ハプリビレス湿地 ①
リューシャ、サミ、ルビカの3人は、ぬかるんだ湿地を進む。
周囲は霧に包まれており、遠くは見通すことができない。
「ほんとにこの道で合ってるんでしょうねぇ!」
ルビカが怒ったように声を張る。
「絶対とは言えないけど、まず間違いないよ。ほら。」
リューシャは、地面に残った爆走カニの軌跡を指差す。
「ひとまず、これに沿っていけばたどり着くはずなんだ。」
「ふーん。」
ぬかるんだ道は、3人の体力を確実にすり減らしていった。
日も落ち始め、これ以上の前進は難しいと判断し、3人はテントを張ることにした。
「なかなか進まないね。」
サミがポツリとつぶやく。
「そうだね、幸い食糧はまだまだあるけど、節約しようか。」
ぬかるんだ泥の表面には、カニやザリガニのような甲殻類や、小魚が多くいた。
また、不思議なことに湿地には草原以上に樹木が生えており、火も起こせそうだ。
二人は手早く食糧を採取し、焚き火を焚き、水溜まりから汲んできた水を蒸留し、綺麗な水を確保する。
「あなたたち…本当にここまでサバイバルしてきたのね。」
あまりの手際の良さに、ルビカは目を丸くする。
「まぁ、このくらいは普通だよ。さ、食おうぜ。ちょっと泥臭いかもしれないが、アナチュ・アナ名産のスパイスで味付けしてあるからだいぶマシなはずだ。」
採ってきたカニや魚を蒸留水にぶち込み、アナチュ・アナから持ってきたスパイスで味付けした、即席スープである。
「うん!このスパイス、本当万能だね!なんでも美味しくなっちゃう。」
サミはすでに美味しそうに頬張っている。
「やっぱりか!俺も早速…!うんめ〜!!!」
多少の泥臭さはやはり消えないが、ワイルドな料理という雰囲気を醸し出しているとも言える。
スパイスの香りが口から鼻に抜け、臭みを芳醇な香りに変えてしまう。
香りの次には、素材の旨みが口いっぱいに広がり、自然の中で引き締められた肉質の、ぷりぷり食感もたまらない。
ルビカは初めて見るような料理に面食らった。
しかし、二人があまりにも美味しそうに食べているため、だんだん美味しそうに見えてきた。
いざ。
ルビカは意を決して肴を口に含む。
ふぐっ…!
ま、まずい…!!
こいつら、まじか!?
泥臭さ、生臭さ、スパイスの刺激、全てが胃液を逆流させるほど強烈なものであった。
ぷよぷよした食感の肉を、しばらく噛んでいると、やっと多少の旨みが滲み出てくる。
ルビカは冷や汗を拭い、なんとか胃の中に流し込む。
「…たち、…あんたたち、…これは、料理とは言わないー!」
急にルビカが叫び出すので、リューシャもサミもビクンと驚いた。
「いや、料理だけど。」
「結構良くできた方だよね。」
「あんたたち料理したことある?家畜でもこんなもの食わないわよ。」
ガーン!
リューシャは突然のディスに、衝撃を受ける。
「はぁ、調味料が少ないのは分かるけど、もうちょっとやりようがあるってもんよ。」
そう言って、ルビカは残りの食材を取り出し、料理を始めた。
まず魚を3枚におろし、骨を取る。
煮出したお茶をさまし、洗う。
さらにさっと表面だけ茹でる。
こうすることで、臭みをかなり抑えられるのだ。
「さて、ここまでするとだいぶマシなはず。あとはごぼうとか、アクの強い野菜があればよかったんだけど、しょうがない。」
「ごぼうなら、あっちの方で見かけたよ。」
「なんでそれ使わないのよ!」
「そんなこと言われても…」
ルビカはごぼうや木の実、食べられそうなキノコを刻み、グツグツと煮込む。
そこに下拵えした、魚とカニを入れ、スパイスで味を整えていく。
お皿に取り分け、最後に香味野菜をふりかけ、色味を整える。
「はい、これで完成!」
「す、すごい!めちゃくちゃいい匂い!さっき腹一杯食べたのに、お腹すいてきたよ。」
「ルビカちゃん!すごすぎる!」
「いやいや、このくらい普通でしょ。女なら、このくらいの料理はできないと。」
ルビカは照れて謙遜している。
「ん、なんで女だと料理できなきゃいけないんだ?」
リューシャは素直な疑問を口にした。
「えっ?」
ルビカははっとして、言葉が出ない。
「たしかに、家事や料理を担当するのは女の人だけど、それは役割の一つでしかないからな。戦う人もいるし、アイシャみたいな守り姉もいるし。」
ルビカは頭を下に向けて、ポロポロと泣き始めた。
突然のことに、リューシャはオロオロしてしまう。
「あぁ、ごめん!何か気に触らせてしまったみたいだった、全然そんなつもりじゃなくて!」
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