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血に濡れた愛  作者: 時雨 悟はち
狂気の年末年始
50/58

聖夜に知る本音

12月25日。


学生だけでなく、交際中の人々や家族にとって、この日は一番そわそわする期間である。

相手へのプレゼントやデートコース。服装や振る舞いなどをついつい考えてしまうこの期間において僕、立石侑斗も例に溺れずそわそわとしていた。

とはいえ、もちろんコースやプレゼントとかは全部決まっているし、どのようにエスコートしようかも予行済みだ。それでもドキドキするものはドキドキするし、うまく行かなかったらどうしようとか考えてしまう。


「……うまく行きますように………」


散々の神頼みを聞いてきた僕にはわかる。神なんていない。いても、人を助けたりはしない。でも願掛けとして、一応僕は神とやらに祈ってみた。効力は、まだわからない。



かくして、僕は25日を迎えた。寒くないようにかつ、僕に似合う服を一生懸命選んで、精一杯のおしゃれをしてきた。つもりだ。


そろそろ、待ち合わせの6時。辺りを見渡していると


「あ!やっぱ侑斗くんのほうがはやかったよ〜」

「さっき着いたばっかりだから変わらないよ。ほら、行こっか」


僕は手を差し出し、そう言った。伊豆奈は僕の手をスッと握り、ほんわかと笑いながら僕の隣に付いてきた。

うん。やっぱ、僕の隣には伊豆奈がいる。紛れもない事実。疑いようのない確か。これが、この世の真理。

これが崩されることは、あってはならない。だからこそ、僕は努力するんだ。それの、何が悪い。


森羅万象を覆すのは、良くないことだから。だから僕は、それの門番をするんだ。



「わー!こんなすごいレストラン、よく取れたねぇ」

「うん。実は、この前福引でここの招待券を貰ってさ。さ、行こ行こ」


また、僕は手を引いて彼女を誘った。それに嬉しそうに笑うその顔には、嘘偽りを感じるわけがなかった。


「ちゃんとコースも選んであるから、大丈夫だよ」

「うん!は〜。夜景綺麗だねぇ」


その声に誘われ、僕も夜の景色に目をそらす。

都会の街並みが、夜闇を照らす。鮮やかな光と闇が生み出す夜が溶け込むような鮮やかさを生み出していた。

まるで、それは僕の心のようだと、心のなかで思い切る前に視線を外した。


「おまたせしました。前菜でございます」

「わー!美味しそうだよ!侑斗くん!」


やはり、無邪気な彼女に僕は笑みをこぼした。


二人で楽しく、話しながらご飯を食べた。それに今まで感じていたどす黒い邪魔な感情が薄められていき、多少は楽になったように思えた。

それから、僕は伊豆奈にプレゼントを手渡した。伊豆奈は目をキラキラさせながら「家で大切に開けるね!」といって、両手で可愛らしく抱きしめていた。その様子に、僕も頬を緩め、二人で笑いながら帰った。

そうだ。僕は、これだけが幸せで。これ以上ない、これ以下がありえないのがこの幸せだ。この生活が。この瞬間だけが僕の生きる意味。糧になる。

その幸せを。その一瞬の糧を。奪うやつも、奪ってしまいそうなやつも、気が狂うほど許せない。


だから、僕は。だから俺は正義を振るうんだ。



家について、伊豆奈を見る。今日も変わらず、かわいい伊豆奈はそこにいる。


誰にも渡さない。渡すわけがない。そうだ、僕の動く動機はいつだって、これだ。

誰にも渡さないよう。僕は全力で正義を振るう。それが、僕なりの愛なのだから。


「……伊豆奈の全ては、僕だけが知っていればいい…」

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