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最終話 わ、私も女だから、皆の気持ちには応えられません、よ……!?

「……え?」


「私はあんたが好き。一人の人間として、愛情の意味で好きよ。正しく伝わったかしら?」


「えと、その、はい」


「あんたはどうなの?」


「い、いい今答えなくては?」


「そうよ。っていうか、何で迷ってんのよ。あぁ、マルーシャとユウリからも告白されているものね」


 ファルシアは頭が痛くなりそうだった。

 マルーシャ、ユウリ、そしてクラリス。まさかの三人目である。

 この頭痛は、戦闘でもらうダメージよりも、鋭く突き刺さっていた。


「そ、そそそそうですよ。私、マルちゃんとユウリさんからも……あぁぁぁぁあ」


「あぁもう、じれったい」


 そう言って、クラリスはファルシアを引き寄せた。

 不意のことだったので、彼女はつい前のめりになってしまった。



 ――ファルシアの唇が甘く痺れた。



 ファルシアが気づいたときには、クラリスは離れていた。ただし、彼女は自分の唇に指を添えている。


「く、クラリスさん今のは?」


「キスよ」


「恥じらいは……?」


「あんた相手に、今更恥じらうことある? 私は幸せよ」


「! そ、そんなに直球で言うの、ずるいです」


「そう? ま、あんたを意識させられたのなら、してよかったと思うわ。でも、今度はあんたからしてよね」


 次の瞬間、扉が勢いよく開け放たれた。


「クラリス王女! それはずるいと思いますよ! このマルーシャ、抗議します!」


「クラリス王女。立場を利用しての急接近。これは見過ごすわけにいきません」


 マルーシャとユウリが怒気を滲ませながら、入室する。


「あんた達は本当に……。不敬罪とか適当に理由つけてしょっぴくわよ」


 口ではそう言いながら、クラリスの口元には余裕があった。何せ、三人の中で一歩も二歩もリードしたからだ。

 マルーシャとユウリに声は届いていない。二人はファルシアに全意識を集中させていた。


「まだ私、ファルシアちゃんから返事もらってない!」


「私もファルシア・フリーヒティヒから気持ちを聞いていません」


「えと、その、私は……」



「「「私は!?」」」



 三人の声が重なる。

 ファルシアは気圧されてしまった。

 剣に生きてきたファルシア。こと戦闘において気圧されることはあまりない。しかし、恋愛ごととなると、話は全くの別である。


「ええっと……一人ずつ、喋ってもいいですか?」


 沈黙で了承されたので、ファルシアはまずマルーシャを見る。


「マルちゃんはいつも明るくて、こんな弱気な私をリードしてくれています。それがすごく嬉しくて、マルちゃんといると、自然と心が弾みます」


「ありがとうファルシアちゃん!」


 次にユウリを見る。


「ユウリさんはいつも厳しくて、だけどしっかりと私のことを見てくれています。私が色んな場面で恥をかいていないのはきっと、ユウリさんがいてくれるからだと思います」


「ファルシア・フリーヒティヒにしては、素晴らしい評価ですね」


 最後に、クラリスを見る。


「クラリスさんはもう、いくら喋っても感謝の気持ちを言えません。私のことを見つけて、選んでくれたから、今の私がいるんです。近衛騎士になってからの私の全ては、クラリスさんがいてくれたからこそです」


「ファルシア。よく言ったわね」


「で、ですが!!」


 ファルシアは後退した。

 そして、まるで壁を作るように、両手のひらを前に突き出した。




「わ、私も女だから、皆の気持ちには応えられません、よ……!?」




 彼女の言葉に、目をパチパチとさせる三人。

 ファルシアはすかさず話を続けた。


「だ、だってその、私何回も言いますけど、女ですよ? だから、その、皆さんの気持ちはとっても嬉しいんですけど、あの、ここここっこ恋人とかはその……」


 三人は顔を見合わせる。

 そして、同時に首を傾げた。


「何か問題があるのファルシア?」


「そうだよファルシアちゃん」


「全く問題が見当たりません」


 津波のように押し寄せる否定の言葉。

 ファルシアは目をぐるぐるとさせる。


「えっ、えっ!? 私がおかしいんですか!?」


「おかしいわよ。今どき珍しくもない」


「えぇ……」


「分かったわファルシア。あんたに必要なのは理解よ」


 クラリスはファルシアを指差す。


「私はあんたに意識してもらうために、これからもアプローチをかけ続けるわ。それで、必ず私の想いに応えなさい」


「まーった! クラリス王女ばかり喋ってずるい! 私だってファルシアちゃんに、好きだって言い続けるから! だから私を選ぼう?」


「ファルシア・フリーヒティヒと並べるのは私です。申し訳ありませんが出る幕はありません。そうですよねファルシア・フリーヒティヒ?」


 三人がどんどんファルシアへ詰め寄る。

 みんな、目をギラつかせている。それだけで本気度が伝わる。

 もちろん、ファルシアは過不足なく彼女たちの気持ちを理解していた。


 だが! だとしても!


 ファルシアは両手を挙げて、城中に響くような声量で叫んだ。



「わ! 私は! まだ皆の気持ちに応えるのは難しいですよぉ!」



 ファルシア・フリーヒティヒの物語はこれにて一旦、おしまい。

 これからも彼女は様々な出会いと別れを繰り返し、成長していくことだろう。


 ファルシアよ、試練と美少女たちのアプローチを乗り越え、立派な騎士になるのだ!



【内気で気弱な最強少女騎士は自由すぎる王女様に振り回されます。~美少女たちの熱烈アプローチを乗り越え、立派な騎士になるのだ~ 完】

作者の右助です。

これにて「内気で気弱な最強少女騎士は自由すぎる王女様に振り回されます。~美少女たちの熱烈アプローチを乗り越え、立派な騎士になるのだ~」は完結となります。


今回は、百合ハーレムものが書きたくて書きたくてたまらず、「俺の中の最高の百合ハーレム」をテーマに作品を書きました。

彼女たちのドタバタラブコメはこれからも続いていくし、もしかしたらいつの日かまた、文章で皆様の目に届くことになるのかもしれません。

その時が来たら、またファルシアたちのことを見守ってくれたら幸いです。


今まで読んでくれた皆様、本当にありがとうございました!

また違う作品でお会いしましょう!


それでは!

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― 新着の感想 ―
[一言] わかります。百合ハーレムは素晴らしいです。もはや芸術です。 続きがみたいですね。いつまでもお待ちしております。
[良い点] 完結おめでとうございます! ファルシアよ、覚悟を決めて立派な百合騎士になるのだ! 一人を選ぶにせよ開き直って全員を選ぶにせよ、早めに決断しないと更に相手が増えてしまうぞ!
[良い点] 完結おめでとうございます! 性別なんて愛の前では敵では無いのだ…ファルシアよ!覚悟を決めろ! どうせ逃げられやしないんだから諦めな!
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