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草原、人、獣 ④

「は?」

「え?」

リューシャとルビカは、チナーの発言を上手く理解できずに固まってしまった。


「君ら、今この草原がどういう状況か分かっておらぬのか。随分とぬるい旅をしてきたようで。」

この発言にはリューシャもイラッとした。

ただ、それ以上に自分たちの知らない何かが起こっていることを知る必要がある。

リューシャは苛立ちを抑え、話しを聞くことにした。


「南のドグエラ族がはほぼ滅亡した。原因は、」

そう言うと、チナーは人差し指をルビカに向ける。

「テウト族の襲撃。その後、我々ゲラダも半数がやられた。」

「そ、そんな!」

確かに、草原の三つの遊牧民族は互いにそれほど仲が良いわけではない。

ただそれぞれの戦力は伯仲しているはずで、そう簡単に均衡は崩れないはずだ。

なのに、この短期間で一民族がやられ、残りの半数をやるなんて有り得ない。


「不可解な点は二つじゃ。」

チナーはリューシャを鋭く見つめる。

「これはそのための尋問ってことですか。」

「人聞の悪い。外で見てきたことを知りただけじゃ。」

「それで、二つというのは?」

「なぜ今か、そしてどうやって力を手に入れたか。」

チナーは指を立て、数える。

「時期について思い当たることはあります。」

「ほう」

「魔獣の活性化、父たちを殺すほど強力な魔獣だけじゃない。数も増えている。魔巣に近い地域ほど多い可能性が高い。」

「やはり。魔巣があるのはテウトの支配地の北東。テウトはゲラダ・ドグエラと魔巣に挟まれていることになる。」

「ですね。」

「魔獣は長い年月で少しずつ活性化してきた。それが臨界点を超えた…と。」

チナーは顎に手を当てて何やら考え込んでいる。

「しかしなぜ、テウトはあれほどの力を。」

リューシャはルビカをチラリと見やる。

「私がテウトから追いだされたころは、何も変化はなかった。ドグエラを倒す余力なんてなかったはず!」


チナーはジトリとルビカを見つめる。

その言葉に嘘はないか、疑い深く観察する目である。

「…まぁ良かろう。そうだとして、短期間でこれほどの戦力を増やすことなど…いや、目の前に一つ実例があるな。」

「これは父さんが遺してくれた魔石の力だ。」

リューシャは手を胸に当て、話しを続ける。

「もしテウトも同じようにして力を手に入れたとしても不可解な点はある。」

「それは?」

「なぜその力を魔獣を食い止めることに使わず、僕たちを攻撃したのか。」

「ふむ。たしかに、草原の民族は仲良しとは言えないが相互に不可侵じゃった。それを破ればテウトは魔獣と我らに挟まれる形になる。」

「不可侵を破ってまでこちらに逃げなければならないほど魔獣の勢いが増していたか、あるいは…」

「魔獣と手を組んだか、じゃな。」

チナーが後を引き取る。

「そんな!」

ルビカがあり得ないとばかりに驚きの声を発する。

「あり得ない話しじゃない。高位の魔物には知性を持つものもいるという。それに、いくら魔獣の勢いが強かったとしても、我らに攻撃を加えるのは悪手だということくらい奴らも分かっているはずじゃ。」


一同に沈黙が流れる。

最初に沈黙を破ったのはリューシャだった。

「状況は整理できたし、ルビカへの疑いは晴れたんじゃないかな?」

「うーむ。確かに、この娘が内通している可能性が低いとはわしも考えている。ただし、完全に信用できるとも言えないというのが率直な判断じゃ。」

「はっきり言ってください、どうすれば信用してもらえると?」

「まず身元引き受け人はリューシャ、君でいいな?」

「もちろん。」

リューシャは即答する。

「そして君には対テウトとの戦いの最前線に立ってゲラダを守って欲しい。」

それはリューシャの父も担っていた家業のようなものだ。

リューシャは深く頷く。だが、話しが見えない。

「当然、その娘も伴って。」

「まさか、ルビカに同族と戦わせるというんですか!?」

「必要なのは決意と証じゃ。そのために、最後の条件、その娘をお主の奴隷か妻とせよ。これらに従えないというのなら、その娘は投獄もしくは処刑とする!」

今回も読んで下さりありがとうございます!

皆さんの応援が執筆の励みになりますので、少しでもいいな、続きが気になると思った方は是非ブックマーク、高評価お願いいたしますm(__)m



次話もお楽しみに!

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