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サイファ ⑥

「よお、ゲラだの魔剣士さまぁ!」

ベルニは、リューシャを忌々しそうにらみつける。

リューシャは無言でベルニの目を見返す。

先程の試合で受けた毒による左腕のしびれが、まだまだとれない。

わざわざ弱みを晒すことになるため、左腕を気にする素振りもとれず、ただただ仁王立ちしているだけということになった。


「やっとお前と再戦できるなぁ。この瞬間を待ちわびていたぜ!今日はお前のお得意の魔法は使えねえからな、しっかりと俺の力を見せつけてやる!」

ベルニがいっちょ前にライバル面しているのが、リューシャには理解できないところもあったが、前回こっぴどく打ち負かしたのにまだまだこりていないようだ。


これに勝てば、リューシャは莫大な賞金を手に入れる事ができる。

ブーイとヌンガロへの恩返しもできるし、これからの旅のために色々と装備を買うこともできるだろう。

もしかしたら、北の湖畔にいるかもしれない魔法鍛冶師は金を要求してくるかもしれない。

お金はあるに越したことないのだ。


「おいおい、きいてんのか?あ!?」

ベルニは、リューシャが直立不動のまま反応がないことに苛立ち始める。


「ああ、ごめん。考え事をしていて。」

「なめてんじゃねえぞ…おれはあのときとは違うんだあ!」

ベルニは叫び、体を丸め全身に力を込める。

すると、体全体が紅潮していき、全身にピキピキと血管が浮き出てくる。

予選のときにもいた、魔女の魔法薬だ。


「さっき僕の魔法がどうのといっていたくせに、自分は魔法薬頼りかよ。いいセンスしてるな。」

「はん!なんとでもいいやがれ!勝てりゃいいんだよ!」

「どんな卑怯な手を使ってもいいけど、僕は負けない。」

「いつまでその余裕顔を保ってられるか、見ものだぜ。」


はじめ!合図と同時に、ベルニが飛び込んでくる。

巨体ながらも、恐ろしいスピードで向かってくる。

確かに前回とは随分な違いだ。

更にリューシャは魔法を使えず、左腕も麻痺している。

これはだいぶ不利かもしれないな…リューシャのあたまのなかに、初めて焦りが生まれる。

左腕がこの状況だ、正面から受け止めるのは愚策だ。

リューシャは右側に飛び退き、突進を避ける。

しかし、ベルニは超スピードで突っ込んできたにも関わらず、急転回し、リューシャを追ってくる。

これができるからこその、初手からの突進だったのだろう。

くっ…!

リューシャは反射的に両腕で突進を受け止める。

「ぐあっ!」


左腕に痛みが走る。

その様子をみて、ベルニはニヤリと笑った。

「おいおい、もしかしてさっきの試合、やっちまったみたいだなぁ。」

ベルニは、リューシャの左腕に負担がかかるように、体をそちらに傾ける。


「くっそ!」

リューシャは左足を軸に体を回転させ、ベルニの力を逃しつつ、そのまま投げの体制にはいる。

ベルニは一瞬倒れかかるが、足を突き出して踏ん張り、体制を立て直す。

両者は組み合ったまま拮抗状態に入った。


「ちっ、しぶといな。」

「ハンデと卑怯でやっと五分だったな。」

「これで終わりだったら、な!」

ベルニの目がギラリと光り、一度リューシャから離れていく。

懐から、小さな水袋のようなものを取り出し、一気に飲み干す。


「おい、やめ…!」

リューシャは止めようと手を突き出すが、時既に遅しであった。

「う、うう、ぐっあああああー!」

ベルニはうめき、腹を抱えるように体を丸める。

紅潮していた肌はどんどんと色を失っていき、全体としてどす黒く染まっていく。

表出していた血管は、今度はどくどくとその脈打ちまで分かる程になってしまう。

過剰摂取『オーバードーズ』。魔法薬の飲みすぎだ、間違いなくやばい副作用が起きる。


「ああ、苦しい…ああ、ああ。倒す。たおす。タオス!ああああああ!」

正気を失ったベルニが、リューシャに向かって滅茶苦茶に腕を振り回しながら向かってくる。

ものすごい勢いで繰り出され続ける腕、避けても避けても次々と向かってくる。

ついに避け切れなくなり、右腕で受け止めた。

しかし、凄まじいパワーで繰り出された腕の振り回しは、ガードしていたとはいえ、リューシャを吹き飛ばしてしまう。

リューシャは空中で体勢を立て直す。

受け身になっていてはだめだ!

今度は逆に、リューシャの方から向かっていく。


ベルニの腕の振り回しは、単調な攻撃であるので、すでに見切ることができた。

リューシャはタイミングを図り、繰り出された右腕の肘を掴む。

しびれが弱まってきた左手でベルニの肘を抑え、右腕でベルニの手元を掴み捻り上げる。

トーナメント第1試合でリューシャが決められかけた技だ。

どんなに強力な者であっても、関節に対しては力だけではどうしようもないのだ。


どす!

ベルニは膝から崩れ落ち、試合が決着した。


終了!勝者リューシャ!

歓声が巻き起こる。


しかし、リューシャは手を緩めない。

ベルニは完全に正気を失っており、ルールとか試合の勝敗でなく、ただただ目の前のものに暴力をふるうものになっていた。

掴まれていない方の腕で、闇雲にリューシャに攻撃してくる。


「とりあえず、試合が終わったならもういいよね。」

バシバシ!

リューシャは魔法を使い、ベルニの耳元で空気を破裂させる。

鼓膜を破られたベルには、突然音を失ったことに驚き、耳を抑え攻撃をやめる。


リューシャは腰のベルトを取り、ベルニの両腕を背中側で縛り無力化した。

「あうあうあうあーー。」

ベルニはうめきながら、ぜえぜえとあえいでいる。

今回も読んで下さりありがとうございます!


皆さんの応援が執筆の励みになりますので、少しでもいいな、続きが気になると思った方は是非ブックマーク、高評価お願いいたしますm(__)m

次話もお楽しみに!

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