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愛人は息子の推し  作者: 御通由人
30/75

ヒロト15

「よっしゃあー!」

やっとヒロトはジャンケンに勝った。

 3度目ならぬ7度目の正直だった。思わず声を出して、ガッツポーズをした。

  帰省で父や姉に麻衣の話をしたので、運の風向きが変わったのだろうか?


 ヒロトはこの前の鑑定さんが勧めていたとおり、かき氷を食べに行った。

 お洒落な店だった。彼はレアチーズヨーグルト、麻衣はブルーハワイを頼んだ。

ブルーハワイは鮮やかな青色のシロップがかかっていたので、

「青が好きなのですか?やはりサファイアなので」

そう聞くと、

「別にそういうわけじゃないですよ。この味が好きなだけです」

彼女は口に手を当てて、楽しそうに笑った。

「そうなんだ。ブルーハワイって食べたことがない」

 彼女と一緒にいると、幸せな気持ちになってくる。この前の梨乃との時は苛々することが多かったが、ずいぶん違うなと思った。我ながら身勝手だとは思うが、この感情はどうしようもない。


「あーん」

 ヒロトが驚いたことに、彼女は自分の氷を自分のスプーンで掬って、彼の前に差し出してきた。

「よかったら、どうぞ」

 こ、これは、間接キスになるのではないか?これはセーフなのだろうか?

 少し離れたところにいるこの前よりも歳上の40代半ばの鑑定さんの方を見る。鑑定さんは抹茶あずきを食べながら、にこにこしてこちらを見ている。

 セーフなのだろう。

 安心して、氷を頬張る。

 恋人同士がこういうことをしているのをドラマではよく見るが、自分にこういうことが出来る機会が訪れるとは夢にも思わなかった。

 恥ずかしさもあったが、それ以上に嬉しさで、まるで口の中で溶ける氷のように心がとろけるほど感激していた。

「おいしい?」

「ラムネ味なんだ」

「そうなの。色々試したけど、これが一番好みなのです。でも、それは食べたことないので、少し頂いてもいいですか?」

 そう言って、彼女は彼の氷を掬って食べた。

「意外と甘酸っぱい。変わった味だけど、ないことはないですね。これが好きなのですか?」

「いや、初めて食べます。レアチーズヨーグルトなど田舎ではないので、どんなのかなと思って」

彼女の発言から、これまで他のバイヤーと何度もこの店に来ているのだと想像がついた。その度にいつもこういうことをしているのだろうか?

 嫉妬の感情が心の中で芽吹くのを感じた。


 かき氷屋を出て、散歩道に行った。しかし、まだ5時半くらいで昼間の暑さが残っていて、散歩どころでなかった。それで、麻衣の提案でゲームセンターに行くことにした。

 音楽ゲームやクレーンゲームやコインゲームを興じた。

 音楽に合わせて、ステップを踏むゲームでは彼女はさすがの高得点を出し、大喜びではしゃいだ。

 この前のサマーフェスティバルの大人のセクシーさとは真逆の少女のような愛くるしい様子を見て、ヒロトはますます彼女に惹かれていくのを感じた。

 プリクラを撮るのはNGであった。鑑定さんによると、メンバーとの写真は有料で提供するものだから、許可されていないとのことだった。

 しかし、試着会には一枚だけチェキを撮るサービスがついている。

 ゲームセンターを出て、ビルの陰の涼しいところに移動して、写真を撮ることにした。

 麻衣はリュックサックの中からポッキーを取り出し、それを口にくわえて、ヒロトの方を向いた。

 ヒロトはまたもドギマギした。これはセーフなのだろうか?

 再び鑑定さんを見ると、彼はカメラを手にニコニコしていた。 

 大丈夫なのだろう。

 ヒロトは顔を近づけ、ポッキーの片端をくわえた。すぐ目の前に彼女の顔がある。女性の顔をこんなに間近に見るのは初めてのことだった。

 恥ずかしさで顔が火照り、興奮で胸が苦しくなってきた。

「はい、チーズ」

 鑑定さんが言った。

 



 

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