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血に濡れた愛  作者: 時雨 悟はち
血に濡れた愛
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発覚

ラストまで残り1話!!!!頑張れおで

「………じゃあ、後始末は頼んだよ」


いつもの様に終わらせた僕は、あとの始末を任せ、家へと向かった。

いつもより多めの肉塊を横目に、僕は愛用の手袋を外した。

それにしても、今日はかなり眠い。

きっと昨日、妙に早く目が覚めて、眠い中でも活動していたからだろう。つまり、ただの寝不足なのだが頭がボーッとして仕方がない。

仕方ない、早く帰って寝よう。今なら、まだ頭が冴えるぐらいには寝れるだろう。

ぼんやりと手袋をポケットに入れ、帰路に着いた。


………あれ、僕の今日のズボンにポケットなんて着いてたっけ。


「…………やっと………捕まえた………!!!」



夢を、見た。

真っ暗闇の中。そこには、伊豆奈が居る。僕は知ってる。それが、最期だということに。だからそれを止めたくて、僕は必死に手を伸ばす。でも、それを伊豆奈は弾いて、僕の目の前に仁王立ちする。

もう一度手を伸ばしたその刹那。


伊豆奈は、真っ赤に濡れて、僕によりかかって倒れる。


わかっている。伊豆奈は、死ぬ。その死に際。伊豆奈は笑ってこう言う


「……侑斗くんの、せい………」


夢は、そこで終わった。僕が目を覚ました時。僕の目に涙がある訳ではなく。代わりに、何故か僕の手には血がついていた。


「おまたせ!侑斗くん」


待ち合わせ場所に、伊豆奈は来た。いつも通り、可愛い顔で、愛している顔で、可愛くオシャレして、やってきた。


「今日もいっぱい遊ぼうね!」


愛らしい顔で上目遣いをして僕の手を握ってきた。

僕は、その一つ一つの伊豆奈に。一瞬一瞬の伊豆奈に、体が止まった。


「ん?どうしたの侑斗くん?」

「………………………………………」


どこか、引っかかる。

もしかしたら、少なからずあの夢が本当になるのかもしれないという予感が、心の底で疼いていた。


「ゆ、侑斗くん?何難しい顔してるの?」

「……………………」


僕は、何も言わず自然と伊豆奈を抱きしめていた。


「ふぇ!?い、いきなり?」

「………」


暖かい。それに、綺麗。何にも手を出されてなくて、まさに純白のような彼女である伊豆奈。手離したくない、というより、失いたくないという感覚が強かった。


「う、嬉しいけど、ちょっと恥ずかしいなぁ………えへへぇ………」


伊豆奈は、惚気けてわかっていない。何かも分からない、何も汚されていない真っ白な彼女を、僕は罪と血に濡れた手で抱きしめていた。


僕がそんなふうに、彼女に対して得体の知れない不安感に苛まれていた時だった。


「見つけたぞ!」


そんな大声とともに、なにか鋭いものが脇腹を抉った。

抉った脇腹が、想像以上に強く、道端で思いっきり吹き飛ばされた。

幸いにも、蹴られた瞬間伊豆奈の体を手放したおかげで伊豆奈には何も実害なく済んだ。


「侑斗くん!?ってうわ!」

「こいつは危ない。近づかないで!」


僕を心配する伊豆奈は、知らない大人に抑えられていたを

最初に蹴ってきた人物は、僕に近づいてきていた。


「………約半年、よくもまあのうのうと生きてきたなぁ………俺の先輩を亡くして必死にお前を探していた努力の裏で!お前は!何をしていた!!!」

「っく………そ………」


胸ぐらを掴まれながらそう恐喝される中、目配りをする。

………いや、しようとした時だった。


「!?」

「はっ!お仲間か?んなもんとっくに居ねぇよ!お前の取り巻きは誰一人として残さず捕らえた!」


目線の先では、あの大男が2人、いとも容易く捕えられていた。


「あんなに大切な人を………お前は!自分の!私利私欲のためだけに殺したんだ!わかるか!?お前の、そのエゴの一つだけで!一体何人死んだ!?何人があの山に埋められた!何人の関係者が!涙を流しながら!俺らの前に来たと思ってるんだ!なぁ!?なあ!!!」


叫びながら。自身の気持ちをぶつけながら僕の顔を殴打する。

痛い、痛い。一撃を喰らう度に、重々しい痛みが顔と心を打ち付ける。


「侑斗くん!」

「伊……豆奈………うぐっ!だ、大丈夫だ、大………丈夫」


伊豆奈を安心させようと思って話せば話すほど、彼の一撃は重くなる。


「………残念だったなぁ………お前が昨日!手袋をうっかり落とさなければこんなことにはなってなかったんだろうなぁ!」

「なっ!?」


それは、僕にしては珍しい凡ミスで、それでいて致命的なミスだった。


「お前が落とした手袋について昨日通報があったよ!もっと上手くやるんだったなぁ!さぁ……観念しろ、死刑なんかよりも、もっと重いものを与えてやらぁ!」


無理やり起こされ、僕は俯きながら彼に腕を掴まれていた。



「侑斗くん!!」


身を乗り出しながら叫ぶと、私を抑える大人が力を入れて抑える。


「どうして………?離してよ!侑斗くんがあんなに……」

「……彼が、あなたの目にどう映っているのかは分かりません。ですが、彼は猟奇殺人鬼です。 彼と一緒にいるのは、あまりにも………」


わからない。今彼らが言っていること全てが、何も分からない。

でも………それでも私は。もし彼らが言っていることが本当だとしても。


「………いや!離して!」

「あっ!ちょっと!」


彼の腕を振り払って、私は侑斗くんの元へ走った。


「伊豆………奈………」

「こっち!」


私は、裕翔くんの手を引いて走った。


走って、走って。とにかく走り続けた。

路地を回り、身を隠し、逃げながら考えた。


さっき、侑斗くんのことを殺人鬼だと言った。殺しをしているんだと。

もしそれが本当だとして。私は、侑斗くんのことを愛せるのだろうか。侑斗くんに対するこの気持ちを、保つことは出来るだろうか。

正直、不安しかない。一体、こんな心で。私は侑斗くんのことを愛せるか。そう自問した時に、素直にYESと答える勇気がなければ、自信もない。

でもじゃあどうして、私は動いているのだろうか。もはや、衝動に近いなにかに突き動かされているのだろうか。

わからない。何もかも分からないことだらけだ。


必死に走って走って。気がつけば、郊外の廃ビルの前まで走ってきていた。


「………とにかく、入ろう」

「…………………」


侑斗くんは黙ったまんまだったけど、その手を引いて中に入った。



伊豆奈が僕を連れて、走って逃げた。

どうしてか。答えは、たった1つだ。


これは、僕のせいだ。


僕が彼女を夢中にさせた。どんな手段を使ってでも、伊豆奈を僕のものにしようとしたせいだ。そのせいで、伊豆奈は僕を助けるためならなんだってしようとしてるんだろう。


「………落ち着いた?」


そんな僕に、伊豆奈は変わらず優しい笑顔を向けてきた。

あまりにも可哀想なその顔に、僕は思わず俯いて


「………ごめん、伊豆奈」

「………え?」

「…………ごめんな、伊豆奈…………」


と、伊豆奈に謝っていた。


「ごめん………やっぱり、何かあったの?」

「……………」


言葉が詰まって、上手く言葉が出せない。

あの瞬間から。今まで無視してきた罪の意識が体を駆け巡った。

…………いや、違う。そもそもずっと、気づいていただろうに。

そもそも、ずっと気づいていたし、それをずっと隠して、騙してきたのは自分だ。

贖罪は、到底できそうにないや………。


「………伊豆奈、今から話すことは、全部本当のことで、それで、きっと伊豆奈を絶望させる。でも、聞いて欲しいんだ。いいかい?」


僕がそう聞くと、伊豆奈はこくりと首を盾に頷いた。


「…………僕はさ、ずっと怖かったんだ。伊豆奈が、ふとした瞬間に君を失ってしまうんじゃないかって。そう思ったら、なにもかもが脅威に見えてさ。ずっと、ダメだって。やったら行けないって思ってたのに、気がつくと僕の手は真っ赤に染ってるんだ」


僕が語るその話に、伊豆奈は固唾を飲むような顔で聴いていた。


「………いけないって、わかってたのになんて、信じられないよね。きっと、怖いよね、嫌ったよね!?そんな僕、なんかと一緒なんていやだよね………ごめんね、こんな僕で。ごめんね、好きになっちゃって…………」


最後まで自己中な僕。そんな僕には、さすがに愛想をつかすだろう。

そう思ってたのに。伊豆奈は、一瞬固まったあと、その口を開いた。


「………私、全部初めてだったの」

「……え?」


それは僕が思っていたものじゃなく、頭の片隅にも予想していなかった言葉だった。


「付き合ったのも、好きになった男の子も、手を繋いだ男の子も、ハグした男の子も、初めてキスしたのも、何もかも侑斗くんが最初」

「………それが、どうかしたの?」


そう尋ねた途端。伊豆奈は僕を押し倒してキスをしてきた。

ただ、それはいつもしているものじゃない。強く、僕を求めるというより、僕を貪るようなディープなやつ。でも、不思議とそれに、僕は安堵感を覚えていた。

嫌われていない。まだ、僕をこんなに好いてくれている。そんな思いが、僕を安心させていた。

舌を絡める。互いが互いの唾液を求めて激しく唇を貪りあった。


「ぷはっ……だから、さ………はぁ、はぁ………全部、初めてを染めて欲しいの」

「はぁっ…………はぁっ…………伊豆奈?」


伊豆奈は、そういうと何故か急に服を脱ぎ始めた。


「伊豆奈……………」

「今ので、初めて舌を絡めたのは侑斗くん。初めて、私と体を重ねるのも、私…………」


服を脱ぎ捨て、自身の全てを曝け出した伊豆奈は、僕の上に乗って


「私、せめて侑斗くんが最初であって欲しいの………」


そう言って、伊豆奈は僕の体に手を伸ばした。

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