パートナー ①
結婚してから、妹は毎日リューシャのゲルにやってきて寝食をともにしている。
いつの間にか、三人の生活が当たり前のようになりつつあった。
それもあってか、リューシャは結婚生活が思ったよりも普通の日常のように感じていた。
サミはファミリーのみんなともすぐに打ち解けたようで、楽しそうに日常を過ごしている。
リューシャの父ユスフのファミリーには、デフネ、エブラ、アズラ、ネヒルの4人の妻と、マルカリスを含む5人の妹そしてアイシャとリューシャがいる。
姉はたくさんいたが、皆嫁に行っており、残っているのはアイシャだけだ。
ファミリーの成人は、団結してファミリーの役割を果たさなければならない。
リューシャとサミは、成人のひとりとしてファミリーの仕事を手伝う必要がある。
だが、エースファミリーの役割は他のファミリーに比べて危険が大きく、すぐには使い物にならない。
そんなリューシャらのために、父はこれから訓練をしてくれると言っていた。
父に呼ばれたリューシャとサミは、馬に乗って野営地から少し離れた小高い丘に向かっている。
「おーい!」
父はすでに丘の頂上でリューシャたちを待っていた。
「ごめん、父さん。遅くなっちゃった。」
「いや、ちょっと散歩がてら早めに来てたんだ。どうだ、仲良くやってるか?」
「うん、マルカには手を焼いているけど…」
「ハハハッ!そうだな、マルカのこともよろしくな。そうだ、リューシャ。訓練の前にお前にこれをやる。」
父はリューシャに、20センチほどの白い棒を手渡した。
骨製のシャクだ。これに魔力を流し込むことで、魔法の剣を創り出すことができる。
渡されたシャクには、非常に細かい細工が刻まれており、ひと目で見事な代物であることがわかる。
「これはお前が倒した魔獣の骨で作ったシャクだ。魔獣の骨製のシャクはな、切れ味も強度も段違いだ。大事にしろよ!」
「ありがとう。これは、たしかに…すごいね。」
「わぁ!すごい!すごい!はいはい!わたしにも欲しい!」
「サミにもあるぞ!ブレスレットだ。」
「おぉ〜」
「マネオウムの方にも作らせてるところだ、お楽しみに!」
「やたー!」
ん?なんかサミに甘くないか?
この親父、なんか見てられないな…
「まぁ、倒し方は素人だがな。あのやり方じゃ10回に1回倒せるかどうかってとこだろう。俺たちは生きるか死ぬかをやってるんだ。10回に10回生き残る方法を考えろ。まずは逃げること、次に追い払うこと、倒すことは基本的に考えなくていい。狩りをやってるんじゃないんだ。」
「ごめんなさい、あの時、わたしのせいで…しょぼん。」
「いやいや、サミのことを攻めているんじゃない。リューシャに戦い方を教えていなかった俺も悪い。まぁ、二人が無事で本当に良かった。」
父は言った。
「それで、どうすればいいかだが。まず、ゲラダの男は魔力は多いがあまり器用じゃない。だから基本は前線に出ずに支援に回る。魔力供給と付与魔法を覚えろ。剣技は敵を倒すためではなく、身を守るために使うんだ。」
リューシャはうなずいて、理解したことを示す。
「お前たちが出会ったような、飛行するタイプの魔獣は厄介だ。空の方が有利だからなぁ。まずお前がやったような接近戦は、基本的に避けるべきだ。タイミングをミスれば即やられる上、間合いの主導権は向こうにある。だから遠距離攻撃だ。相手に近付かせず、一方的に攻撃する。木立に入ってしまうのも一つの手だな、飛べることの有利を消せるし、奇襲攻撃を仕掛けやすい。」
「なるほど…なんか意外だ。父さんは気合だ!とか力でねじ伏せろ!とかいうかと思ったよ。」
「ガハハ!伊達にやってきてないわ!お前は賢いが戦い方をまだ知らない。これから戦い方ってものを教えてやる。二対一だ。俺を倒してみろ!」
※イメージアート
〈シャク〉
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次話もお楽しみに!