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血に濡れた愛  作者: 時雨 悟はち
狂気の年末年始
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憎愛

それは、何も変わらない日常だった。

朝、伊豆奈の声で目を覚まして、伊豆奈の作ってくれたご飯を食べ、二人で一緒に登校する。

いつも通り、いつも通り。でも言い聞かせる胸の内には、不安が渦巻いていた。


「………」

「でさ〜……?。侑斗くん?どうしたの?」

「ん?ああ、いや。なんでも」


しかし、何でもなくはない。さっきからずっと、電柱の影あたりから憎悪が向けられているような気がする。

勘違い、ならいい。僕がただおかしいだけだから。でも、これがもしそうじゃないなら……。


「……そういや、今日伊豆奈仕事があるんじゃなかったっけ?」

「ほにゅ〜?仕事なんて……あっ!説明会準備!!!」

「走ろっか」


「うんっ!急げ〜〜!」と言って先行する伊豆奈の後を追いかけて走る。


一先ず、その憎悪が僕からズレることがなくてよかったと思う。



「なあ、席一個多くね?」

「ん?」


どれどれと思いながら見渡すと、たしかに一席誰の席でもない席があった。

伊豆奈の監禁以来、委員長がいなくなってから暫く経つ。委員長は今、とりあえず病気をして病院にいることになっているが、実際はあのザマだ。まあ、僕の伊豆奈に手を出そうとしたのだから当たり前だけど。


「転校生かな〜。可愛い子かな?どんな娘なのかなぁ〜」

「女前提で話すな」


拓哉はジロッと睨み「全く、これだから彼女持ちは夢も見れねぇんだよ……」と漏らしていた。なにか悪いことを言ってだろうか。


まあ、僕もどんなやつが来るのかは少し気になったりする。変なやつじゃないといいけど。

そう思いながら、朝の始業のチャイムが鳴り響いたので席に直る。


「え〜朝から席が増えてるからみんなもなんとなく察しているとは思うが、残念ながら可愛い転校生じゃない」


その言葉に男子は一斉に「え〜〜」ともらした。どれだけ女に飢えてるんだ。


「というか、転校生でもない。ほら、入れ」


ガラガラとドアを開け、入ってきた人物を見て、僕は目を見張った。

そんな僕を無視するかのように、その人物は教卓に手をついて


「みなさん、お久しぶりです。また、みんなと楽しめるのが嬉しいです!」


___委員長は、あの頃とは違う爽やかな笑顔を浮かべてそう言った。



「……面倒くさいことになった」


机を囲まれている委員長を見ながら、僕はそう思った。

彼が本当に改心したとは思えない。というか、憎悪と嫌悪しか抱いてないであろう人物を国家権力はなぜ野放しにしたのだろうか。心底理解ができない。

ひとまず、伊豆奈とはずっと一緒にいるようにして、あいつらにはずっと見張らせよう。なにか変な動きをした途端に、あいつの息の根が止まるように。



「………なんて?」

「だから、もし侑斗がよかったら、一緒に遊びに行きたいんだ」


そんなふうに思ってたのに、いきなり出鼻をくじかれた。

授業が全て終わった帰りの時間。彼はいきなりそう言って遊びに誘ってきた。


「急にどうして?」

「えっと……小声で言うけど、君には前に、とても申し訳のないことをしただろう?だから、やっぱりお詫びしたほうがいいと思って……。もちろん、君は僕を恨んでるだろうし、嫌なら断ってくれたっていい。でも、どうだい?」


その言葉の節々には朝のような憎悪は全くなかった。

……一応、一応。


「……そっか。じゃあ、いいよ」

「!、本当!?じゃあ行こう!大丈夫。ルートはちゃんと決めてあるから!」


先行く彼の後ろから、アイコンタクトを送ってから委員長についていった。



「………いやぁ〜、楽しかったね!」

「おう。そうだな」


不思議だ。

まっ先にそう思っていた。だって、そうだろう。

今日したことといえば、本当にただただ遊んだだけだ。それはとてもじゃないけど、あんな事があった間柄には見えない。


「……じゃあ、俺はこっちだから」

「そうか。わかった。また明日、学校で!」


………警戒を少し解いてやってもいいかな。

そう思いながら帰路についた。もっとも、彼がもし次伊豆奈に手をだす事があったら、そのときは迷わず始末させよう。

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