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赤が飛ばない日

「はじめ!解答用紙に名前を書いてから始めてください」


その声と共に、辺りからカツカツと紙にシャーペンで文字を書く音が辺りから鳴り響いた。

僕もまた、その音を鳴らしていた。


今日は二日目の3時間目。テスト内容は国語だった。


「問1 登場人物の気持ちに当てはまるものを選びなさい…んなもん分かるかよ…」


と誰にも聞こえない小さな声でそう愚痴った。

テストなんてやりたくない。なんて思いながらもきっちりとやる辺り、まだ僕には常人の精神が残っているんだなと思うと、少し背筋が凍った。


「…伊豆奈、大丈夫かな…」


試験中は流石にどんな手段を取っても伊豆奈を見守ることは出来ないから、僕はただひたすらヒトになびかないことを祈った。



「んん~…っはあ!やっと全部終わったぁ~」

「お疲れ伊豆奈。帰りどっか寄る?」

「うん!ファミレスに寄ろ~」


テストも終わり、見知らぬ男と出てこなかったことにひとまず安堵し、僕らはファミレスに向かうことにした。


「で?侑斗くんはテストどうだったの?」

「…まあ、ぼちぼちかな」


本当は少し感触がよくなかったことは隠した。


「いいなぁ…私はちょっとダメだった」

「まあまあ、あのことは多分学校にも知らされてると思うし。先生も甘く見てくれると思うよ」

「そう…かなぁ…」


と言いながらシュンとなる伊豆奈。少し、やりすぎてしまっただろうかとも思ってしまった。


「にしても、春はまだまだなのに暑いねぇ。汗かいてきちゃったや」

「あんまり気にしなくてもいいと思うけど」

「やだよ!汗臭くなっちゃう」


そう言いながらもじもじとする伊豆奈は少し幼稚っぽさがあってとてもよかった。


「…僕はあまり気にしないから」

「そお?でも案外女の子もきついよ。汗の臭いは」


そんなもの毎日嗅いでるから心配ない、という言葉は寸でで飲み込んだ。


「…あ、そうだ。どうする?注文」

「パンケーキ!パフェ!ジュ―シュ(ジュース)!」


他の人ならきっとかなりきついその返答も伊豆奈が言えば何でも可愛いと思えた。


「はいはい…頼むから僕の財布を空にはしないでよ」

「は~い、気を付けますぅ~」


その後雑談を交わしながら僕らはファミレスに到着した。



「すみませ~ん。このフレンチパンケーキっていうやつのイチゴ味と、ハニーハニーパフェと、あとチェリージュースで。侑斗くんは?」

「じゃあまあ…ハニーレモンで」


注文も終わり、店員が帰ったところで伊豆奈が質問を吹っかけてきた。


「侑斗くん、何も食べなくていいの?」

「伊豆奈が結構頼んだし、食べれなかったら僕が食べるよ」

「ふっふっふっ。今日はお腹ペコペコだから絶対に残さないもんね~!」


「はいはい」と言いながらもこう言って残さなかった試しがないことを頭に刻み付けた。


「はぁ~…今回一桁に入れるかな~」

「まあ、多少忘れてても伊豆奈なら大丈夫だと思うよ」

「そう言っても、みんな今回は簡単だって言ってたしさ~…」

「大抵、そう言ってるテスト程あんまり点数伸びないから」

「まあそうなんだけどねぇ~」


いつの間にか運ばれていたチェリージュースを啜りながら伊豆奈は愚痴った。

僕も一緒に運ばれてきたハニーレモンを一口飲んだ。酸っぱさが少し弱い気もした。


「ん、侑斗くんのもおいしそー。一口頂戴?」

「…本当に一口?」


はにゃ?みたいな顔をしたのがたまらなく可愛かったから何も言わずにグラスを差し出した。


「ん~!さっぱりしてるね~」


あんまり減ってないことにほっとし、もう一口飲んだ。さっきより甘かった。


「侑斗くんもどうぞ!」

「ありがと。じゃあお言葉に甘えて」


伊豆奈が差し出したチェリージュースを一口貰った。


「えへへ。美味しいでしょ?」

「うん。とっても」


めちゃくちゃ甘かった。ただ、それはただサクランボの甘さだけじゃなかった気がする。


「お待たせしました。フレンチパンケーキのイチゴとハニーハニーパフェです。ごゆっくりどうぞ」

「わあ…」


伊豆奈の可愛い顔程のパンケーキとすごい高さのパフェを見て、真っ先に不安に押しつぶされた驚きを漏らした。


「…一応聞くよ。食べきれる?」

「…手伝ってください…」



「…お腹…いっぱい…もう、無理…」

「はあ…はあ…すごい量…だったな…」


まさかの二人係でぎりぎり食い切ったところで、少しだけ休憩していた。


「…あ、明日暇になった」

「じゃあ、どっか出かける?」


提案すると、伊豆奈は少し考えてから、いい案を思いついたらしくハッとしこっちを向いた。



「私、侑斗くんの家でおうちデートしたい!」

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