魔女と金 ①
リューシャはゼェゼェと苦しそうにうめくベルニを見下ろす。
控室からは、リューシャの優勝を祝いにかブーイとヌンガロが飛び出してきた。
「兄貴!おめでとうございます!さすがっす!」
「さすがっす!」
ブーイとヌンガロが口々にリューシャを褒め称える。
「うん、そんなことよりブーイ、ヌンガロ、ちょっと手伝ってくれ。」
リューシャはまだ苦しそうなベルニを抱き抱えようと手を伸ばす。
ベルニはジタバタと暴れるため、一人ではなかなか難しい。
「え、どういうことっすか?」
「こいつ、このままだと多分やばい。早く治療を!」
「兄貴…!」
「分かりました!…でもこのあとは授賞式が…」
「そんなことは後でいいだろ!」
「へい!」
3人で暴れるベルニを控室に連れて帰る。
治療師はすぐに駆けつける、ベルニの容態を確認した。
ベルニの体をあちこち検査し、治療師はゆっくり首を振る。
「ダメです…わたしには何もできません。魔法薬を作った者なら何か方法を知っているかも知れないのですが…」
「魔法薬…あの魔女か。」
「リューシャくん!」
「お兄ちゃん!」
その時、サミとマルカリスが控室に飛び込んできた。
「サミ!マルカリス!ちょうどよかった!」
リューシャは二人に事情を話す。
「それならさっきまでなんか怪しいもの売り歩いてたよ。」
「マルカリス、それは本当か!案内してくれ!」
マルカリスは頷いた。
「リューシャさん、授賞式がありますのでこちらへ。」
「大会運営の人がリューシャを呼びに来た。
「それはここにいるブーイが代理で出ますんで!」
リューシャは勝手にブーイを指差す。
「え、俺っすか?」
ブーイがポカンと自分を指差す。
リューシャはサミとマルカリスとともに、グレイハンドを探しに出た。
グレイハンドの捜索は、それほど難しくはなかった。
彼女は商品をのせたトレイを首から下げ、客席の間を練り歩いている。
「魔法薬はいかがですか〜、滋養強壮、肩こり頭痛はやっぱりこれ!よう効くで〜」
声を張り上げ歩いている。
「おい!」
リューシャは魔女に声をかける。
「あー?あんた、優勝してたね、おめでとう〜。おかげで商売あがったりやわ。サイファで薬の宣伝しよおもてたんに。」
「その薬のことで話しに来たんだ!あんたは薬なんて言ってるけど、あれは毒だろ。」
「さっきの試合のこと?そりゃ薬でも、用法容量守らんと毒にもなるさね。うちはちゃーんと注意したんに。そこはもうじ・こ・せ・き・に・ん。」
「お前なぁ!」
危険なものを売っているというのに、悪びれもしないグレイハンドに、リューシャは怒りが湧いてくる。
「お兄ちゃん、それより治療の話ししなよ。」
マルカリスが耳打ちする。
「あぁ、そうだな。なぁ、試合見てたんだろ。あいつの治し方を教えてくれないか。」
「へぇ、そんなんでここまで来たん。優しいんやね、キミ。」
「それで、どうなんだよ。」
「まぁ、あの薬は一過性やし、ほっといても治るんちゃう〜?」
「そ、そんなので本当に大丈夫なの?」
サミは不安げに眉を顰める。
「というより、うちの魔法でも完全に治すのは無理やもん。出来ないことは請け負わん、商売の鉄則やん?」
「とんだ無駄足だったか…」
リューシャは唇を噛む。
「そういえば」リューシャはふと思いついたことを口にする。
「なんでこの街では魔法が特別なんだ?」
「リューシャくん、どういうこと?」サミが尋ねる。
「来た時から妙だったんだ。この街の人は誰も魔法を使わない。この魔女を除いて。そもそも、魔法が普通ならわざわざ魔女なんて呼び方しないよね。」
「たしかに。お父さんもお母さんも魔法使わなかったよね。」
「なるほどねぇ。あなた達、アナチュ・アナの契約を知らないんやね。ほなせっかくやし、今度うちおいでよ。」
くっくっくと笑って、魔女は髪の毛を1本抜いた。
抜いた毛に息を吹きかけると、可愛らしい顔をした蛇に変わる。
蛇とは言っても、姿が蛇というだけで、本当に生きているわけではないようだ。
蛇はかま首もたげた体勢のまま、微動だにしない。
「はい、これあーげる。この蛇ちゃんの向いてる方角に進めばうちに着くからね。」
魔女はまた、商品の売込みに戻っていった。
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