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愛人は息子の推し  作者: 御通由人
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謙介24

 大翔から電話があった。普段はメールさえ来ることがないのに珍しい。大学に行ってから初めてでないだろうか。

「うん、どうした?」

「お父さん、今、電話大丈夫?」

また驚いた。いつもはオヤジとかおっさんと言っているのに。お父さんと言われたのは家内の葬儀以来ではないだろうか?

「うん、大丈夫。それよりどうした?電話とか珍しいな」

「それがね。実は……留年してしまって」

 なんと愚かなことを。

 テンカラのせいだとすぐに察しがついた。テンカラばかり行って勉強をしないから、そういう目に合う。腹が立ち、怒鳴りたくなった。

 しかし、自分のしていることを省みると、大翔だけ責められないような気がした。現に自分もこの月末に真維と京都で会う約束をしている。

 謙介が何も言えずに黙っていたのを、大翔は相当怒っているのだと勘違いしたのだろう。言い訳がましく言った。

「1科目だけ落とした。たった1科目のために来年は行かなければならない」

「それ、どうにかならんのか?」

「いや、色々聞いてみたけど、無理みたい。ごめんなさい。週に1日大学に行くだけだから、生活費は自分で稼ぐから学費だけは出してください」

「稼ぐって、何かあてはあるのか?」

「うん、今コンビニでバイトしていて、もっと増やせないか掛け合ってみる。無理なら他でバイトするから」

「コンビニ?何の仕事をしてるんだ」

「レジや品出しをしている」

 謙介はまたまた驚いた。亜美が引きこもりのゲームオタクと大翔のことを揶揄っていた。実際はそれほどではないが、それに近いものはある。

 対人関係が苦手で、何事をするのも覇気がなく、だるそうで、ゲームをしている時だけ唯一元気であった。

 その大翔がレジをしている。接客が出来るのかと驚き、大翔も成長しているなと感心さえもした。

 世間は甘い父親だと思うだろうか?母親がいないからで、やはり父親では駄目だと思うだろうか?

 死んだ家内はどう思うだろうか?甘すぎると言うだろうか?いや、家内の方が甘かったので、自分と同じ感想を持つだろう。 

 

 家内の死亡保険金が十分あり、それは大翔の学費と生活費、亜美の結婚資金に使おうと思っていた。

 だから、1年間余分に生活費がかかったとしても仕送りを送れるだけの余裕はある。しかし、大翔がそう言うなら、やってみたらいいと思った。

 これも社会勉強になる。

「わかった。そしたら、学費は出す。生活費はなんとかしろ」

そう言うと、大翔は安堵したように息を吐くのが電話越しにもわかった。

「すみません。ありがとう」

 


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