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愛人は息子の推し  作者: 御通由人
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謙介19

 ずっと気にしながら待っていたのだが、ようやく午後11時頃になって、真維のブログが更新された。

 内容は大感謝祭についての詳細であった。

 最初に2位になったことに対してのお礼を述べ、次に水着が75000円で落札されて驚いたと書いていた。

 それから、まい子さんの突然の卒業表明に驚き号泣してしまったということと、テンカラに入った三年前右も左も分からない自分にまい子さんが手取り足取り教えてくれたことへの感謝の意を綴っていた。

 夜遅かったので、彼女も相当疲れているだろう、迷惑になるといけないと思い、謙介は「お疲れ様でした。2位、おめでとう」とだけ書いたメールを送った。

 

 翌朝、目覚めて、スマホを見ると真維からの返信が届いていた。

「ありがとうございます。疲れました」

 謙介は慌てて送る。

「水着、75000円で売れたんだね。びっくりだよ。どんな人が買ったの?」

 どんな変態が?と書きたかったが、そこは自重した。

「そうなんです。びっくりしました。紳士なおじ様です。このオークションで得たお金で、運営が来年発売のCDのそれぞれのメンバーのを買うのです。だから、高い値がついて嬉しかったです」

 よかったね。どスケベな紳士のファンがいて。

 そう思ったが、またまた自重した。


「まい子さんが辞めて、辛かったみたいだけど、大丈夫ですか?」

「数ヶ月前から今年で辞めたいみたいなことを言っていたし、リハーサルの時からスタッフとこそこそ打ち合わせをしていたので、薄々は気づいていたのです」

「え、知っていたということですか?」

「察しはついていました」

「そうなんですね。真維さんも結構役者ですね。嘘泣きですか?」

「ひどい!そんなことないです。実際に辞めると聞いた時には本当に辛かったのですよ!」

 彼女が血相を変えているのは文面からも伝わってきた。

 しまった。

 彼女とメールするのもだいぶ慣れてきて、つい軽口を叩いてしまった。

 

 不用意な発言でマスコミから叩かれる政治家がよくいるが、セクハラもパワハラという言葉もなかった時代に出世し、好き勝手言ってきたのだから、つい口が滑ってしまうのだろう。

 自分もそれだ。だから、娘からはデリカシーのカケラもないとよく嫌味を言われた。

「ごめん。そうですね。分かっています。ほんの冗談です」

「ブログもツイッターも嘘を書いているわけではないけど、商売用だから全部が全部そのままに受け取らないでください。小林さんはバイヤーさんではないのだから」

 スマホの向こう側で、真維の怒っている顔が思い浮かんだ。しかし、謙介は別のことを考えていた。

 そうなのか。彼女にとって、自分はファンと同列ではないのか。そう思うと、我ながら能天気だなとは思いながらも妙に嬉しくなってきた。

 


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