正邪の器 ③
「鍵になったってどういうこと!?」
ルビカが声を上げる。
ぜえぜえと荒い呼吸を繰り返し、地面にひざまずくリューシャに、サミが駆け寄る。
「リューシャくん、大丈夫?」
「ははは…、死ぬかと思った。」
リューシャは微笑み返す。
もうっ!といって、サミは涙をにじませる。
「こんな危ないこと、もうしないでください!」
「ありがとう。でも、必要なことなんだ。」
リューシャはゆっくりと立ち上がる。
ルビカは先ほどから、どういうことなのよ!とまくし立てている。
「うるさいなあ…」
ムスクは面倒くさそうに目を閉じている。
「ルビカ、いいんだ。説明されなくても、僕にはよくわかる。不思議なんだ、なにが起きたのか、何を得たのか、すべてが手に取るようにわかるんだ。」
「話が早くて助かるわい。そんじゃ、さよならバイバイ~」
ムスクは言って、ふわりと飛び上がる。
「あ、そうそう。ここにはもう立ち寄るなよ。」
そういって、ルビカは光になって消えていった。
「あの方は一体何者だったんでしょう…」
サミがルビカの消えた方を見つめながらつぶやく。
「さあ。ただ、僕たちとはレベルの違う何か。神に近いような存在なのかもね。」
「なんなのよ!あいつ!いきなり表れて、何の説明もないままどっか行っちゃって!」
「まあまあ、ルビカ。でも、彼女こそ僕たちが探していた人だったんだ。それに、目的も達成できた。少なくとも、悪い人じゃないんだろうな。」
「それで、これからどうするつもり?」
「とりあえず、ゲラダのみんなのところに戻らなきゃ。」
ルビカは目を伏せ、そう、とつぶやく。
「…ルビカも一緒に来るか?」
一瞬、ルビカの顔が明るくなった。
「で、でも、私って敵対する民族の女だし。受け入れてもらえないよ。」
「うーん、一度樹上都市に戻るというのも一つの手だけど、それじゃ遅すぎる気がするんだ。それに…」
リューシャはルビカの目を見つめる。
「僕の目指すもののためには、君が必要なんだ。ルビカ!」
「わ、私が必要!?な、なによ!べつに、あんたのために何かしてあげるなんて、言ってないし!で、でもちょっとだけなら、考えなくもないっていうか…」
「いいんだ!ルビカは俺のそばにいてくれたら、それだけで!」
「ええっ!」
ルビカは顔を真っ赤にして呆然としている。
「リュ、リューシャ君…?」
どすの聞いた低い声で、サミがこちらに微笑んでいる。
「あっ!いや、これはそういうんじゃなくて!この草原のすべての民族を取りまとめるために、他民族に対する偏見を少しづつでも取り除いていく必要があると思って…」
「あっ、そう。じゃあべつに私じゃなくても他民族ならだれでもいいってことじゃないの!ふん!」
ルビカは腕を組んで、そっぽを向いてしまった。
サミはまだ納得していないようだ。
「ち、ちがうんだよおおおおお!!!!!」
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