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愛人は息子の推し  作者: 御通由人
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ヒロト33

 ライブ会場に行くと、顔馴染みの鑑定さんがヒロトを見るなり、「おめでとうございます」と言った。

 鑑定さんは彼が麻衣の推しであることを知っている。

 一昨日からバイヤー仲間からはおめでとうメールを貰い、「ありがとう」と返信していたのだが、運営の人にそう言われたら、「ありがとう」と言ったらいいのか「おめでとう」と返したらいいのか分からず、「1位とはすごいですね」と答えた。

「ええ、先程、麻衣さんも来たのですが、すごく喜んでいました。支配人は麻衣さんよりも喜んでいて、めっちゃめちゃご機嫌です」

 鑑定さんは笑った。


 タク、リキ、マモル、多田さんもヒロトを見るなり「おめでとう」と言い、麻衣の話題で持ちきりになった。

 驚いたことに、いつもは会ってもシカトするガロでさえヒロトに向かって手を上げた。祭りの時のような高揚した空気が会場を包んでいた。

 

 会場の照明が落ち、スポットライトの中に支配人が現れた。

「皆さんすでにご存知のことと思いますが、サファイア麻衣がオリコンランキングで1位を取りました。とてつもなくすごいことです。ビッグアーチストを抑えての堂々の1位です。テンカラ始まって以来の快挙です。それで、今日はセトリを変更し、栄誉を称えて、まず麻衣さんに登場して頂きましょう。サファイア麻衣、「いつか、君とふたたび」です。どうぞ!」

 イントロが流れ、いつものテンカラのミニスカートの衣装ではなく、白のロングドレスを着た麻衣が袖からゆっくりと歩み出て、スポットライトが追いかける。彼女はステージの真ん中で立ち止まり、深々と一礼して歌い始めた。


 世の中甘くはないもので、後日発表されたオリコンウィークランキングでは35位であった。

 しかし、たとえ1日であっても1位という足跡は残した。それだけでもすごいことだと思った。

 ヒロトはこれまで麻衣を応援してきて、本当に良かったと心底思った。

 バイトは忙しく、初詣イベントとか出られない時もあったが、仕事も充実していて楽しい。

 毎週テンカラのライブを行き、麻衣を応援するのはもっと楽しい。

 これまでの人生で今が一番幸せな時なのではないだろうか?ヒロトの心は幸福感と充実感で満たされていた。


……しかし、そんな幸せな時間は長くは続かなかった。

 ある日突然終わりがやって来るとは、彼は夢にも思っていなかった。

 


 

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