オープニング
ツイッター @Yellow_Sleeping
丁寧に時間をかけて作っていきます。
ツイッターのほうでは頻繁に浮上してるので、
フォローお願いします
アメリカのとある田舎町。そのとき、夜中の二時過ぎだった。
不穏な雰囲気を漂う風が、トウモロコシ畑を静かに揺らす音だけが聞こえているはずだった。
「父さん。父さん」
少女が何かに怯えロジャーを必死に起こしているものの、昨日の夜は酒に溺れていたせいか、起きたくてもなかなか起きることができなかった。
それでもなんとかベッドから起き上がったロジャーは、ボヤけた視界の状態で聞いた。
「どうしたエイミー。明日は小学校は休みのはずだ」
彼はボヤけていたと同時に、ボケていた。
目覚まし時計の針ですらしっかり認識できない状態のロジャーは、また寝ようとベッドに横たわった。
エイミーは震えた声で言った。
「パンプキンが死んでるの。誰かに殺されたのよ」
エイミーが何かに怖がっているとようやく気付いたロジャーは、怖い夢から目覚めるかのように起きて、二階の窓からおそるおそる犬小屋のほうを覗いた。
むこうには、愛犬のパンプキンが血を流して横たわっていた。
パンプキンのまなざしは、そこに何かがいるかのような視線を送っているように感じた。
「俺が見てくる。エイミーはそこから動くな」
酔って視界がボヤけていたこともあって、階段は慎重に降りて、階段を降り切ったあと、犯人を見つけたかのようなスピードで家を出た。
その速さのままパンプキンのほうへと駆け付けた。
「パンプキン。しっかりしろ」
痩せ細くなったパンプキンの首元には、二つの深い傷口だったが、そのような状態の中でも関わらずパンプキンは、一定の場所に目を輝かせていた。
その視線の先は、トウモロコシ畑の右にある一本道だった。
ロジャーはとっさに一本道のほうへと向かった。
遠ざかっていく車を目撃したロジャーは、自然とズボンのポケットから携帯を取り出す動きをしたが、ベッドの横に置いていたままだったことに気づいた。
彼は携帯のある二階の寝室に戻る前に、車のナンバーだけは確認したいという一心で、おでこにシワを寄せてじっと見つめた。
それは、車でもなければ、バイクでもなかった。
視界がボヤけていたこともあってよく見えなかったが、ロジャーの視界に小さく映っていたのは、黒いオオカミのような何かだった。
よく見えなかったものの、その姿に唖然としていたロジャーは、後ろから光った何かが来ることに気づかなかった。
しかし、ブレーキを踏んだ音が聴こえたときに彼は後ろの存在に気づいたが、すでに遅かった。
車が何かと衝突する音が聴こえたエイミーは、二階の寝室の窓から覗いた。
そこには、脚から血を流して横たわっているロジャーがいた。
エイミーは先ほどまでの恐怖心を忘れ、とっさにベッドの横にあったロジャーの携帯を手に取った。
「救急車をお願い。父さんが車にハネられたの」
エイミーはパンプキンのことがどうでもよくなり、急いでロジャーのほうへと向かった。
「父さんしっかりして」
エイミーがロジャーのそばに駆け寄るも、まだ小学生であるエイミーは放心状態で、どうすればいいのかわからなくなった。
右脚のひどい出血を両手で抑えているロジャーは歯を食いしばったまま、エイミーに言った。
「救急車を呼んでくれ」
「呼んだよ。ついでにおばあちゃんも」
ロジャーは痛みを抑えながらも、ナンバーを確認するために酔いの覚めた顔を、轢いた車が向かったほうへと向けた。
ナンバーはよく見えなかったものの、白いオンボロトラックであることがわかった。
その白いオンボロトラックは、速さが弱まることなく猛スピードで一本道を駆けていき、ロジャーとエイミーの視界から消えていった。
「ちきしょー。やっちまった」
そのトラックの運転手の老人は、薬物中毒者のような顔つきになるほど酔っていた。
全てが遅く感じる視界の中での飲酒運転の中、一本道をヘビのようにくねくねと走っていると、黒いポンチョを羽織った何かが待っていたかのように仁王立ちしていた。
老人は通り過ぎるという感覚でひき殺そうとしていたが、風が強くなった瞬間、彼は急ブレーキをかけた。
黒いポンチョのフードから、はみ出している長い髪の毛が心の底を駆り立てるようになびいていたのを見て、彼の意識だけはあっという間に元通りになった。
その者にゆっくりとトラックで近づく老人は、近くなるにつれ心拍数が上がっていることに気づいたものの、興奮しているという気持ちにはならなかった。
「そこの美人さん、こんな田舎町でヒッチハイクだなんて珍しいね。乗せていこうか」
その女は返事を返さず、ただ笑みを浮かべていた。
老人も笑みを浮かべてしまったあと、その女は突然人差し指で「こっちに来て」と言わんばかりに老人を誘った。
その人差し指には得体のしれない性的な魅力があり、折り曲げる動作を繰り返しているその人差し指を眺めていた老人は、あっという間にその女の言いなりになってしまった。
その女はゆっくりと、草が多い茂っているところへ歩いていったのと同時に、老人は急いでトラックから降りて、女の後を追った。
「なかなかハードな女だな。誰もいないところへ行こうというのか。最高すぎる。こんな年を取ったジイさまを好きだなんて、お前もなかなかやり手だ」
理想でしかない妄想が現実で起きたと思い込んだ老人は、その女のほうへと向かうために、必死に草の茂みへ抜け出そうと歩いて行った。
進んでいくにつれハエがたくさんたかり、たくさんの何かを踏みつぶそうが、彼は必至に歩いていた。
その瞬間、後ろから足音が聴こえ、老人は待っていたかのように立ち止まった。
「美人さん、ここで始めちゃうっていうのかい。仕方ないな」
老人が服を脱ごうとしたとき、後ろから首へと腕で抱きしめられた。
ようやく始まると思った老人はまず、魅力的な指を見ようと目線を首元に向ける。
しかしその指は黒くて尖った爪だった。
首に痛感な刺激を与えられた老人は快楽と同時に白目を剥き、近くで救急車のサイレンが通り過ぎたあとに倒れこんでしまった。
女は倒れた老人の首を、三日ぶりの肉かのようなまなざしで、女の首に血管が浮き出るほど噛みついていた。
午前三時ごろ、意識がもうろうとしているロジャーと怯えているエイミーを乗せた救急車は、急いで病院に向かっているものの、こんな夜中にも関わらずバカ騒ぎしている薬物くさい若者たちや、歩道の端で新聞紙に包まれている、サンタクロースのような髭を生やしたホームレスたちが死体の山のように寝ていた。
「お父さんしっかり」というエイミーの言葉に対して「ああ」という返事しかできないロジャーの左目から、一粒の涙がこぼれていた。
病院に向かっている途中で、堂々と大麻やタバコを吸っている高校生らしき三人の男未成年たちの横を通り過ぎたとき、一人のリーダーらしき男が声をあげた。
「救急車か。お前ら、ホームレスのじいさんたちをボコしてこい。あの病院にはしっかり仕事をしてもらわないとな。」
三人の未成年は獲物を探すかのような怖い顔になり、ホームレスたちが寝ている駅の近くのベンチへと横列になって向かった。
「警察がロクに動かない時点で、俺らの行動を犯罪として見てない。つまり、俺らがホームレスたちをボコそうが、ましてや殺そうが、犯罪にはならない」
「じゃあレイプしまくっても犯罪じゃねえな」
「レイプは弱いチキン野郎がやることだ」
非常に残酷で歯を噛みしめたくなるような会話をし続ける三人の未成年は、ホームレスの寝床に近づくにつれ、自然と会話がなくなっていった。
「そこの坊主、何か用か」
前にも暴行を受けたであろう、顔や体、手足に青いアザがある数人のホームレスたちが死体のように寝ている中、一人だけ起きていたホームレスがいた。
そのホームレスは錆びたナイフを構えて、寒さだけではなく、緊張感の影響によって手足が震えていた。
三人の未成年は、起きているホームレスを必要以上に殴ったり蹴ったりした。
そのホームレスは痛みに耐えながらも、必死に片手に握っている錆びたナイフを怒り狂ったかのように振った。
一人の未成年の右脚を切りつけ、もうひとりの未成年の額にかすり傷をつけて、さらにもうひとりの未成年の頬を切りつけた直後、向こうから露出多めの高校生の女が必死にこちらのほうへと向かってきた。
「あなたたち大変よ。ひとりの仲間が“影男”にやられたらしい」
悪い若者たちの間で噂になっている影男という人物は、三か月前に現れたばかりで、真夜中に悪者たちに骨折を必ず負わす謎の人物のことだ。
そのような忠告をしてもらったのにも関わらず、薬物の症状でハイになっていたのか、そんなことを真に受けず、ホームレスを殴り続けた。
「もういいわ。あたしは知らないからね」
彼女はその場を走って去っていった。
騒がしく生々しい音によって次々とホームレスたちが起き上がり、三対一の争いが、三対七の争いになっていた。
ひとりのホームレスは金属バットで殴りにかかるも、力負けをしてしまい、金属バットを奪われてしまい、そのホームレスは必至に命乞いをした。
「頼む、どうか殺さないでくれ。頼む」
「イヤだね」
その高校生が金属バットでホームレスたちの頭をかち割ろうとした瞬間、背後から何者かに首を絞められ、投げ飛ばされて地面に右肩を強く打ち付けた際に強い痛みが走った。
三人の未成年と、ホームレスたちの視線には、黒いポンチョを着て顔が隠れている男がいた。
「お前が影男か。クソったれ。」
右肩に強い痛みが走っていながらも、左手で金属バットを持って影男に殴りかかった。
影男は殴られた際に倒れこみ、未成年はゴキブリを見つけたかのような高いテンションでひたすら殴り続けるが、殴っていくにつれ、殴っているという感覚がなくなっていった。
いったいどういうことだと思って金属バットを確認すると、その金属バットは大きくへこんでいた。
影男はあっさりと何事もなかったかのように立ち上がって、金属バットをさっと奪い取り、目の前で金属バットを折り曲げてみせた。
金属バットはU字型に曲がり、それを見た三人の未成年とホームレスたちは恐怖に怯え、影男の前から分散するように逃げ去った。
影男はその後、いつの間にか静寂に包まれた汚い町からぽつんと消えた。