静まり返った。

 

 それから、もう一度明かりがつくと、部屋の逆側に女の子がいた。

 黄、赤、緑、ピンク、白、青、紫。

 フリルのいっぱいついたミニ丈のドレスを着た女の子が7人並んで立っていた。彼女は青の衣装を着ていた。

 「テンカラッ!テンカラッ!テンカラッ!」

 ファンはみんな立ち上がって大声で叫ぶ。

 ヒロトも慌てて立ち上がる。

 それから、イントロが流れ、女の子が踊り始める。

 「あーっ 、よっしゃ行くぞー!タイガー !ファイヤー !サイバー !ファイバー!ダイバー!バイバー!ジャージャー!」

 周りの全ての人が大きな掛け声を発し、手にペンライトを数本持ち、身体を上下に揺らし、腕を振り始めた。

 テレビでアイドルグループのファンがそのようなことをするのを見て知っていたのだが、実際に大の大人が大声で叫び、身体を振っている様子は物凄い迫力で、ヒロトは圧倒され、呆気に取られるばかりだった。

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