草原、人、獣 ②
カニの一家は流石に驚かれるので、キャンプから少し離れたところで放し飼い?にすることにした。
ゲラダのキャンプに入ると、皆リューシャの帰還を歓迎してくれた。
自分の勝手で出て行った旅だったが、こうして暖かく迎えてくれるゲラダのみんなのことが本当に好きだ。
「リューシャ様、マルカはどうなったのです?」
アイシャが心配そうに尋ねる。
やはり自分の妹がいないのは心配なのだ。
「樹上都市の魔女に弟子入りして、今そこにいるんだ。魔法を学びたいんだって。」
アイシャは目を丸くしてリューシャを見つめる。
「あきれた。それでリューシャ様はマルカを置いてきたのですか?」
「い、いや、それがあいつのやりたいことなら応援したいというか」
「ああ、あのこがそんな所で一人でやっていくなんて、心配じゃないのでしょうか。」
アイシャは非難の目をリューシャに向け、口を尖らせる。
「大丈夫だよ。素敵な知り合いも出来たし、サミの両親だっているんだ。」
アイシャは数秒の間リューシャを見つめ、はぁ、と大きなため息を吐く。
「寂しいです。心配です。でも、それがあの子が望んだことなら、しょうがないのですよね。」
「分かってくれて、ありがとう。」
リューシャはほっと胸を撫で下ろす。
サミはゲルの中で横になり休んでいる。
ここなら何かあってもすぐにみんなが対応してくれるだろう。
なんとも心強い。
だが、リューシャには一つ気がかりが残っていた。
「ねぇ、アイシャ。みんなの反応なんだけど。」
「皆さんリューシャ様のご帰還を喜んでくださいましたね、ご不満ですか?」
「いや、それはいいんだけど…」
リューシャはチラリと背後にたって、腕を組んでソワソワしているルビカをに目をやる。
キャンプに到着してからというもの、ルビカへの周りの視線は冷たい。
明らかにゲラダ族とは違う容貌に対する、はっきりとした敵意である。
シルバーの髪色、胸にゲラダのような赤い紋はなく、健康的な小麦色の肌が続く。
テウト族のルビカは、ここでは敵民族としてしか認識されていない。
そんな心配を察したアイシャは、少し眉を顰め、リューシャに耳打ちする。
「テウトに対するみなさんの警戒心は、リューシャ様が発った時よりも高まっています。どういう経緯でお知り合いになったか分かりませんが、良くて捕虜、最悪処刑になるかもしれませんよ。」
「えぇっ、そんな!?」
まさか、あまり歓迎はされないとは思っていたが、そんなに厳しい対応を取るとは思えなかった。
ゲラダと他民族は、草原の覇権をめぐり睨み合ってはいたが、表面上は友好的に関わっていたからだ。
ゲラダの領域まで侵入していたドグエラしかり、草原の均衡が崩れてきているのは確かだ。
そんな事を考えていると、ゲルの入り口からリューシャに呼びかける声が聞こえてきた。
「リューシャ様、長老がお呼びですので、お迎えにあがりました!」
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