覇者の卵 ①
リューシャたち三人は、巨大カニの車輪あとをたどり、南下していく。
ちょうど、来た道を後戻りしている形である。
馬もなく、ぬかるんだ道を行くスピードは非常に遅く、体力も持っていかれる。
「ちょっと休憩しようか。」
リューシャが二人に提案する。
「もう?まだ全然進んでないじゃない。」
ルビカはフンと鼻を鳴らす。
「リューシャくん、やっぱり体悪いの?」
サミが心配そうに、リューシャを見つめる。
「いや、むしろ前より良いくらいだよ。」
リューシャが答える。
サミはまだどこか不安げな様子だった。
「人の心配もいいけど、あなたの方も顔色悪いじゃない。」
ルビカはサミに向かってあごをしゃくる。
表情は暗いと思ったが、リューシャには体調が悪そうには見えなかった。
「まぁ、急いでるわけじゃない。休憩しよう。」
リューシャは荷物を下ろし、食事の準備を始めることにした。
ルビカが手早く調理を始める。
リューシャは火を起こし、サミはルビカの補助をする。
すぐに美味しそうなスープが出来上がる。
「ルビカのおかげで、格段に食事が楽しみになったよな。」
食事が変わるだけで、これほど幸福になるということに、リューシャは半ば驚いていた。
「お世辞はいいから、さっさと食べちゃいなさいよね。これからどうするのか、まだちゃんと聞いてないんだから。」
「あぁ、そうだったな、それも話しておこうとーーー」
「うっぷ…」
話を遮って、サミの嗚咽が聞こえた。
「お、おい!サミ、大丈夫か!?メシがそんなに…」
「ばか!そんなんじゃないわよ!」
ルビカがすごい剣幕でリューシャを睨む。
「これ、つわりの症状よ。妊娠してるわ。」
えっ!??
リューシャはルビカの言葉に目を丸くする。
サミは目をぎゅっと瞑ったまま、ゆっくり呼吸を整えている。
「ごめんなさい、こんな時に…」
サミが絞り出すようにつぶやいた。
「何言ってるんだ!素晴らしい事だよ!…えっと、つまり、僕が父親になるって事だよね…??」
「ほかに誰がいるっていうのよ。シャッキっとしなさい!」
ルビカに睨みつけられ、リューシャは少しずつ実感する。
そうか、自分が父親になるのか…
「こうなったらサミの体が最優先だ。次は樹上都市に戻ろうと思ってたけど、直接ゲラダのみんなのところに戻ろう。」
リューシャはルビカに顔を向ける。
「ルビカ、着いてきてくれないかな。僕たちには君が必要だ。」
「分かってるって。あなた一人じゃサミが心配だもの。それより、ゲラダであたしみたいなよそものがどういう扱いを受けるかよ…」
「誰にもルビカを傷つけさせないよ。神に誓って君を守る。」
リューシャは真剣な目つきでルビカを見つめる。
「…あんたってば、そういうこと、妊娠した嫁の横で言うかね、普通。」
ルビカは手のひらで顔を仰ぎながら、やれやれといったように頭を振る。
「えっ!?なんか変なこと言ってたか?」
「ふふっ、リューシャくんと結婚してよかったな、あたし。」
サミは少し顔色が良くなったようだ。
先程より表情も柔らかくなり、リューシャに向かって微笑んでいる。
守らなきゃいけないものが、どんどん増えるな。
リューシャは心の中で呟いた。
今回も読んで下さりありがとうございます!
私生活の方で色々と大変で、少し更新お休みしていました。
ほんとうに申し訳ありませんでした!
これからじゃんじゃん書いていきますので、よろしくお願いします!
皆さんの応援が執筆の励みになりますので、少しでもいいな、続きが気になると思った方は是非ブックマーク、高評価お願いいたしますm(__)m
次話もお楽しみに!




