ハプリビレス湿地 ②
突然涙を流し始めたルビカに、リューシャは戸惑った。
「そうだった。私、女だからとか、そういう縛りから逃れるためにここまで来たのに、自分でも縛ってたなんて。」
ルビカは涙を拭き、リューシャの方に顔を向ける。
顔つきは少し明るくなったようだ。
「私ね、ちょっとテウト族のなかでは出来損ないだっていつも言われてたんだ。みんなにできることができなくて、自分だけいつも一人ぼっちで…そういうの、もうおしまいにしようって思って、一人飛び出してきて、結局このザマ。」
はは、と悲しそうに笑うルビカの表情に、リューシャは胸を痛める。
「ルビカは色々背負ってきてるんだな。」
リューシャはこれまでの旅のこと、魔石のこと、これからこの草原に進行してくる魔獣を迎え撃つために、一体に暮らす多種多様な種族たちを束ねていく決意をルビカに話すことにした。
本当は、安易に魔石のことを話すべきではないことは理解していたが、ルビカなら信用できる、そう思ったのだ。
「そんな、無茶よ!私、元のキャンプで見たもの。たくさんの凶悪な魔獣たちが流れ込んできて、テウトの力じゃ抑えられなかった。結局、民族のみんなは魔獣から逃げて、それで逃げた先でもドグエラ族と衝突して…何人もの命が消えていった。あなた達二人で何ができるの。」
「二人じゃないさ。話しただろ。これまでたくさんの人に出会った。それに、僕には父さんが残したこの石がある。他人任せにはできないんだ。」
「死んじゃうかもしれないのよ。なんでそんなに強く信じられるの?私はいや、死ぬなんてとても怖い。」
「死ぬのは怖いさ。でも、僕の大事な人達が、笑えなくなったり、傷ついたりするほうが怖いんだ。」
「・・・ねえ、ゲラダは女でも戦うんでしょ。私に戦い方を教えて。この先も守られてるだけじゃ嫌だもの。」
「それはもちろんいいんだけど、確かテウトの女の人は戦えないんじゃなかった?」
「言ったでしょ。私は出来損ないだったって。それは女としてってこと。」
「というと?」
「テウトの女は戦えない。自分の魔力でクシャウっていう力の実みたいなものを創り出す。それは、テウトの男しか使えない。テウトの男は、これを取り込むと、一時的に数倍の力を手に入れる。そうやって、女がクシャを作り、男がそれを使って戦ってきた。これは知ってるわよね?」
「うんうん。噂程度だけど。」
「私のクシャウは他人に与えることができないの。でも、そのかわりに自分に対して使うことができるの。」
「そりゃすごい!一人二役じゃないか!」
「ふん!そうよ、私は一人でだって戦える。でも、民族のなかでは、女が戦うなどけしからんって、爪弾きにされて、クシャウを作れない分たくさん雑用を押し付けられ、誰からも必要とされなかった。」
「だれにも出来ないことが出来るなんて、すごいじゃないか!それに、料理だってこんなに美味しいんだ。ルビカは努力家なんだな。」
「な、なによ!このくらい当然でしょう!あんたたちの味覚が酷すぎるのよ!」
「あはは、弁解のしようもないね。」
サミが苦笑いを浮かべる。
それから、リューシャとサミとルビカの3人は、足元の悪い湿地帯を少しずつ進んでいった。
途中、魔獣に出くわすこともあったが、苦戦するほどではなかった。
ルビカも戦闘のなかで戦い方を学んでいき、みるみる強くなっていった。
しかし、道を進めば進むほど濃くなっていく霧は、一向の視界をどんどんと狭め、進行を阻む。
そんな時、リューシャの目の前に光が降ってきた。
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