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紡ぎ合う世界の救世主  作者: 綿時 緋沙
聖騎士召喚編
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第13話 皇族との会食(2)



(お祖父様がいたら、感情を押さえ込んでいることすら見せてはならないと叱責されていただろうな)


 冷静な判断をする為には、余計な感情は殺さなければならない。

 敵地とも言える慣れない土地にいるのだから、付け入る隙を与えてはならない。

 自分の未熟さを実感しながら、水のグラスを手にとって一呼吸置き、どうこの場を切り戻そうかと考える。


「そうだ、レスティオ様。お酒はいかがですか?」

「あぁ、頂こうかな」


 ユリウスに勧められて頷くと、給仕がボトルからグラスに澄んだ液体を注いで下がった。

 ほんのり花のような香りがするのを確認して口に含むと、それは白ワインのような味の酒だった。

 作られてそう年月が経っているようには感じないが、久しぶりの酒というだけで美味しく感じられた。

 それを察したのか、リアージュが少し表情を緩めてくすりと笑った。


「レスティオ様はお酒は好まれるのかしら?そちらは、エルドナといって我が国の素材で作ったお酒で、今季一の一品をご用意いたしましたのよ」

「、エルドナ、か。良い酒をわざわざ有難うございます」

「気に入って頂けたなら何よりですわ。もし、お部屋でもお酒を飲まれるのでしたら、いつでも側仕えにお声掛けください。城には他にもお酒を貯蔵しておりますから」

「お気遣い痛み入ります」


 リアージュに感謝を示しつつ、視界の端でクラディナが不満そうな顔をしているのを見つける。

 事前にもらった資料によれば、リアージュは第二皇妃で本来前面に出てくる立場ではない。

 第一皇妃でクラディナの母であるハイリ・オリヴィエールは聖女信仰者で男が召喚されたと聞いてから伏せていて、この場にいないことから察するに未だ立ち直っていない様子。

 そのため、ロデリオの母であるリアージュがこの席に現れたのだ。

 皇妃同士が顔を合わせることはほぼないと言われるほど不仲で、それは自然と子供にも伝播しているという。


「そうだわ、お父様。婚約の儀式は厄災が本格化する前がよろしいですわよね。レスティオ様のお披露目……戴冠式の頃合いでしょうか」


 レスティオの視線に気づき、不満を一瞬で飲み込んで花を散りばめたようなほんわかとした笑顔を見せる。

 クラディナに話を振られたユリウスはわずかに首を傾げたが、思い当たる節があったのかひとつ頷いた。


「いや、そこまではまだ話が進んでいない。まずは、大陸会議に向けて準備をしなければなるまい」

「そうですの?レスティオ様の衣装についてはリアージュ様が取り仕切られていらっしゃるのですよね。私のドレスもデザインを合わせたいので、デザイン画が仕上がりましたら侍女に回していただけるかしら」


 今度はリアージュとロデリオが少し不満そうな顔をする。

 レスティオはそんな彼らの一喜一憂する様子を眺めつつグラスを傾ける。


「レスティオ様。婚姻は一年後くらいでしょうか。共に城で過ごすのならば、冬の大陸会議で婚姻の発表をして、迎年祭で婚姻の儀式というのもよいかと思いますが」

「クラディナ殿下の婚姻に俺は関係ないでしょう。意見を求められても困ります」

「あら、宰相からレスティオ様にお話しされていなかったのですか?召喚された方は皇室または近しい家系の者と縁を結ぶものです。聖女なら兄様が娶ったでしょうけど、聖騎士であるレスティオ様のお相手なら第一皇女たる私が妻となります」


 当然のことのように言うクラディナに、今度はレスティオが不満そうな顔をする番となった。

 なにを言っているのだろうかとグラスを置いて腕を組み考える。


「盛り上がっているところ悪いが、俺にはその必然性も必要性も感じられない。夜の相手にしたって好みでもない女を突然あてがわれても扱いに困る」


 率直な感想にクラディナは一瞬何を言われたかわからない様子できょとんとした。

 しかし、間を置いて理解すると顔を赤くさせて立ち上がった。


「なっ、なにを急におっしゃいますのっ!?第一皇女たる私にそんないかがわしいことっ、恥を知りなさいっ」


 おっとりとした様子は猫を被っていたのか。

 ヒステリックに叫ぶクラディナにレスティオは耳を塞いでため息をつく。


「急に結婚を迫ってきたのはそちらだろう?婚姻関係を結ぶのも夜の相手も結局のところ大差ないだろう」

「なっ!?わ、わ、私はそのようなつもりで言ったのではございません!ただっ……皇女としてっ、うぅっ……気分が悪いので失礼いたしますっ!」


 耳まで赤くして耐えきれなくなった様子で駆け出していったクラディナを側仕えが追っていく。扉が閉まるのを見届けてレスティオはグラスを手に取った。


「よくもまぁ、このような場で女性を辱められるものだな」

「急に婚約だなんだと言われて困惑したのはこちらだ。婚姻とは子供を作る為に行う手続きなのだからなにも違ってはいまい。いくらこの世界に身寄りがないとはいえ、勝手に結婚相手まで決められるとは思わなかったけどな」


 呆れた様子のロデリオに不満を示せばユリウスが青くなる。


「レスティオ様。無礼をお許しください。少々クラディナに誤解があったようですが、婚約の話は一切上がってはおりません。今後各所、各国から申し込まれることと思いますが、レスティオ様の意に添わぬものは当然お断り致します」


 ユリウスがロデリオを視線で窘めながら言うのにレスティオは頷いて応える。

 酒を飲み干して、今日はもう休むと席を立った。

 

 マッサージしてもらうなら会食後が良かったと思いつつ、部屋に戻ると上着を脱いで机に向かった。

 討伐に出ていた分、講義の予定がずれ込んだ上、実践を通してアッシュに確認したいことが出てきた。

 確認事項と考察を全て書き留め終わる頃には日付が変わりかけていて、そろそろ寝るかと体を伸ばす。

 瞼を閉じればまた深い眠りにつけそうだとスカーフを外してクローゼットに戻しておく。

 ふと、廊下の方が少しだけざわめいた気がして振り返った。

 ダイナ隊の時とは少し違った様子に面倒な予感がして、上着を羽織ると明かりを消して音も立てずにバルコニーから部屋を出た。

 疲れているのでさっさと眠りたい。

 しかし、行く宛も無いので仕方なしにレスティオは馬小屋へ行き、ヴィルヘルムに寄り添って眠りについた。



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