クラブレース ①
車輪ワタリガニ。チキばあが教えてくれた、北の湖畔へ移動するために使う生物だ。
チキばあによると、徒歩で一月の工程、1日で運んでくれるということだった。
満月から4日後、その車輪ワタリガニがこの樹の真下を通るらしい。
サミとリューシャは、サミの両親のタツとミリア、そしてこの街でであったブーイとヌンガロ、そして何より妹のマルカリスに別れを告げた。
北の湖畔への新たな旅が始まるのだ。
タツとミリアには、滞在中の衣食住の面倒を見てもらって、本当にお世話になった。
ブーイとヌンガロは、短い間であったが本当の仲間になったと、リューシャは思っている。
マルカリスはこの街に残って魔法の研究をすると言っている。
みんなとお別れするのは、本当に寂しかった。
この街ではいろいろな経験をしたが、旅の中で出会った人と、ここまでこころを通わせたという経験は始めてだった。
「リューシャくん、サミ。気をつけて行っておいで。」
タツがリューシャの背中をたたきながら、励ます。
「サミ、お腹冷やさないようにね。」
ミリアがサミを抱きしめ、心配の声をかける。
「あにきぃ〜!」
「ねえさん〜!」
ブーイとヌンガロは、涙で顔をびしょびしょにして、泣きじゃくっている。
「兄貴には本当に感謝しかないっす!ずっと応援してますから、できることがあったら何でも言ってください!」
「ありがとう!僕たちも二人には感謝しているよ。そうだな、もしマルカリスが困っていたら、助けて上げてくれよな。僕はそばにいてやれないから。」
「わたしは大丈夫だって!それよりおにいちゃん、わたしがいなくても大丈夫でしょうね〜。サミさんを困らせないか心配だよ〜」
「お前に心配されることはなにもないよ、マルカ。」
その日の夜、月は満月が少し欠けている。
月明かりに照らされた草原で、遠くの方に砂埃が舞うのが見えた。
「あれじゃないかな。」
目を凝らすと、大きなカニが横向きに猛スピードで走ってくるのがわかる。
「あんなのにどうやって乗るのよ…」
「た、確かに。飛び乗ろうったってあんなスピードじゃ絶対無理だぞ。チキばあはそのへん何も言ってなかったよね。」
「うん…お母さんたちも、ブーイくんたちも、乗り方については何も知らないって言ってたし。」
「そうだよな、この街の人にとっては街の外に出る意味なんてないんだもんな。」
「うん。でも不思議。最初この樹に近づいたとき魔獣が攻撃されてたよね。」
確かにそうだ。最初にこの樹を見つけたとき、正しい方角から近づかなければ、ムチのようにしなる枝で攻撃されている魔獣を見た。
そんなことを考えているうちに、カニがみるみる近付いてくる。
そして樹の防衛ライン内にはいった瞬間、ぶうんと風を切る音がして、巨大樹から攻撃が繰り出された。
ガチィン!!
硬いものがぶつかる音がする。
見ると、巨大なカニがそのハサミで枝を掴んでいるではないか。
カニはやがてスピードを落とし、完全に静止した。
それから、掴んだ枝を口に加え、チュウチュウ吸い始める。
「あれは…栄養補給かな?」サミが言った。
「なんにせよ止まっている今しかない!行こう!」
リューシャとサミは、第一階層を走りカニの真上に移動する。
床の部分がなくなり、枝の上を歩く。
カニが掴んでいる枝に飛び移り、その枝の上を伝ってカニの背中まで移動していく。
巨大カニは吸うのに夢中で、リューシャたちのことは気にもとめない。
カニの背中は浅い盆のように中心が少しくぼんでいるため、振り落とされる心配はなさそうだった。
人が二人乗っても余裕の広さがあり、快適に過ごせそうだった。
「よし!出発だ!!」
「おー!」
今回も読んで下さりありがとうございます!
新章突入ですね〜
間が空いているのは本当に申し訳ないです…
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次話もお楽しみに!




