正邪の器 ①
ムスクはリューシャを見つめる。
沈黙。リューシャはムスクの言葉の意味を理解できず、呆然と見つめ返す。
「はあ~」
ムスクは腕を広げ、やれやれという風にかぶりを振る。
「説明するのは嫌いなんだ。そもそも会話という行為じたいが久しぶりで、そろそろ疲れてきている。百聞は一見に如かずってね。」
そういってムスクは右腕を上げ、リューシャに向かって突き出す。
「ひゃく、え、なんだって?ちょ、ちょっと待ってくれ!」
リューシャはしどろもどろになりなってしまっている。完全にムスクのペースになってしまっている。
「僕は魔法鍛冶師を探しているんだって。それを教えてくれさえすればいいんだ。」
「だからさっき言ったじゃないか。もう、ほんとめんどくさいな…」
ムスクは上げていた右手を少し下ろし、リューシャが腰にしまっている魔石に向けた。
「加工してやればいいんだろ。」
すると、厳重にしまっていた魔石がひとりでに飛び出し、輝きながら宙に浮かび上がった。
魔石はキラキラと輝きながら回転し、ごつごつとした石ころから、きれいに磨き上げられた宝石に変わっていく。
まがまがしい色合いだった魔石は、深紅の輝きをもつ宝石に変わったのだ。
「せっかくなのでもう一工夫…」
ムスクがつぶやくと、魔石を中心にどこからともなく金色の台座が生まれた。
「興が乗ってきた!お前のその髪色、胸の紋にぴったりなのはっと。」
魔石はゆっくりと移動し、リューシャの首下にきっところで止まる。
台座からにょきっとひもが生え、リューシャの首に巻きつく。
「うわっ!」
叫ぶと同時に、ふぁさっと布が飛び出し、リューシャの体を覆う。
つややかな黒の生地に、荘厳な金色の刺繍が入る。
「汚れ知らず、傷知らずの、ムスク様お手製マントのでっきあっがり~」
ムスクは満足そうに指を振っている。
「おお!」
リューシャら三人が一斉に歓声を上げる。
「すごい!これで魔石の加工ができたのね!」
サミが目を輝かせ、リューシャを見つめる。
「リューシャくん、カッコイイね。とっても似合ってる!」
「いやいや、それは見てくれの話。なかみはなーんも変わってないって。」
ムスクがじとっとこちらを見ている。
「あんたらほんと理解力なさすぎでしょ。これだから今どきの若者は…」
「ど、どういうことだよ!」
「加工とか鍛冶師とかなんとかうるさいからサービスしてあげたのよ。そろそろ本番、行くかんね。」
ムスクが再度右手を上げる。
リューシャの体がふわっと持ち上げられ、地面から足一つ分浮き上がる。
(へっ?)
声が出ない。気がついたら、体の自由もきかなくなっている。
手足が広げられ、空中で大の字に磔にされているようだ。
「お楽しみと行きまっせ~!」
ムスクが楽しそうに笑い、舌で唇をなめる。
今回も読んで下さりありがとうございます!
皆さんの応援が執筆の励みになりますので、少しでもいいな、続きが気になると思った方は是非ブックマーク、高評価お願いいたしますm(__)m
次話もお楽しみに!




