魔女と金 ②
「兄貴!」
ヌンガロがこちらに駆け寄ってきた。
「ヌンガロ!あいつは大丈夫なのか?」
「はい、安静にしてたらじきに良くなるだろうって。」
「やっぱりそうか。」
リューシャはほぅっと息を吐く。
「…せっかく優勝出来たことだし、とりあえず飯だな!」
みなの顔がぱあと明るくなったのが分かった。
事が立て続けに起こり、優勝を喜ぶ暇もなかった。
「今日はお祝いですもんね!」
コロシアムの方に目を向けると、ブーイが遠慮がちに優勝旗を掲げているのが見えた。
その姿が滑稽で、自然と笑えてきた。
その日の夜、リューシャはこの街でお世話になった人を集めてパーティを開いた。
もちろん、ベルニが暴れたあの料理屋である。
「サミはお酒飲まない方がいいよ…!」
目の前に並んだ数多くの料理と、なみなみと注がれた酒に、サミは目を輝かせている。
前にヒミズ族の街で酒を飲んだ時には、かなり大変だった。
「いやいや!せっかくのお祝いなんだから、特別なんだよ!」
「でも、前のこと覚えてないよね?」
「んん〜?わたしの記憶では、何もなかったよね。」
「うん、だからその記憶がない部分のことだよ…」
「んん〜?」
全く理解できないという風に、サミは顔をしかめている。
「ミリア、やっぱりお酒はやめとこうよ。」
「ええ〜?なんでよ!今日はリューシャくんの優勝お祝いでしょう!特別な日なんだからー」
「いやいや、主役はリューシャくんなんだからさ、僕たちは大人しくしとこうよ…」
リューシャ達から少し離れたテーブルで、サミの両親タツとミリアがこんなやりとりをしていることを、リューシャは知る由もなかった。
「兄貴、腕はもう大丈夫なんですか?」
ブーイが心配そうに眉を下げて尋ねた。
「うん、まぁだいたい。このくらいなら問題ないよ。」
「良かったです…!」
ブーイもヌンガロも、心底安心したという風に、表情を緩める。
「それにしても、兄貴は本当に強いよなぁ。」
「だなぁ。どうしたらそんなに強くなれるのか、不思議でしょうがないや。」
ブーイとヌンガロは、うんうんと首を大きく振りながらぶつぶつ言っている。
「いやいや、ゲラダの中には僕なんかよりもっと腕が立つ人がいっぱいいるよ。」
「またまた、ご謙遜を〜」
「本当なんだって。馬に乗ってて足腰鍛えられているのか、なんなのか、僕にとってはこの街の人たちがなんで力が弱いのかの方が不思議だったりするくらいだよ。」
「うーん、俺たち、そんなに弱いっすかね?」
「そうだなぁ、街の外に出たらすぐに死んじゃうだろうね。」
リューシャは思ったまま口にする。
「ひええ、それは怖い。」
「明日、早速グレイハンドのところに行こうと思ってるんだ。」
リューシャが言うと、サミ、マルカリス、ブーイ、ヌンガロの4名も、真剣に頷く。
「兄貴、俺たちのためにここまでしてくれて、本当にありがとうございました!」
「ございました!」
ブーイとヌンガロは、目に涙を湛えながら、何度もお礼を言う。
「いやいや、これは街の案内料だから。おかげでこっちも欲しい情報手に入ったわけだしね。」
「あにきぃ…!!」
ブーイとヌンガロは、さらに一段とおいおい泣き始めた。
「お兄ちゃん、わたしも、あの魔女には個人的に色々聞きたいこともあるし、ついていってもいいよね。」
「もちろんだよ、マルカリス。お前の魔法の研究のための旅でもあるしな。」
「うん、あいつは何か知ってる風だった。それに、魔法を私利私欲のために使うのは、私許せない。」
「そうか、マルカリスは優しいな。」
リューシャは妹の頭に手を置き、ポンポンと撫でてやる。
「お兄ちゃん、子供扱いしないでよね!」
マルカリスはリューシャをきっと睨みつける。
「ごめんごめん、お前も旅の中で随分成長したよな。」
「ふん!当たり前よ!」
今回も読んで下さりありがとうございます!
最近仕事がやけに忙しくなってしまい、執筆滞ってしまって本当にごめんなさい…
かなりペース落ちてしまいましたが、完結まで考えてあるので、あとは文字に起こすだけ!
最後まで書き切りますので応援していただけると泣いて喜びます!
次話もお楽しみに!




