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愛人は息子の推し  作者: 御通由人
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ヒロト23

 デートで最後に写真を撮る時、顔や体をずいぶん近づける。

 気持ちはそれまでのデートの余韻で昂っている。

 そのうえ、目の前に唇があれば、キスをしたい衝動に襲われる。しかし、それをしては永遠に出禁だ。だから、理性で必死に抑える。

 感情の乏しい自分でさえそうなのだから、ガロや虎次郎や龍一のような気性の激しい人はもっと大変だろうなと思った。

 その麻衣をあんなオヤジがキスだけでなく、身体中を愛撫しているのかと思うと、頭に血が上って苛々して仕方なかった。

 今日、白黒がついて良かった。来週や再来週までこの状態が続いたら、ストレスのために鬱になり、体調を崩すのではないかとさえ思われた。

 例の居酒屋で、タクミ、リク、マモルにミツルさんと上野さんも来ていて、6人で話しながら多田さんが帰ってくるのを待っていた。が、話は弾まず、ヒロトはうわの空でそんなことばかり考えていた。


 多田さんが戻って来た。

 みんな一斉に腰を浮かせた。

「どうでしたか?」

「お疲れさんです」 

「首尾よく行きましたか?」

「ああ、話は出来た。さすがまい姐だよ。何か特別な話があると察していて、レストランの席につくと、俺に「取りに行きましょう」と誘い、鑑定さんには席に置いているリュックを見ていてくれと頼んだ。それで、先に飲み物とスウィーツを取って戻って来てから鑑定さんが取りに行ったから、その間だいぶ時間があったので十分話が出来た」

「やっぱ、まい姐、さすがですね」

「うん、賢いな」

「で、話はなんて?」

「うん、それで、スマホの写真を見せたんだよ。それで、「こういうのを撮った人がいるのだけど、出回る前に麻衣さんに話した方がいいと思って」と言った」

 みんな、固唾を飲んだ。

「そしたら、まい姐は眉根を寄せてしばらく写真を見て、「これ私ですね」と言った」

 皆から嘆息が漏れた。

 やっぱり麻衣だったんだ。ヒロトは一瞬頭がふらっとした。

「いやいや先走らないで。「横の人はだれ」と聞くと「叔父さん。お母さんの弟さんで、子供がいないので、私を自分の子のように可愛がってくれていて、金沢に住んでいるのだけど、用事で東京に来た時には会いに来てくれて、ご飯を奢ってくれる」とのことだった」

「なんか嘘くさいな」

「うん、言い訳ぽくって、信じられないな」

「そうだろう。俺もそう思った。で、まい姐もそれを察したのだろう。スマホの結婚式の写真を見せてくれて、「従姉妹の結婚式の時の集合写真です。私がここね。それでこの叔父さんです」と言った」

「それで、確かだった?」

「うん、その人に違いなかった。ちょうど鑑定さんが戻って来たので、まい姐が慌ててスマホを閉じたのだけど、俺がしっかり見たから間違いない」

 一斉に歓声を上げた。

 ヒロトは嬉しさのあまり跳び上がりたくなった。

「では、真相が分かったところで、お祝い、えっ、なんか変かあ?まあいいや。お祝いとご苦労様の乾杯をしますか」

上野さんが言った。

「良かったね」

ヒロトの耳元でタクが囁いた。

ヒロトはうなづく。

「では、いきますよ。乾杯!」

「乾杯!」


 

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