知らないふり
「え~っと、確かここら辺だったような…あ、いたいた!」
「あ、どうも、初めまして。YTこと、立石侑斗です。今日はよろしくお願いします」
「うん!よろしく~。他のみんなは?」
「あ~まだ来てませんね~」
次の日。僕は数人のネッ友を呼び、部屋を借りてカレーパーティーを開こうと誘った。
もちろん、ただのネッ友じゃない。数週間前から伊豆奈に何らかの形で関わった危険物質どもだ。
「あ、あれそうじゃない?」
そんなこともつゆ知らず。彼らは今から共に墓場へと向かう仲間に向けて手を振るのだった。
「侑斗?どうした…?」
俺らが入った時には、既にすべてが終わった後だった。きっとうまくやったのだろう。すでに事は片付いたらしく、彼は虚無に包まれた空間で一人いた。
「……」
「どうしたんだよ。ことが終わったら呼ぶって…」
「…どうしたんだろう、僕」
急に、そう呟いた。
「…一体いつから、僕はこんな……」
「侑斗……」
彼は、殺人鬼だ。
これは紛いもない事実だし、彼に同情する気もさらさらない。
だけど、ただ。彼も彼で、自身の正義を信じてふるっているだけだ。その姿に同情こそしないものの、少しの悲壮感を覚えた。
「……さ、それ運んで。僕はもう帰るよ」
「あ、はい…」
悲しそうな背中で帰る背中を見て、何か彼の中で変わったのだろうと、感じた。
色々なものが脳裏を駆け巡る。
気が狂うほどの嫉妬。今までの腹いせや自衛。それに対しての罪の意識。
前者二つは今までも脳にはあった。ただ、後者である一つ。たった一つの意識が、気を狂わしていた。
今まで感じなかった感情。その感情の大きさが、俺の要領から大きくオーバーしてしまった。
どうして今になってだろうか。薄々は気が付いていたけれども、それを僕は気が付かないように、振り払った。
久々に、なんにもなしに伊豆奈にあってみよう。理解されなくても、慰めてくれるかもしれない。
そんな淡い期待を抱きながら、僕は伊豆奈に会いに行ってみることにした。
少し、気分は楽になった。




