大晦日
実にお久しぶりです。さて、次回が出るのは果たしていつでしょうか。それは全く分かりません。 時雨
「あけましておめでとう」
「うん。あけましておめでとう。今年もよろしくね」
初詣の帰り道。僕らは手を繋ぎながらそんなことを言い合った。
「去年1年を振り返ってみる?」
「去年…そういえば、あの花見の時のやつはもう大丈夫?」
「うん。侑斗くんが助けてくれて、あの後も私に色々してくれたでしょ?侑斗くんが居れば大丈夫って、思えるようになったんだ」
伊豆奈はそういうと、朗らかに笑い、僕を見た。
その安心しきったような顔を見て、僕もいくらか安心することが出来た。
「あ、そういえばあの後、侑斗くんどこに行ってたの?」
あの後。伊豆奈が聞いてるのはあの数日後のこと。僕が待ち合わせに少しばかり遅れてしまったあの日のことを指していた。
「…内緒。気が向いたら教えてあげる」
「え~!なんでよぉ~」
という伊豆奈の少し前を歩く。それに気付いた伊豆奈が少し足を速めて隣に歩いてきた。
……あの日のことは、全部伊豆奈の為。それを想っていても、僕はそれを口にする気はない。
正義はやっぱ、人知れずやるのが一番いいんだ。
「私はねぇ、なんやかんやあの雨の日が一番記憶に残ってるなぁ」
伊豆奈はそういうと、顔を赤らめて過去を振り返るような視線を空に送った。
「ねぇ、もう一回やって?」
「もう一回…いいよ、わかった」
僕はそういうと、伊豆奈をギュッと引き寄せてやさしくキスをした。
軽く、ふんわりと引き寄せ。でも、あの時とは違う。恐る恐るの演技は消して。僕は伊豆奈にチュッとした。そして、僕は伊豆奈の目を見て
「やられっぱなしはいやだから」
といった。伊豆奈は両手で顔を覆い隠して
「うん、えへへ、そっかぁ……えへへへへぇ~」
と惚気ていた。
この一年を振り返ってみる。可愛い伊豆奈も、かっこいい伊豆奈も。そのすべてを僕は好きになった。伊豆奈も、僕と一緒ならと。一緒になるようにと思って過ごしてきた。
おかげで、伊豆奈は僕のことが好きだっていう信頼を感じることが出来た。
まあ、それで不安が取り除かれるなんてことはないわけだけど。
「体育祭とか、文化祭とかいっぱい遊んだしね!」
「伊豆奈のケーキ。おいしかったよ」
「侑斗くんの接客もよかったよ~」
そうやって思い出話に花を咲かせていると時間はすぐに過ぎるもので。気が付いたら伊豆奈の家に到着していた。
時刻は夜の1時。時間も遅いので、家の前での談笑もほどほどにし、僕は家へと帰った。
「……来年も、再来年も。ずっとずっと、この先ずっと伊豆奈といられますように」
それが叶うためならば。たとえ今日みたいな日だって休まない。
後ろで鳴る一方的な殴打の音を聞きながら、音一つない静寂の街を家に向かって真っすぐ歩いて行った。




