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紡ぎ合う世界の救世主  作者: 綿時 緋沙
聖騎士召喚編
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第41話 新たな生活拠点(1)


 ふかふかのベッドで目を覚ましたレスティオは天蓋を確認して帰ってきたのかと理解した。

 ベッドを出て時計を見ると六時。

 体内時計は正常に動いているようだが今日は何日だろうと考えながら、柔軟と湯浴みを済ませた。


「ぁ、おはようございます。申し訳ございません。今日は少し早くきてしまいました」


 浴室を出るとルカリオがベッドを整えていた。

 いつもルカリオが来るのは七時頃だが、今日は三十分近く早い。


「構わないが、今日は何日だ?」

「はい。本日は四月三十日にございます。昨日の宵の鐘の前にフランドール隊が帰還致しましたので、お休みになられていたのは一日程度と思います」

「そうか。その程度で済んだなら良かった」


 ルカリオにお茶を頼んでレスティオは書き物の準備を始める。


「お体の方は大丈夫ですか?魔力を相当消耗されたので数日寝込むかもしれないと伺っておりましたが」

「あぁ、問題ないよ。そういう話があったなら、各所に俺が起きたことを連絡しないといけないんじゃないか?朝食の準備はその後でいいから今から連絡してくるといい」

「かしこまりました」


 お茶を受け取り、ルカリオを送り出すと手記にドナでの遠征の記録を書き込み始めた。

 魔物やドナの産業事情など特筆すべき点はいくつもある。

 特に木という一見魔物と判断できない魔物も存在しているという事実を思い返し、ハイラックはなにか資料を持っているのだろうかと手を止めて思案する。


「レスティオ様、朝食の準備が出来ました」

「あぁ、有難う」

「ドナへの遠征の報告書は既にフランドール隊長から提出されたようです。文官が写しを用意しているとのことですので、後ほどお持ち致します」

「頼む。後、諸々打合せの予定があるだろうが、ハイラックに魔物学について聞きたいことがあるんだ。騎士団の調整はエルリックに言えばいいかな?」

「私の方で調整出来るか動いてみます」


 やる気のルカリオに頷いて、朝食を食べている間は席を外すことを許した。

 久しぶりの味のない食事にこれは補給だと言い聞かせて、喉に流し込む。

 食事が終わる頃に戻って来たルカリオは報告書の写しと手帳を手にしていた。


「ぇっと、ジンガーグ隊は明日から大陸会議場への行路視察に向かう予定とのことで、取り急ぎ調整の上連絡するとのことです」

「あぁ、それなら、俺は急ぐつもりはないから、ハイラックの迷惑にならない範囲で頼むよ」

「ぁ、はい。伝えます」


 言ったところで既に動き出しているのだから調整してしまうのだろうと申し訳なくなる。

 報告書の写しをパラパラと捲ると、魔物について記述はあったがレスティオの認識の域を超えてはいなかった。

 その代わり、別途魔物に関しては調査の上報告書を提出すると記述されていた。

 ハイラックが動くのかフランドール隊の誰かが魔物学を調査するのかどちらだろうと思いつつ、メモを取り終えたルカリオに話の続きを促す。

 遠征時の荷物の整理については、ルカリオの方で整理が済んでいるという連絡の後、各所から申し込まれている面会依頼を並べられる。


「今回は長い遠征でしたから、今日明日くらいはお休みになられてもよろしいかとは思います」

「んー、マルクとは家の話もあるから、今日でもいいよ。その方が、後は自宅でゆっくり過ごせるだろうしな」

「かしこまりました」


 出て行くルカリオを見送って、手記の続きを書き進める。

 書き終えて報告書をじっくり読んでいる途中でルカリオがマルクと共に入って来た。

 気づけば朝の鐘の時刻は過ぎている。


「おはようございます、レスティオ様。お時間頂きまして有難うございます」

「座ってくれ。ルカリオ、お茶を頼む」


 まず初めに今日付でダイナ隊の処遇については不問という通達を騎士団本部へ発行したという報告と共に議会での決議にあたっての経緯が説明された。

 その次に、邸宅ではなく大陸会議へと話題は移った。

 大陸各国の首脳陣が年に2回集まって開催される会議を大陸会議と呼称し、厄災に関する情報交換及び国交に関する取り決めなどが行われる。

 大陸会議において召喚の儀の成否を報告し、聖の魔術を扱える者を有していると認められた国は国名に聖を冠することになる。


「現状の課題は聖騎士という存在の承認を得ることです。当日はレスティオ様にも一言頂くことになりますから、その文言は共に考えさせてください」


 女性ではなく男である、ということをいかに認めさせるか文官達が必死に考えているのでそれに合わせてくれ。という、マルクの懇願にレスティオは反発する理由もないので頷いた。


「大陸会議が終われば戴冠式だったか」

「戴冠式は国内に向けたお披露目の場となりますから、盛大に帝都内をパレードしていただく予定です。日を改めて、衣装の試着もお願いいたしますね」


 面倒そうだなと思ってしまったが立場上致し方ないと諦めて頷く。

 大陸会議に参加すると思われる各国の要人名簿を差し出されて軽く目を通す。


「今回の大陸会議には皇帝陛下とハイリ皇妃陛下、それから、皇弟殿下と皇弟妃殿下も同行致しますのでご挨拶の場を道中、あるいは大陸会議場にて設けさせていただければと考えております」

「皇弟、か。どんな人物なんだ?」


 ユリウスには兄弟が数人おり、現在国にいるのは弟と妹が一人ずつ。

 皇弟レナルド・オリヴィエールは東の大都市ブルムヴェールを拠点に東部地域の統治を担い、皇妹セルヴィア・オリヴィエールは西の大都市フォンヴェールを拠点に西部地域の統治を担っている。

 二人とも民からの信頼は厚く、レナルドはユリウスを慕い交流が深いが、セルヴィアはフォンヴェールが西の奥地にあることもあって、あまり帝都や大陸会議に顔を出すことはない。


「レナルド殿下はレスティオ様にお会いするのを楽しみにしておられましたから、大陸会議の夜にはよろしければ酒席もいかがでしょう」

「それは構わないが、酒席の料理はどうにも口に合わないから食べる気がないという点だけ理解を頼む」


 出された食事に手をつけないことを不敬と言われては面倒だ。

 マルクは少し驚きつつも承諾した。

 その時、話の切れ目を狙ったかのようにドアがノックされ、エルリックが入室してきた。


「失礼致します。大陸会議の話をされているとのことで、同席させて頂きたく参りました」

「それは構わないが、今朝頼んだハイラックの方は調整中か?」


 大陸会議の行路視察の準備で忙しいだろ?と首をかしげるとエルリックは首を横に振った。


「現在フランドール隊の遠征にて報告された魔物について調査を行なっているため、行路視察の編成からハイラック・トレリアンを除外するとのことです。ですので、調査結果がまとまり次第、フランドール隊やレスティオ様を交え、魔物に関する報告内容を議論したいとドレイドより連絡がありました」

「あぁ、騎士団の方でそのような動きになっているということであれば問題ない」


 無理に引き止めるつもりはなかったが、騎士団として魔物学を意識し始めたということだろうと理解する。

 そのまま着席したエルリックをみて、マルクに話の続きを促した。


「今のお話にもありましたが、明日よりジンガーグ隊が行路視察に向かい、道中の安全を確認します。そこで魔物の出現が確認された場合、状況次第ではレスティオ様には先行して討伐に赴いて頂くことを想定しています」


 皇族や文官たちは非戦闘員だ。

 それらを連れて討伐に出るよりは、ある程度安全を確保した道を進んできてもらった方が討伐部隊としても気が楽だと承諾する。

 魔物が確認されなければ、皇族らと共に移動することになるというが、レスティオにとってはそちらの方が気が重い。


「というわけで、その際の部隊編成も考慮して大陸会議中のレスティオ様の側近を決めたいのですが、こちらが候補者になります」


 文官、側仕え、護衛とそれぞれごとの候補者の資料が差し出され、一気に気が重たくなった。


「大陸会議中の、ということはあくまで一時的なものと考えていいんだな」

「専属として取り立てたい者が居りましたら仰って頂ければ手続き致します」

「側仕えはルカリオで間に合ってる」

「申し訳ございません。それは非常に有難いお言葉なのですが、大陸会議のような場所に同行させるには後五年、十年は早いかと」


 大陸会議中は各国との会食や酒席が多く設けられるので、そのような場で的確に動けなければ務まらない。

 そう言われるとレスティオには側仕えも文官も誰が良いかわからないので、人選はマルクに委ねることにした。

 護衛については見知った顔の者をひとまず抜粋する。

 護衛ならば道中に話を聞いて過ごすこともできるだろうとハイラックやユハニを候補に出す。


「基本的には各部隊の戦力不足によって死傷者が出ないように編成してもらえればいいんだが、ひとまず欲を言うならこれかな?」

「なるほど。では、レスティオ様の要望を踏まえて騎士団の者と調整致しましょう」

「ちなみに、ロゼアンが候補にいないのは抜けるとフランドール隊の戦力不足が著しいからか?」

「え?あぁ、ロゼアンについてはダイナ隊の一件がありましたので、一旦避けておりました。ロゼアンも候補に加えますか?」

「まぁ、そうだな」


 エルリックの笑顔の裏に違和感を感じながら頷いた。

 側近の選定が済み次第改めて時間を設けるということで話はまとまり、エルリックは退室した。


「それでは、これからレスティオ様の邸宅の方へ移動し、発注した品の確認など行わせていただければと思いますが、お時間はよろしいですか?」

「マルクの方がいいならそれで。準備に三十分程貰ってもいいか?」

「もちろんでございます。それではまた後ほどお迎えに上がりますので、私は一度失礼致します」


 出て行くマルクを見送るとレスティオは早速ルカリオに土産物を出してもらい、外出の準備を始めた。

 調度品の確認を終えて家を貰い受けたら、お土産を持って城下町に出かけようと予定を立てて、鞄に城下町用の服も収めつつ、ルカリオに財布の準備も頼む。


「レスティオ様、お戻りは何時頃になりましょう?」

「昼食と夕食は家で済ませて来るよ。そうだ、ロデリオから酒席の誘いがあっただろ?あれをいつにするかな」

「ロデリオ様はレスティオ様の都合が良ければ今晩でも明日の晩でもと仰っていますからね。ぁ、お土産のオルドナやエルドナを持参されるおつもりなら、いっそのことお招きするのも良いと思いますよ」


 ルカリオの提案に野営地でキルアと話したのを思い出す。


「俺が招待する分にはロデリオの護衛たちを席に座らせるのも問題ないかな」

「え?あぁ、慣例で言えば従者はあくまで従者なので同席はしないものですが、レスティオ様がお望みなら同席も可能かと思います」


 それならばとレスティオは夜には戻ってくることを約束して調整をルカリオに任せた。



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