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紡ぎ合う世界の救世主  作者: 綿時 緋沙
聖騎士召喚編
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第15話 皇子の奔走(1)


 客室に移ることは想定されていたようで、検証が終わる頃合いに、準備が出来た旨が伝えられた。

 ユリウスに報告に向かうモルーナを見送り、すぐに使う勉強道具を手に客室へと移動する。

 他の物については、アッシュとの講義中に、ルカリオに片付けてもらえばいい。

 早速、講義を進めてもらおうとアッシュを客室に招くと、その後ろにはロデリオがついていた。


「そちらは?」

「ご存知かと思いますが、第一皇子のロデリオ殿下です」

「少々、二人で話がしたい」


 厳しい表情でいうロデリオにレスティオは肩を落とす。


「俺はアッシュと話がしたいんだが」

「皇族である俺の方が優先に決まっているだろう」


 レスティオはむっとしつつアッシュを見た。

 アッシュは心得ている様子で一歩下がり苦笑する。

 板挟みで困っているような表情に引き止めるのも申し訳ないとため息をつく。


「折角来てもらったのに待たせてばかりですまない。魔物討伐を通して魔術について改めて話がしたいとは思っていたんだが、こちらの用件が済むまで待ってもらえるか?」

「レスティオ様の魔術講義が今の私の優先業務ですので、どうかお気になさらないでください」

「すまない。じゃあ、ロデリオ、さっさと座れ」

「お前、扱いを間違っていないか?」

「違っていない。俺はお前に敬意を示す必要性を感じていない。陛下が俺に頭を下げた時点で皇族であろうとそういう認識で問題ないと思っているが?」


 皇族には少しは敬意を払おうとも思ったが、昨日の夕食の席での会話や今朝のクラディナの一件を踏まえてそんな気は失せた。

 ことも無げに言うレスティオにロデリオは舌打ちし、顎でアッシュに退室を促すと椅子に座った。

 ルカリオにはお茶を、レスティオには向かいの席に着くように指示する。


「お前とは一度ちゃんと話しておきたい。第一皇子として」

「魔術講義より有意義であることを願う」


 レスティオが座ると、ロデリオは軽く咳払いをして姿勢を正した。


「お前が聖騎士として皇族より立場が上だというのは否定するつもりはない。国民感情としても、今はお前に縋るよりないからな」


 真っ先にどんな苦言を呈されるかと思いきや、立場関係を認められて拍子抜けする。

 その拍子抜けした様子を見て、ロデリオは表情を厳しくした。


「しかし、お前はこの国を我が物にしたい、などと思っているのか?」

「なんでそうなる。むしろどうでもいい」

「なら、我々皇族とはせめて対等であるように振る舞うべきだ」


 ロデリオの言葉にふむと考える。

 聖騎士や聖女というのは、厄災の時のみ召喚され重宝されるイレギュラーな権力者だ。

 今あるヒエラルキーに割り込み、新たな地位を築くのは、現在の統治を揺るがしかねない。


「聖騎士を皇帝の座へと目論む輩が出てきても困るか。そうならないようにするためには、皇族とはあくまで友好的に対等に、あわよくば皇族に引き入れれば良い、と」

「クラディナの件は置いておけ。アレは先走りが過ぎた」


 そこはそういうことではないと頭を掻くロデリオにどのように考えを伝えるべきか考えているような迷いを感じて、その顔を覗き込む。


「第二皇妃の子としては、いい気味、か?」

「……否定はしない」

「ならばそれはそれとしておこう。一方的に婚約だと押し切られることがないならそれでいい」

「そうか。今朝も愚妹が迷惑をかけたようですまなかったな」


 愚妹という言葉には特に感情がこもっていた。

 ロデリオは仕切り直しというようにティーカップに口をつけて一息ついた。


「正直、俺は今だに聖騎士という存在が信じられん。これまで女しか召喚されなかったのに、何故急に男が召喚されてきたのか」

「それはこっちのセリフだ。お前たちが行った儀式に問題があったのか、あるいは、この世界そのものになんらかの異変が起きているか」


 変異はなんのきっかけもなく起こることではない。

 なんでもないように見えていたことでも後々ストーリーを追っていけば真実が見えてくる。

 そんな話をいくつもゲームで見てきた。


「なるほど。我々の儀式は前回まで許可していた遺体の一部切断を全面的に禁止し、毛髪以外欠損無く生贄に捧げるようにした。それはラビ王国から教わった儀式の方法を採用したまでで、ラビ王国は女性を召喚したのだから理由はそこではないだろう。むしろ、昔に比べて厄災の頻度も深刻さも増していているのがなにか起因しているのかもしれない、か」

「いや、頻度も深刻さも増していること自体にまず疑問を呈すべきだろう」


 指摘されたロデリオは咳払いして、厄災というものが何故起こるのかすらわかっていないのだから仕方ないだろうと弁明する。

 それがわかっていれば戦略は世界的に変わってくるが、どこの国もその結論を導き出せていない。


「ともすれば、それこそお前は創世神スヴァーンによって、この状況を打破すべく導かれたのかもしれない」


 結論の出ない話を神の名で終わらせようとするロデリオにそれはないだろうと内心呟く。

 創世神、つまりこの世界の神なら、むしろ厄災はスヴァーンが仕組んだことではないのかと天井を仰ぐ。

 スヴァーンが味方か敵ならば、第三者が介在しているのだろうが、それとて結論の出ない話だ。

 レスティオはため息をついて考えるのをやめた。


「まぁ、聖女や聖騎士が神に遣わされた者だというなら、皇族と対等にというのはおこがましい話だとはわかってるがな」

「、あぁ、そういえばそんな話をしていたんだったな」


 皇族としての立場を守りたい理屈も感情も理解出来る。


「ユリウス陛下に言った通り、敵意には相応の敵意で返すが、誠意には誠意で応える。皇族の権力闘争に関わる気は無いが、利用したいならそれなりの対応を要求するだけのことだ」

「お前のいうそれなりがなにを示すのかは怖いものだがな。まぁ、理解を得られたと思っておく」

「以上でいいか?」

「本題はこれからだ」


 早々に切り上げようとするレスティオに対して、ロデリオは苛立ち気味に引き留めた。

 本題は、立場関係の確認ではなく、互いの認識のすり合わせ。

 昨日の夕食の席での会話に引っかかりを覚えていたのはレスティオだけではなかった。

 夕食の後、ロデリオは冷静になった上で、クラディナの騒動も踏まえてきちんと話をしようと考えた。


「まず、前提としてだ。少し長くなるかもしれないが、俺たち皇族がどう厄災に向き合ってきたか、聖騎士には知っておいてほしい。事の始まりは何十年も前にエディンバラ大陸に厄災の予言がされたところから始まる」


 以前にマルクから語られた話は大まかな概要だけだったが、詳細に話しだしたロデリオに紙とペンを取り出して耳を傾けた。




 

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