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コント#2『自動車教習所』

作者: これ

ショートバージョンはこちら↓

「コント#1.5『自動車教習所』」

https://ncode.syosetu.com/n0588gx/



 とある自動車教習所。椅子に座ったツッコミが、名前を呼ばれるのを待っている。


ツッコミ「ああ、今日は高速教習か。不安だけど、本免を取るためにはがんばんなきゃな」


 そこに赤い服を着たボケがやってくる。


ボケ「○○(ツッコミ)さんですか。本日高速教習を受け持ちます△△(ボケ)と申します」


ツッコミ「はい。よろしくお願いします」


ボケ「早速なんですけど、今までに乗ったことはありますか?」


ツッコミ「ないですよ。まだ仮免なんですから」


ボケ「いえ、高速じゃなくて、調子に」


ツッコミ「そっちもないですよ。ちゃんと地に足つけて生きてますから」


ボケ「今日の高速教習なんですけど、今日はあいにく中央道が渋滞していまして」


ツッコミ「ああ、確かに今日は祝日ですもんね」


ボケ「はい。文春の日で」


ツッコミ「春分の日ですよね。それじゃあただの発売日じゃないですか」


ボケ「なので、今日は高速教習ができないんですよ。申し訳ないんですけど……」


ツッコミ「今日の教習はなしってことですか」


ボケ「いえ、深夜二時からです」


ツッコミ「夜行バスですか。そんな時間に教習したら、寝ちゃいますよ」


ボケ「まあ寝たら最後。二度と目を覚ますことはないですけどね」


 笑うボケ。


ツッコミ「なんで笑ってるんですか。冗談じゃないですよ」


ボケ「まあ、猥談はこれくらいにしておいて」


ツッコミ「どこがやらしかったんですか」


ボケ「今日は中央道に乗れないので、代わりにシミュレーターを使って教習をしていただきます」


ツッコミ「そんなのがあるんですか」


ボケ「はい。でもシミュレーターって言っても、そんな大層なものじゃないですよ。VARとかありませんし」


ツッコミ「VRですよね。何を確認するんですか」


ボケ「〇〇さんが調子に乗ってないかどうかです」


ツッコミ「だから乗りませんって。ほら、早く行きましょうよ」


ボケ「分かりました。では、あと一〇時間ほどお待ちいただけますか」


ツッコミ「長すぎるでしょ。なんで今呼んだんですか」


 第三教習室に入室する二人。中には座席とハンドルが備え付けられたシミュレータがあった。


ツッコミ「思ってたよりも本格的ですね。こう言っちゃなんですけど、アーケードゲームみたいなものを想像してました」


ボケ「でも、このシミュレーター、実際にアーケードゲームを作っている会社が製作したんですよ。サガが」


ツッコミ「九州は関係ないですよね」


ボケ「スタートは調布なんですけど、今日はどちらまで行かれますか?」


ツッコミ「え? 選べるんですか?」


ボケ「はい、永福、幡ヶ谷、末代の三つですけど」


ツッコミ「初台ですよね。僕、祟られるんですか。一番近い永福でお願いします」


ボケ「分かりました。住民の目が半開きの街、永福ですね。どうぞお座りください」


ツッコミ「そんなことはないと思いますけど、よろしくお願いします」


 椅子に座るツッコミ。シートベルトを締め、ボケからの指示を待つ。


ボケ「では、通常と同じようにハンドブレーキを下ろして、ギアをドライブに入れてください」


 ツッコミは言われたとおりにするが、ボケから注意が飛んでくる。


ツッコミ「ちょっと待ってください。今どういう順番でやりました?」


ボケ「普通にハンドブレーキ、ギアの順ですけど」


ツッコミ「あー、その前に『よーし! 今日も安全運転でがんばるぞー!』って言わないと」


ボケ「それ、わざわざ言う必要あります?」


ツッコミ「いや、自分に暗示をかける意味でも。こう手を突き上げながらお願いします」


 しぶしぶ納得するツッコミ。シミュレーターを元の状態に戻して、再び座るところからやり直す。


ボケ「よーし! 今日も安全運転でがんばるぞー!」


 言われた通りに手を上げながら、口にするツッコミ。しかし、ボケは小ばかにしたように笑う。


ツッコミ「なんで笑うんですか」


ボケ「いや、別にやんなくてもいいのになって」


ツッコミ「じゃあ、なんでやらせたんですか。もう始めますからね」


 再び、椅子に座って発進の準備をするツッコミ。ボケが「じゃあ、まずは高速に乗るところから始めましょうか」と言ったので、ゆっくりとアクセルを踏んで出発する。


ボケ「では、今回はECCレーンから高速に乗りましょうか。注意事項覚えてますか?」


ツッコミ「英語教室なのは置いとくとして、時速20キロ以下で通行するんですよね」


ボケ「そうです。付き合って三年経ってもキスすらできないカップルのように、ゆっくりといきましょう」


ツッコミ「例えはともかく、分かりました」


 習った通りにETCを通過するツッコミ。ボケはすかさず拍手をする。


ボケ「偉い! よっ、世界一! 天才!」


ツッコミ「そんなに褒めます? まだ合流もしてないのに」


ボケ「そうですね。思ってもないことを言ってしまいました」


ツッコミ「いや、思っててはくださいよ」


 画面は合流車線に変わっていく。


ボケ「アクセルを思いっきり踏んで加速して! 嫌いな奴の顔を踏んづけるように!」


ツッコミ「いないですけど、はい!」


ボケ「右ウィンカー出して! 5回点滅!」


ツッコミ「してる時間ないですけど、はい!」


ボケ「前の白い車にスピード合わせましょう! あのボンボンが運転してそうな車!」


ツッコミ「違うと思いますけど、はい!」


ボケ「ほら、ハンドルを右に切って! 合! 流!」


 ツッコミはなんとか合流に成功する。


ボケ「よっ、生まれながらの走り屋! サラブレッド! 千年に一人の逸材!」


ツッコミ「褒めすぎでかえって嬉しくないけど、ありがとうございます」


ボケ「いや、○○さん本当に筋が良いですよ。ここに来る前、どこかで運転してました?」


ツッコミ「してたら捕まりますよね」


ボケ「それはメメント運転ってことですか?」


ツッコミ「なんで死を想うんですか。無免許運転でしょ。いや、してないですけど」


ボケ「ところで、〇〇さんはどうして免許を取ろうと思ったんですか? やっぱり峠を攻めるためですか?」


ツッコミ「命知らずですか。違いますよ。なにか証明になるものがほしいなって思ったからです」


ボケ「確かに免許があると、便利ですもんね。パチンコ屋の会員カードを作るときとか」


ツッコミ「それもありますけど、もっとちゃんとした使い方しますよ」


ボケ「納豆をかき混ぜるときに使ったりとか?」


ツッコミ「そんな物理的に使う人います?」


ボケ「僕の友達に、免許でパンにバターを塗る人いますけど」


ツッコミ「狂ってますね。バターナイフ、使った方がいいんじゃないですか」


 画面は中央道を映している。相変わらず白い車が前にいる。


ボケ「あのボンボンが運転してる車、当てつけみたいに遅いですね。ちょっと追い越ししてみましょうか」


ツッコミ「教習車がそんなことしていいんですか?」


ボケ「実際の高速では、追い越しなんて当たり前ですよ。車線変更の練習にもなりますし、教習だからこそやるべきです」


ツッコミ「言われてみればそうですね」


ボケ「では、あのノロマ野郎を追い越しましょう。後ろから車が来ていないことを確認して、小馬鹿にするように右ウィンカーを出してください」


ツッコミ「口悪いですね」


 言われた通りに右ウィンカーを出すツッコミ。追い越し車線に入り、アクセルを踏み込む。


ボケ「そして、追い越す瞬間、にっこりと中指を!」


ツッコミ「立てませんよ。あおり運転の極致じゃないですか」


 ツッコミは白い車を追い越す。


ボケ「そうしたら、十分な距離を取るまで、引き続き追い越し車線を走ってから、戻りましょう」


ツッコミ「時速×1メートルが目安ですよね」


ボケ「はい。今は時速100キロなので、100メートルですね。大体、リンゴ3個分です」


ツッコミ「可愛くないですよ」


ボケ「キティちゃんって着ぐるみの時でも、身長はリンゴ3個分って言ってますよね。そんな大きいリンゴこの世にあります?」


ツッコミ「それはそうですけど、今は関係ないじゃないですか」


 ツッコミは車線を変更して、走行車線に戻る。「スピードを緩めてください」とボケの指示に従う。


ツッコミ「それじゃ、ハザードランプを三回点滅させましょうか」


 疑問に思いながらも、言う通りにするツッコミ。三回点滅したのを確認して、ハザードランプを消す。


ツッコミ「今のは何のサインですか?」


ボケ「『うんこ』です」


ツッコミ「いや、小学生ですか。めっちゃ失礼じゃないですか」


ボケ「『ちんこ』の方がよかったですか?」


ツッコミ「そういう問題じゃないでしょ。あおり倒してるじゃないですか」


ボケ「看板が見えてきましたよ。エイブルまであと500メートルです」


ツッコミ「永福ですよね。僕、部屋探してないですよ」


ボケ「ほら、出口が見えてきました。左ウィンカーを出して、出口車線に乗ってください」


ツッコミ「スピードは徐々に緩めていいんですよね」


ボケ「いえ、なるべくそのままでライトオンです」


ツッコミ「これから僕、服でも買うんですか? ライドオンですよね。ていうかもう乗っちゃってますけど」


ボケ「では、そのまま少しずつ減速してください。プールの後の数学の授業を思い出して」


ツッコミ「寝るやつじゃないですか」


 ツッコミはアクセルから足を離して、減速させる。


ボケ「じゃあ、UCCをさっきと同じ要領で通過してください」


ツッコミ「それ、コーヒーですよね」


 ETCレーンを通過したツッコミは、そのまま少し道路を走らせた。少し道幅が広くなったところで、ボケが「じゃあ、そこの路肩に車を停めてください」と言ったので、その通りにする。


ボケ「以上で、高速教習を終わります。どうでしたか? シミュレーターを使っての教習でしたけど」


ツッコミ「気になるところはたくさんあったんですけど、でもシミュレーターとはいえ、高速を疑似体験できたので良かったです」


ボケ「免許取ってからも、高速走れそうですか?」


ツッコミ「はい。何回か走ってみたいです」


ボケ「○○さんの運転も安全で、的確でしたから自信持ってください」


ツッコミ「ありがとうございます。本免試験がんばります」


 ツッコミがそう言うと、ボケは指笛を吹いて、胸のポケットからイエローカードを取り出した。


ツッコミ「え、何でですか? 僕、間違ったことしてないですよね」


ボケ「これは警告です。シミュレーターぐらいで、調子に乗っている○○さんへの」


ツッコミ「そっちがおだててきたんじゃないですか」


ボケ「どうします? まだ時間はあるけれど、もう一度やりますか?」


ツッコミ「いや、もういいですよ」



どうもありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 笑いました。面白かったです。 ボケとツッコミの動きが想像しやすかったです。 脳内に自然にサンドイッチマンが出てきて、やってました。 これを本当に彼等がやってくれたらいいのにな。
[良い点] 先に#1.5を拝読したのですが、こちらも大変面白かったです! ロングバージョン拝読できてお得感があって嬉しかったです! 免許の使い方のところ好きです! 笑わせてくださってありがとうございま…
[良い点] どちらのバージョンも面白かったです。ボケのワードセンスもツッコミの切れも秀逸でした。こんな教習があったら行ってみたいですね。楽しい作品を有難うございました!
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