あの日の真実
私は、殺し屋。大金を積まれる代わりに、ばれたら終わりな暗殺の仕事を受け持つ、いわゆる裏の人間だ。
今回依頼してきたのは、珍しいことにただの一般人だった。珍しいことだが、ない話なわけではない。事実、大金を積んででも殺したい、なんていう一般人もいるにはいるのだろう。
ターゲットは、今警察に追われている。やれやれ、とんだ災難だ。まさか、火に飛んで入ることになるとは思わなかった。苦手な遠距離射撃をしなければならなくなってしまった。やれやれ。
「はぁ……面倒くさいが、これも仕事だ」
そう、これは仕事。それも、一般人とは違い、ミスをすれば終わりな仕事なのだ。
「さて……ターゲットは……ん?」
おかしいな…。俺が聞いた特徴だと、彼は確か、人を何とも思っていない、冷徹で残忍な詐欺師のような殺人犯だと。確かにそう聞いた。
しかし、スコープ越しに見える彼は、ちっともそう見えない。まるで、純粋無垢、今まで何の罪も犯してくる余地さえありませんでしたとでも言わんばかりの優等生顔をしていた。
なんだか、的外れな身なりだな。まあ、身なりと言っても何にも着ていないが。
「ま、仕事だし。しゃーないしゃーない」
依頼主にどう映っていたのかはわからんが、仕事は仕事。食肉解体の人が動物を殺すように。俺も依頼された人を殺すのだ。
「距離測定通り、風向き追い風2メートル、銃弾装填確認、狙撃準備完了……」
未来ある若者だが、まあ一人二人ぐらいなら死んでも変わらんだろう。
「……さよなら、名も知らぬ少年」
俺は、引き金に力を込めた。その瞬間。
「_______」
「は」
彼の目の前に、突如女が立ちふさがった。
薄着。まるで今まで、隠れてましたと言わんばかりの風貌の女だ。
まずい。思ったときにはもう遅かった。
若干ぶれたものの、弾丸は正確に、彼の周辺に放たれた。放たれた銃弾は、まっすぐ飛んでいき、目に映らないほどの速さで、その女の腹部に吸い込まれていった。
「っ!やらかした……」
幸い、近くの女は殺すなとは言われていない。つまり彼女を殺しても依頼には特に支障はないのだが、単純に殺しのプロとしてのプライドが、誤射によって傷ついたのだ。
「あ~ひっさびさだこんなミス。何年ぶりだ…?」
もう一度スコープを覗くとターゲットは、死んだ女にキスをしていた。
「ヒュ~。お熱いねぇ。じゃ、そのままくたばってくれ」
今度は正確に。何の邪魔も入らないように慎重に狙い、彼を撃ち抜いた。
彼は撃たれすぐ。力を失い、そのまま死んだ。
「ったく、一手間増やしやがって……くっそぉ……」
悔しい……。次からは確実に一撃でターゲットを仕留めてやる……。
「さ、行きましょう新谷さん。終わりましたよ」
「ほ、本当か!?」
「本当ですから、早く出してください。追手が来てしまいます」
「あ、ああ!わかった!…よかったな…香苗……」
俺のターゲットの死にざまが社会現象になったのを、俺はカフェでコーヒーを飲みながら知った。




