クラブレース ③
その人は、地面に座り込んでこちらを見上げている。
そこにいたのは、同年代の一人の少女だった。
容姿はリューシャたちゲラダの民によく似ているが、胸の紋はなく、髪色はシルバーである。
「テウト!?」
シルバーの髪色は、同じ遊牧民族であるテウト族の特徴である。
リューシャはこんなところに他民族の少女が一人でいるのに驚き、つい声を上げてしまう。
「ゲ、ゲラダ!?」
驚いたのは、少女の方も同じだったようだ。
突然現れたリューシャらに、目を丸くして驚いている。
すると、先程吹き飛ばした魔獣が再び襲いかかってきた。
「あぶない!」
リューシャは魔獣と少女の間に位置をとり、魔力で剣を作り出す。
先程の攻撃がかなり効いていたようで、魔獣はすでにふらついていた。
2、3の応酬があったのち、リューシャはあっさりと魔獣を切り倒した。
コロシアムで戦った経験を経て、格段に身のこなしが洗練されたことをかんじた。
この魔獣も、旅の初め頃であればサミとマルカリスと三人がかりで倒していたに違いない。
「ふぅ、なんとかなったか。」
「あなた、一体何者!?」
テウトの少女は、リューシャの身のこなしに驚いたようだ。
「何者って、そりゃお互い様だろう。僕はリューシャ、見ての通りゲラダ族だ。そしてこっちは妻のサミだ。」
サミがこんにちはと挨拶する。
「ふーん、私はテウト族のルビカ。それじゃ失礼。」
ルビカは言って、立ち去ろうとする。
「いやいや、ちょっと待ってよ。ルビカはなんだってこんなところに一人でいるんだ?」
ルビカはこちらをきっと睨みつける。
「答える義理なんてないわ!ゲラダの男なんて、女ならだれかれ構わず嫁にして奴隷のように扱う野蛮族だっていうじゃない。」
「ひどい誤解だ!確かに一夫多妻ではあるけど、それは女子が多いからで、男は基本的に尻に敷かれてるんだぞ!」
「へー、リューシャくん、そんな風に思ってたんだ。」
サミがジトリとリューシャを見る。
「いや、これは一般論であって、うちは優しいお嫁さんのおかげで穏やかな日々を過ごさせていただいていてだな!」
「あんた、何言っても言い訳がましくきこえるわよ。」
あたふたしているリューシャに、ルビカが冷たく言い放つ。
「いや、もともとは君が!って、そんなことより、ここから早く移動した方がいい。ルビカはどこかに行く途中か?馬もないようだけど。」
ルビカがふと暗い表情を浮かべる。
「私はいく場所なんてない。一族を、追放されたから。」
「つ、追放って…冗談はよしてくれよ。」
リューシャは顔をひきつらせる。
しかし、ルビカは深刻そうに顔を曇らている。
「何かあったの?私達にできることがあれば協力するよ。」
サミが心配そうにルビカを見つめる。
「まあ、話したくないこともあるよな。とはいえこんなところに女の子一人放り出すわけにはいかないし。」
リューシャはサミと目を合わせる。
サミもリューシャの意図を理解し、うなずいた。
「ルビカ、僕たちについてこないか。君さえ良ければだけど。」
ルビカは驚いたように顔を上げる。
「得体の知れない多民族の私を連れて行くなんて、本気?」
「もちろん、本気だよ。困ってる人を助けるのは当たり前だろ。それに、僕は民族とかそういうことにこだわらないって決めたんだ。」
「…あんた、相当変わってるわね。」
「変わってる、か。少し違うな。変わらなきゃいけないんだ。」
「なにそれ、意味分かんない。…まあいいわ。ついて行ってやろうじゃない。」
「随分上から目線だなぁ。」
「ふん。ただし、まだあなたのこと信頼しきっているわけじゃないから。ゲラダの男なんて、可愛い私を第二夫人にしたいだとか、そういう魂胆に違いないわ。」
「だから違うって…!」
リューシャはやれやれと首を振る。
「とにかく、私が安全を確保するまでだから。私は嫌になったらすぐに消えるし、あんたたちも別に私のことなんかいつでも切り捨てていいんだからね。」
「そんなことはしないさ。なあ、サミ。」
「そうだよ!こうして旅をするんだから、私達はもう仲間だよ!」
「…仲間、ね。それで、どこに向かおうとしてるの?」
「ああ、北の湖畔だ。」
「はあ!?そんなところ行って何するっていう気?てっきりどこかの村にでも行って行商でもするのかと思ってたわ。考えてみればあんなカニから飛び降りてきた連中がそんなおとなしいところに行くはずないのよね…」
「もしかして、嫌になったとか?」
「行くわよ!行けばいいんでしょ!そもそももとが地獄だったのよ、どこにだって行ってやるわ!」
かなり間があいてしまいました( ;∀;)
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次話もお楽しみに!




